山本 喜久
量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ
高度知識社会基盤の実現
プログラム・マネージャー
山本 喜久 Yoshihisa Yamamoto
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1973年 東京工業大学卒業
1978年 東京大学大学院博士課程修了(博士・工学)
1978~2003年 NTT(現在 R&Dフェロー)
1992年~2014年 スタンフォード大学 教授(現在 名誉教授)
2003年~2014年 国立情報学研究所 教授(現在 名誉教授)
2013年~2014年 理化学研究所 グループディレクター
2014年~ ImPACT プログラム・マネージャー
(エフォート100%)
【プロフィール】
量子情報通信技術の研究グループをNTT基礎研究所内に設立し、以後30年以上にわたって、世界の量子情報通信研究の最先端を切り拓く。日本国内および米国内の大型国家プロジェクトを多数指揮。2009~2014年内閣府・最先端研究開発支援(FIRST)プログラム中心研究者。


研究開発プログラムの概要

現代社会の様々な分野に現れる「組合せ最適化問題」。いまのスーパーコンピュータでは、複数の組合せの中から総当たり方式で解を探すため、組合せが膨大になると時間がかかりすぎすべての組わせを処置できない。そこで厳密解を諦めて近似解を出している。本プログラムでは、この組合せ最適化問題に特化した新型のコヒーレント・コンピュータ(イジングマシン)を開発する。夢のコンピュータは、量子ネットワークでつながれた量子人工脳として機能する。

非連続イノベーション

  • 量子臨界計算:量子力学の線形重ね合わせ原理を用いた並列探索と干渉効果を用いた量子フィルタリングにより最適解を絞り込み、その後パラメトリック発振(臨界)現象を用いて一つの最適解を一気に選択し出力する(量子‐古典クロスオーバー)新しい量子計算原理を提案した。
  • 量子ニューロン:光ファイバー共振器を周回する多数の光パラメトリック発振光パルスをニューロンとして用いる。このニューロンは、発振しきい値以下のポンプレートでは量子アナログ素子として振舞い、量子並列探索と量子フィルタリングを可能とする。一方、発振しきい値以上のポンプレートでは、このニューロンは古典デジタル素子として振舞い、量子‐古典クロスオーバーにより確定した古典出力を実現する。このアナログ/デジタルの両側面をあわせ持つ量子ニューロンを情報キャリアとする。
  • 量子シナプス:光パラメトリック発振光パルスの一部を光ファイバー共振器外に取り出して、ホモダイン検波することにより、内部の光パルスの量子状態を保護しつつ、光パルスの振幅と位相を読み出し、フィードバックパルスを生成する。こうして、光パルス間の任意の結合を一つの量子測定フィードバック回路だけで実現できる。これにより、これまで困難であった全てのニューロン間の任意の重みによる全結合を実装できる。
  • これまでのイジングマシンでは、小さな問題サイズ(D-WAVE量子マシンではN=15~17スピン、日立古典マシンではN=160スピン)しか扱えなかったが、本方式の採用により、大規模な問題サイズ(10,000~100,000スピン)を計算できるようになる。

PMの挑戦と実現した場合のインパクト

量子コンピュータや量子アニーリングマシンが大規模化できないのは、量子情報が局所スピンに格納されているため、その相互接続に限界があるからである。この点、量子コンピュータや量子アニーリング マシンは、メモリ、プロセッサー、コントロールユニットが空間的に分離されている現代コンピュータと同じアーキテクチャーを持っている。全ての量子情報を計算機全体に広がった波動関数に載せることに より、この接続(通信ボトルネック)の問題は解決できるはずである。このような思想に基づいて実現されるコヒーレントイジングマシン、XYマシン、ハイゼンベルグマシン、ユニタリ暗号マシンを、現代の コンピュータの一部(アクセレレータ)として接続したものが、本プロジェクトで開発しようとする量子人工脳である。
現代コンピュータが不得意なタスクである、組合せ最適化問題・機械学習はイジングマシンに、 脳シミュレーションはXYマシンに、量子シミュレーションはハイゼンベルグマシンに、秘匿計算は ユニタリ暗号マシンに、それぞれ分担させる新しい外部ユーザー向けサービスを実現し、社会に提供する。

成功へのシナリオと達成目標

具体的達成目標の実現に向けた戦略・シナリオ

  • 量子人工脳の計算時間、精度、消費電力を現代コンピュータに搭載した最先端アルゴリズムと定量的に比較する。光パラメトリック発振器(OPO)の実装に関しては、ファイバーOPO、ファイバー 4光波混合、ファイバーレーザの3つの実用機を同時に開発して、性能評価する。イジングモデルの 実装に関しては、FPGA回路による量子測定フィードバック方式に切り変え、(連続値)全結合10,000サイトマシン、(3値)全結合100,000サイトマシンを開発する。
  • 量子セキュアネットワークを物理層/鍵管理層/アプリケーション層の3階層構造で開発する。物理層は10km圏、50㎞圏、90㎞圏の量子鍵配送(QKD)リンクから構成し、盗聴検知機能、及びサイドチャネル攻撃対策を実装する。鍵管理層には、異なるベンダーから供給される鍵を統一的かつ効率的に運用する機能を実装し、かつ盗聴攻撃への自動経路切り替え機能などスマート化を進める。アプリケーション層は防衛・金融・医療・スマートインフラ分野のユーザと密接な情報交換を行いながら開発し、専用暗号システム、汎用的なルータ、サーバ、スマート機器への自在な鍵供給を実現する。 QKD装置で使われる要素技術は順次、企業への技術移転を通して製品化を推進する。
  • 強相関の基本量子系である、スピンもつれ系、ハバードボゾン系、ハバードフェルミオン系などを対象として、理論シミュレーションを推進する。また、冷却原子を用いて数約104個、T/TF~0.1の超低温、 Tc/TF~0.1の高い転移温度Tcを予言する特殊な光格子系の量子シミュレーターを開発する。超伝導回路に関しては、サイト数約104個のジョセフソン接合列あるいは超伝導量子ビット列からなる量子シミュレーター、小型量子回路(2~4チャンネル)によるスケーラブルなボソンサンプリング回路を開発する。量子ドット/量子井戸では、小規模スピン量子回路からなるスピン相関非平衡系の量子シミュレータを開発する。

達成目標

  • ニューロン数2048、シナプス結合数4,194,604(全結合)の中規模量子人工脳をインターネットを 介して外部ユーザーに供し、世界中の研究者が自由に使える環境を提供する。
  • ニューロン数が10,000~100,000、ニューロン間シナプス結合数が108~1010(全結合)の大規模 量子人工脳を光パラメトリック発振器ネットワークで実現する。
  • 量子人工脳に搭載するアルゴリズムを、分子設計、通信リソース最適化、スパースコーディング、 充足可能性問題、ボルツマンサンプリング、など様々な組合せ最適化問題、機械学習の分野で開発し、クラウドサービスのソフトライブラリーとして一般公開する。また、XYマシン、ハイゼンベルグ マシンの脳シミュレーション、量子シミュレーションへの応用可能性を合わせて示す。
  • 原理的に盗聴できない暗号鍵を様々な情報端末や制御機器に供給し、機密情報や重要個人情報を安全に、遅延なく、組織をまたいでシームレスに伝送する量子セキュアネットワークを都市圏に構築すると共に、低コスト化、雑音耐性強化できる次世代量子鍵配送技術を開発する。また、秘密計算機能を有するユニタリ暗号マシンの原理検証を行う。

PMが作り込んだ研究開発プログラムの全体構成

量子人工脳

量子セキュアネットワーク

量子シミュレーション

PMのキャスティングによる実施体制


山本 喜久PMの実施体制の詳細は公式HPをご覧ください。    公式HPへのリンク

プログラム資料