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政策・倫理問題・知的財産・その他

2015/3/27更新


政策

Q1 iPS細胞の創薬応用について国の具体的な取り組みを教えて下さい。
希少難病疾患の研究の課題や問題点があれば明らかにしてほしい。
A1

患者さんの体細胞から作製したiPS細胞(疾患特異的iPS細胞)は、病変部位の細胞へ分化させることで病態を再現することができることから、創薬に向けた研究等に応用できると期待されています。国は、平成25年2月から、厚生労働省と文部科学省が共同で、「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」を実施しています。本研究により、質の高いiPS細胞を樹立・分化させる技術を持つ研究拠点と難病の研究者が連携し、iPS細胞を活用した基礎研究を推進するとともに、製薬企業などとも連携し、疾患特異的iPS細胞を用いた創薬研究を実施しています。
また、厚生労働省の「ヒトiPS分化細胞技術を活用した医薬品の次世代毒性・安全性評価試験系の開発と国際標準化に関する研究」では、iPS細胞から作製した心筋細胞等を用いた薬の安全性を評価するシステムの開発を目指しています。

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倫理問題

Q1 iPS細胞にはどのような倫理問題があるのでしょうか?今後iPS細胞が抱える倫理的な問題をどのように解決していく予定でしょうか?また、倫理問題は、今後の研究の進展にどう影響してくるのでしょうか?
A1

2006年に京都大学の山中伸弥教授らによって開発されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、体細胞に4つの因子を組み込むことで脱分化を可能とする画期的な手法です。山中教授はこの発見により、2012年、ノーベル医学生理学賞を受賞されました。
iPS細胞研究は、ES細胞のような「胚の滅失」を伴いませんが、幹細胞の性質と用途の点から、以下のような倫理的問題が指摘されています。

1)治療研究の被験者への配慮
2)元となる細胞の提供者への配慮
3)研究開発の方向性
4)特定の用途に関する社会的合意形成

1)については、臨床上有望な医学的知見が、一般的な治療法へと導入される過程で、そうした治療法候補を試行する「臨床試験」の実施が必要になります。iPS細胞にも多くの期待がある一方、初めて人間に投与される物質として、有害な事象への備えに万全を期す必要があります。そのため、試験に参加する患者さんには試験の性格と目的について十分に説明し、理解を得る必要があります。また、世界医師会のヘルシンキ宣言でも強調されているように、医療者側には試験に伴うリスク・害をしっかり把握し、管理すると共に、得られた成果や問題点を広く共有する責任があります。

2)はiPS細胞を作製する元となる細胞の提供者の自律性の尊重が主たる課題です。提供された細胞は株化され、多様な用途に用いられることになります。そのため、こうした用途の方向性について、提供時に明確な情報提供が行われることが重要であり、また研究者もそのスキームの範囲内でしっかりと活動を進めることが求められます。iPS細胞を精製する過程で生じる提供者の生体・健康情報の取り扱いに関する問題もこの課題に含まれます。

3)はこの研究開発をどの疾患・症状から優先して進めていくのか、という公共政策上の課題です。また、このように技術と人員を集約してプロジェクトを進める分野では、産業活動との関係が不可分ですが、一方で権利関係によって患者が成果にアクセスできなくなることも問題になるかもしれません。各セクターの役割と利益関係に配慮しながら、科学的知識に基づく合理的な進捗計画が求められるでしょう。

4)は幹細胞の特定の用途に関する問題です。例えば、生殖細胞の取り扱いや神経細胞の動物個体への移入、臓器作成目的で人間=動物の要素の混じったキメラ動物の作成などの問題が世界的にも指摘されています。これらの問題は新しい技術への懸念に配慮しながら、そうした特定の用途によってもたらされる恩恵と問題点とを勘案して、検討されるテーマです。

iPS細胞が抱える倫理的問題の解決には、研究開発および実用化へと至る過程で関与する人々や関連する技術についての多様な論点を丹念に検証しながら、工程の堅実な運営と不確定な要因・リスクの管理、社会の人々の懸念に配慮した説明を行い理解を得ることが重要であり、それが今後この領域の更なる進展の礎になるでしょう。

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Q2 iPS細胞の臨床応用を含む再生医療研究の倫理について、研究者のみなさんはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。また、これから国内外の専門家にどのように働きかけていこうとされているのでしょうか?
A2

日本が世界をリードする再生医療研究において、再生医学の生命倫理、iPS細胞の臨床応用に関する生命倫理の議論を日本から発信し、世界中の生命倫理研究者を巻き込んで発展させることは、社会に調和した再生医療の展開という観点から非常に重要であると認識しています。
日本発の取り組みとして実際に、2014年には京都(iPS細胞研究所、国立京都国際会館)において再生医療の倫理に関する2日間の学術会議(上廣・カーネギー・オックスフォード倫理会議)が開催され、公開シンポジウムも行われました。会議には世界から再生医療の倫理の専門家が参加し、倫理的問題の共有が行われました。
また、再生医療の実現化ハイウェイ課題Dでは、生命倫理の専門家と再生医療の研究者が倫理的課題について定期的に会合を行い、コンセンサス形成を試みています。また、こうした活動によって生み出された研究成果は国際学会や国内の主要な学会で発表されており、今後もさらに日本からの研究成果の発信が強まっていくことが期待されます。
同時に、海外の再生医療研究の倫理に関する研究拠点との連携を促進する必要もあります。国際的な研究交流の拠点を形成する必要もあります。既存の研究機関の枠組みや学会の枠組みを応用し、再生医療に関連する生命倫理を研究する世界の研究者の国際的研究交流の場が形成されることが望まれます。

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Q3 研究者への教育も勿論ですが、患者に対して倫理面も含めた再生医療に関する教育をする必要があると思いますが、どのように進めるべきとお考えでしょうか?
A3

日本が世界をリードする再生医療研究において、研究者のみならず、患者さん自身も、その現状や課題を学ぶことは非常に大切なことだと考えています。そのため、再生医療をめぐる倫理的・法的・社会的観点から、研究者だけでなく患者さんや一般の方向けの啓発・教育機会も増やしています。
まず、日本科学未来館では、今年から再生医療に関する展示を刷新しました。また、iPS Trendにおいても、患者さんや一般の方向けの情報を充実させています。
また、再生医療の実現化ハイウェイ課題Dでは、再生医療研究を行っている研究者と、将来、研究対象になる可能性のある疾患の患者会との対話の機会を設け、将来の臨床試験をめぐって意見交換を行っています。こうした活動を通じて、患者さん自身が再生医療の臨床試験に対する理解を深め、研究者はよりよい研究デザインや実施体制を考えることが期待されます。
2014年、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)が施行されたことにより、再生医療に関する臨床研究を科学的・倫理的観点及び安全性の観点から審査する委員会(認定再生医療等委員会など)の体制も新しくなり、一般の立場を代表する委員の役割は、ますます重要になっています。今後は、患者としての経験を有する方の中から、一般の立場を代表する委員になって頂ける方が出てこられるよう、教育の機会を充実させることが大きな課題です。

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知的財産

Q1 知的財産の確保について、iPS細胞に関してどのような分野、技術、製品の知的財産の確保が必要でしょうか?また、その重要性や海外との競争について教えてください。
A1

iPS細胞に関する知財は、iPS細胞の樹立法、iPS細胞からの分化誘導法、分化細胞を利用した創薬スクリーニング法、薬剤の副作用や有効性の評価法等が考えられます。またこの他にも、作られた細胞、使用する培地、初期化や分化を誘導する薬剤、さらには、iPS細胞を利用して製造された医薬品や医療機器も挙げられます。これらの知的財産を保有しているか否かは、企業がその技術を開発するか否かを決定する判断に大きな影響を与えます。また、他者が知的財産を保有していた場合、開発した製品の価格に影響がでることもあります。多くの患者さんが治療を受けるためには産業化が必要でありますが、このように、産業化のためには知的財産が大変重要になります。特に、iPS細胞の樹立法に関する権利は、様々な利用者に影響が出ることから最重要特許であり、iPS細胞の開発者である山中教授の特許と海外機関(特に米国)の特許は、激しい権利化争いがくり広げられています。

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その他

Q1 海外研究者、研究機関との提携、連携の状況について教えてください。
A1

国際幹細胞学会等の学術集会、論文情報、また、特許情報等を通じてアカデミアや企業の研究者、研究機関間の情報交換は活発に進められており、それをきっかけとして共同研究や提携関係に発展するケースもあります。

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Q2 諸外国と日本の規制の違いはあるのでしょうか?あるとすれば何がどう違うのでしょうか?
A2

患者さんに安全で有効な再生医療を提供するという目的は、日本でも欧米でも世界で共通な考え方です。再生医療を患者さんにお届けする場合、医薬品のように考える場合と、医師が施す医療技術として考える場合の2通りがあります。欧州(EU加盟国)では医薬品にように規制されています。米国でもおおむね同じですが、米国は州によって法律が異なりますので、医師が施す医療技術として行ってもよい州も一部あります。日本では、その2通りの考えが双方とも肯定されており、2つの法律のいずれかで再生医療は規制されています。医薬品のように考える場合は薬事法(医薬品医療機器等法)で、医師が施す医療技術として捉える場合は再生医療安全性確保法で規制されます。両方とも法律ですので、どちらかは守らなければなりません。

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Q3 再生医療等製品の品質保証の取り組み状況を教えて下さい。特別な規制があるのでしょうか?
A3

「品質管理」については、医薬品医療機器等法での再生医療等製品に関してGCTP省令に記載があります。「品質保証(QA)」に関しては、psotmarketingを含めて製造販売業者がみずから構築するものと思われます。

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Q4 再生医療の実用化が進むと色々な人材が必要となりますが、人材育成に関する取組はどのような状況でしょうか。
A4

再生医療の現場では、専門の知識を持った「再生医療認定医」と、移植に用いる細胞を培養・管理する「臨床培養士」と呼ばれる人材が必要です。再生医療学会では、2014年度から「再生医療認定医」「臨床培養士」を認定するためのセミナー、試験を開催しています。認定医は、細胞の培養法や性質についての知識を有し、疾患の専門医との連携のもとに適応疾患についての適切な判断、説明責任が果たせること、再生医療における倫理的・法的知識を有すること、および一定の経験を積んでいることなどを要件しています。臨床培養士は、再生医療における細胞/組織の調整・培養を行う十分な技術、これらに関する適切な法的・制度的知識を有すること、および細胞/組織培養の十分な経験を有することを要件としています。また、将来、現場での活躍を目指す人材育成が大学においても始まっています。

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