成果報告シンポジウム

本シンポジウムは終了いたしました。皆様のご来場、誠にありがとうございました。

日時:2017年 3月 4日(土)
場所:熊本大学工学部百周年記念館

JSTは2016年4月に熊本県熊本地方で発生した地震に関連し、国際チームによる緊急研究・調査への研究費提供のプログラムを実施しました。
審査の結果、日本と、米国・ニュージーランド・タイ・ネパールのそれぞれとで結成した国際チームによる8つのプロジェクトが採択され、各チームは実際に熊本に入り、被害状況や地盤・地震動・地下水について調査・研究を発災直後から実施してきました。
2017年3月をもってJ-RAPIDによる研究・調査期間を終了するにあたり、成果報告シンポジウムを開催いたします。ご興味のある方々の積極的な参加をお待ちしております。また、シンポジウム終了後には研究代表者と交流できる意見交換会も開催いたします。こちらにも是非ご参加ください。

J-RAPIDについて
about J-RAPID(English Ver.)

発表資料

当日の発表時刻はこちら(PDF:143KB)

課題名 日本側研究者 概要
海外側研究者
1 平成28年熊本地震災害の全体像の把握 藤原 広行
防災科学技術研究所 レジリエント防災・減災研究推進センター センター長
熊本地震の発災を受け、防災科学技術研究所は防災科学技術推進の中核的機関として、直ちに防災科研クライシスレスポンスサイト(NIED-CRS)を開設し、地震活動、阿蘇山の火山活動、地盤災害の現状と今後の推移予測、道路被害、建物被害、避難所対応、水道復旧等に関する情報の収集・集約・発信等の災害対応活動を行った。NIED-CRSは、多分野に渡る地震災害の全体像に関する状況認識の統一を図ることを目的として、一般利用者および防災関係者のそれぞれに適した形式で情報を集約し提供した。また、Learning from Earthquakes (LFE)により定評のある米国EERIの協力により、国際研究連携のためのクリアリングハウスのあり方について検討を行った。本報告では、地震災害の全貌の迅速な把握と効果的な災害対応に資する情報共有のあり方に関する実証的な取組と、研究機関の国際協力の枠組構築について報告する。
ジェイ・バーガー
米国地震工学会 エグゼクティブ・ディレクター
2 繰り返し大地震動を受けた建築物の崩壊メカニズムと残存性能に基づく次世代型被災度判定と耐震設計法の構築 前田 匡樹
東北大学 大学院工学研究科 都市・建築学専攻 教授
本研究は、繰り返し大きな地震動を受けた際の建築構造物の耐震性能の劣化(残存耐震性能)を評価し、崩壊に至るメカニズムを明らかにすることで、被災建築物の将来の地震に対する安全性評価法、さらには、繰り返し地震動の影響を考慮した次世代型の耐震設計法を検討することを目的とする。日本、ニュージーランド両チームの連携のもとに、2016年熊本地震による建築物(主としてRC造学校建築や公共建築)の被害状況および構造特性の現地詳細調査、構造詳細に基づく被災建物の(保有および残存)耐震性能と損傷状況の分析、崩壊メカニズムの検討、残存耐震性能評価に基づく被災度判定法の適用性の検証、両国の設計法の比較を通して、繰り返し地震動による性能劣化を考慮した次世代型耐震設計法について検討を行った。
ケネス・エルウッド
オークランド大学(ニュージーランド) 土木環境工学部 教授
3 平成28年熊本地震による流動性地すべりの発生機構と不安定土砂の危険度評価~日米共同研究による実態解明調査~ ハザリカ・ヘマンタ
九州大学 工学研究院 教授
平成28年熊本地震ではM6.5の前震とM7.0の本震が28時間の間に連続して発生し、ともに最大震度7を記録した。これによって発生した地すべりや斜面崩壊は、宅地盛土、道路、堤防などのインフラに甚大な被害をもたらしただけではなく、多くの人命が失われた。これらの被害の実態を把握し、地すべり・斜面崩壊地域の危険度マップの作成のため、日米合同チームによる現地調査と共同研究を実施した。研究期間中に実施調査、被害データの分析・解析、現地で土を採取、採取した資料の室内実験により分析・解析を実施した。特に阿蘇カルデラ周辺の斜面崩壊に関する被害分析および解析に焦点を絞って研究を行った。本発表ではそれらの研究成果を述べる。
ロバート・E・ケイエン
カリフォルニア大学(アメリカ合衆国)ロサンゼルス校 教授
4 活断層ごく近傍の強震動調査に基づく地震ハザード評価の高度化 郝(はお) 憲生
防災科学技術研究所 主幹研究員
本研究では、現地調査を通して地震被害の状況と地震動の分布の関係を検証した。特に、断層ごく近傍での強震動を評価することに加え、地震発生後の余震活動推移を迅速かつ正確に把握した。日本チームは、断層ごく近傍を対象とした現行の強震動評価手法の課題を検討した。ニュージーランドチームは、地震カタログ(地震の発生リスト)によらない累積地震エネルギーに基づく新たな余震系列モデリング方法を検討した。両チームの検討結果をもとに、断層ごく近傍の強震動評価精度を向上させ、大地震直後の活発な余震活動に対して、これまでよりも迅速かつ正確な活動推移予測手法を提案した。これらの成果は強震動予測および余震活動推移予測の両面から今後の地震ハザード評価の高度化に資するものである。
マット・ガーステンバーガー
GNSサイエンス(ニュージーランド)リスクと社会・ハザード部門 チームリーダー
5 熊本地震による農山村地域の被災状況に関する現地調査と農業基盤情報を取り入れたGISデータベースの構築 岡澤 宏
東京農業大学 地域環境科学部 教授
熊本地震では局所的な断層の発生や地形のうねりによって多くの農地が被害を受けた。本研究では熊本市秋津地区をケーススタディーとして,UAVを活用した農地と水利施設の被害状況,作物生産性が評価できる新たな手法の構築について検討した。また,GISによって震災による地形変化や水利施設の被害,作物生産性を管理することは,震災後の速やかな復旧計画の立案には必要不可欠である。そこで,本課題では熊本県に加えて複数の都道府県でアンケート調査を実施し,GISによる農業基盤管理の現状と課題を明らかにした。これらの成果から,今後の震災に対する備えとして,農業基盤施設を対象としたGISデータベースの構築法(マニュアル)の確立を目指した。さらに,熊本発のこのマニュアルを国内ならびに震災に脆弱なアジア地域に適用するため,地震の被災国であるネパールと協同し,震災復旧に対応した農地分野のGIS管理システム法のマニュアルを作成した。
ビム・プラサド・シュレスタ
カトマンズ大学(ネパール) 工学部 教授
6 熊本地震による阿蘇火山性堆積土の大変形挙動に起因する被害メカニズムの解明 清田 隆
東京大学 生産技術研究所 准教授
熊本地震によって発生した地震被害の多くは震源断層沿いに分布し、平野部では液状化、丘陵地では主に斜面崩壊に起因する被害が多数確認された。そのうち、阿蘇カルデラ内では斜面流動、地盤沈下など大変形を伴ったものが多く発生し、いずれも地形と地盤(火山性堆積土)の特殊性に起因するものと考えられる。本研究では、阿蘇谷で生じた地盤沈下・亀裂、住宅造成地で生じた宅地被害、および緩斜面で生じた土砂流動を対象とし、これらの発生メカニズムを原位置表面波探査、サウンディング、および不攪乱試料を用いた室内試験を通じて検討した。
ガブリエル・キアロ
カンタベリー大学(ニュージーランド) 土木・天然資源工学部 講師
7 熊本地震による地下水汚染の実態把握に関する緊急環境調査 中田 晴彦
熊本大学 大学院先端科学研究部 准教授
熊本市は全ての飲用水の地下水に依存しているが、熊本地震で地中の下水管が大規模に破壊され、下水や生活排水が地下水に混入した可能性がある。そこで本研究は、熊本市とその周辺の50ヶ所以上から地下水を経時的に採取し、下水マーカーである微量化学物質(人工甘味料等)を測定して下水管破損の場所と汚染規模の推定を試みた。実験の結果、大部分の試料から人工甘味料が検出され、地下水への下水流入の可能性が窺えた。また、熊本市中心部では地震前に比べて10倍以上も高い濃度を示す地点が複数確認され、地震の影響が顕在化した地点の存在が示された。得られた知見の一部は熊本市上下水道局に提供しており、今後下水管復旧工事の優先順位や地下水汚染対策に資する情報として活用される予定である。
クルンタチャラム・カンナン
ニューヨーク州立大学(アメリカ合衆国) 環境保健科学部 教授
8 現地調査とリモートセンシングを融合した熊本地震による構造物の被害把握と被害予測モデル構築 山崎 文雄
千葉大学 大学院工学研究科 教授
一連の熊本地震では,地震動や斜面崩壊等によって,建物倒壊や交通・ライフライン網の途絶などの甚大な被害が生じた.本研究では地震被害の早期把握のため,衛星や航空機によるリモートセンシング,GPSなどの衛星測位,地震計ネットワークなどによる観測データの活用を試みた.航空レーザー計測結果からは詳細な地殻変動を把握し,日本のレーダー衛星ALOS-2画像からは,甚大な被災範囲を抽出することができた.これらを現地調査結果などと比較し,各種のセンシング技術の精度と課題を評価するとともに,被害予測モデルの構築につなげていく予定である.
ペンヌン・ワルニチャイ
アジア工科大学院(タイ) 工学研究科 教授

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