ImPACT Program 量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現

プログラム概要

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コヒーレント・コンピューティング(量子人工脳)は、脳における情報処理と量子を用いた情報処理の融合を目指す新しい光コンピューティングです。まず、量子コンピューティングの最も重要なリソースは連続位相を利用した干渉効果にあり、最大の弱点は非局在波動関数実現のために量子エンタングルメントというひ弱な要素を導入せざるをえなかった点にある、という基本認識が背景にあります。そこでエンタングルメントを使わずに非局在波動関数と干渉効果を実現する光子を情報キャリアに用いて、デコヒーレンスの問題を解決します。こうして実用性を獲得しました。次に脳における情報処理の強みとして、目的に応じてネットワークを再構築して、その都度最適なコンピュータを実現していること、状態を常に相転移の臨界点に設定して、自発ゆらぎを大きくゆっくりしておき、外部からの入力に対して瞬時にマクロな秩序(オーダー)を形成できる準備をしていること、という基本指針があります。後者を実現するため、レーザや光パラメトリック発振器(OPO)の2次相転移の臨界現象を計算過程に使います。また前者を実装するため、DOPOネットワークをベースにしたイジングマシーン、レーザネットワークをベースにしたXYマシーン、NDOPOをベースにしたハイゼンベルグマシーンなど異なる機能を持つネットワークを目的に応じて再構成できるようにします。こうして、組み合わせ最適化問題や連想記憶メモリーなどへの応用を目指します。kmオーダーの光ファイバーリング共振器に多重パルスOPOやレーザを実現することにより、1万~100万のノード数を持つグラフが小型な装置に実装できます。しかし、このコヒーレント・コンピューティングには克服すべき課題が残っています。その課題とは、

  • 11万~100万のノードで完全グラフを構成するためには、1億~1兆というエッジを張らなければなりません。提案された量子人工脳では、これを光ホモダイン検波回路とFPGA/ASICデジタル電子回路を用いた量子測定フィードバック回路で実現しようとしています。これだけ大規模なFPGA/ASICを高速で動作させることが本当にできるのか、は決して自明なことではありません。
  • 2同じ組み合わせ最適化問題を解くヒューリスティック(焼きなまし法:SAなど)、量子アニーリング、CMOSアニーリング(日立)などとの性能比較(ベンチマーク)を行い、量子人工脳の適用分野を見通しておく必要があります。
  • 3ノード数1億~10億、エッジ数10京~100京のグラフを実装するためには多数の量子人工脳を並列動作させなければなりません。この並列動作をサポートする通信路をどう確保するのか、見通しを持っておく必要があります。