成果事例

半導体ナノ構造を原子レベルで構築・評価することに成功—
将来の超高速情報処理技術への応用が期待

課題名

日独「原子操作により形成したナノ構造による半導体表面における量子コヒーレンス現象の走査トンネル分光法による研究」(支援期間:平成20〜23年度)

研究者名

日本側研究代表者:蟹澤 聖 NTT物性科学基礎研究所 量子電子物性研究部主任研究員

ドイツ側研究代表者:Stefan Foelsch ポール・ドルーデ電子物性工学研究所 主任研究員

概要

将来の超高速情報処理技術の実現には、ナノスケール(1ナノメートル=10億分の1メートル)の半導体デバイスが鍵を握ると考えられています。原子レベルでナノ構造を構築したり、その構造下での電子の動きを実空間で観測したりすることは、高性能素子を実現するために大きく役立ちます。しかしこれまで、半導体のナノ構造を原子精度で組み立て、実空間で直接評価することはできませんでした。


本事業において支援された日独の研究チームは、低温で動作する走査トンネル顕微鏡(STM)を応用し、STMの鋭い金属プローブをピンセットとして、化合物半導体(*)表面にある原子をひとつずつ自在に動かすことで、新しいナノ構造を形成することに成功しました。


また、このナノ構造における電子状態を直接その場で観測し、量子効果により離散化したエネルギー準位の形成を実空間で可視化することに成功しました。


これらの成果は、日本側の化合物半導体(*)作製技術と、ドイツ側のアトムマニピュレーション技術がうまく組み合わされることによって達成されたものであり、共著論文がフィジカル・レビュー・レターズ誌に掲載されました。今後、新しい半導体物性の発見や、革新的な量子情報デバイスを実現するための要素技術への応用につながることが期待されます。


image1
インジウム砒素(InAs(111)A)基板上で、半導体アトムマニピュレーションにより直径12nmの円上に精密配置した12個のイオン化インジウム原子(In+)。(蟹澤聖研究員より提供)

image2
インジウム砒素(InAs(111)A)基板上に近接して配置した、2つのイオン化インジウム原子(In+)(左図)が表面に出現させた電子状態(右図)を直接その場で観測することに始めて成功。(蟹澤聖研究員より提供)

(*)化合物半導体とは、2種類以上の原子がイオン結合により結合してできる半導体のことです。一般的な半導体に使われるシリコンに比べ電子の移動速度が速いため、高速処理に優れているなどの特性を持っています。


参考文献:Physical Review Letters 103, 096104 (2009)