皆様からいただいたご意見と回答

件名 : 薄膜トランジスタに関する特許のライセンスについて

ご意見 先日、シャープIGZOの優位は「1年程度」という記事に関連して、投稿や質問が寄せられていますので、下記の点について回答させていただきます。 ●東京工業大学の細野秀雄教授らが発明した高性能の薄膜トランジスタ[IGZO(インジウムIn−ガリウムGa−亜鉛Zn−酸素O)TFT]に関する技術は、国民の税金で開発され、JSTが基本特許を保有しているが、なぜその特許を国内だけでなく外国の企業にも供与してしまうのか?
回答 1.JSTが行う特許ライセンスの基本的考え方について
 JSTは、政府の知的財産戦略本部が掲げる「知的財産の創造・保護・活用」のもと、JSTの研究プロジェクトにより創出された発明を世界の主要各国にいち早く特許出願をし、権利の確保を進めてきました。
 またJSTは、成果を広く普及するため特定の企業だけにライセンスする独占的な実施権は認めるようにはしておらず、特許の使用を求めて申し出る企業に対しては、内外の企業を問わず公平に契約交渉し、通常実施権を認めてきております。
 実施権を与えた企業等からJSTが得たライセンス料は、特許法第35条の規定により、一部は発明の対価として発明者に配分されますが、残りは国に返還されます。
2.本特許技術のライセンスの経緯
 細野教授らの透明酸化物半導体に関する技術は、平成16年に論文発表がされた後、平成17年9月に特許出願が公開され、この時点から、国内外の企業に対してのライセンスが可能な状態となりました。本特許は材料、ディスプレイいずれのメーカーにでも活用できる基本的な特許です。
 JSTは、平成21年5月に、世界に先駆けて国内の材料メーカーに実施権を認め、その後も複数の材料メーカーとの間で実施契約が成約しています。材料供給の面で日本は国際的に高いシェアを有する国として、国際競争力を確保しています。ディスプレイメーカーに対しては、国内の複数の企業に対して、本特許技術の紹介およびライセンス条件の提示等を行ってきましたが、当時、国内企業各社は従来の液晶技術に注力しており、本特許技術に対する反応は鈍く、成約には至りませんでした。
 一方で、本特許技術が発表された早い段階から積極的に研究を進めていた韓国サムスン電子から申し出があり、種々の条件交渉の結果、平成23年7月にJSTとの通常実施権契約に至りました。また、最近になってスマートフォン向けなどの中小型の液晶パネル事業を強化する動きが盛んになり、それに伴い、国内ディスプレイメーカーが関心を示すようになって平成24年1月にシャープとのライセンス契約に至りました。なお、本特許技術については現在も国内外の企業とライセンス交渉を継続しております。
 基礎研究の成果として優れた技術であってもそれを自社製品として事業化するためには、その基本となる特許の実施権だけでなく、応用研究や製造技術の磨き上げなど多大な労力が必要です。今回の特許を活用したディスプレイの製品化は、基本的な特許技術の上に積み上げられた、企業による開発努力の成果です。このように、日本の大学発の優れた技術が活用され、その技術がさらに発展し、国際市場に展開されていくためには、基本的な技術について適切に特許を取得し、特定の企業等による不当な独占を防ぎつつ、世界的に広く活用できるようにすることが大変重要です。この考え方は今年のノーベル生理学・医学賞を受賞された山中伸弥教授らのiPS細胞に関連する技術についても当てはまり、同様の理念の下、特許の取得・活用が進められています。
3.グローバルな展開と大学発の技術の活用について
 昨今、国内企業が材料を海外へ輸出し、現地で製品を生産・販売するという、世界的なサプライチェーンが形成されていることも少なくありません。このような状況では、外国企業へのライセンスであっても、材料を提供する国内企業にとってプラスとなり、国内産業の成長が期待ができます。本特許技術のライセンス事案もそのひとつと考えられます。
 なお、JSTは、大学等における基礎研究のみならず、国内における企業と大学の共同研究の推進にも力をいれています。大学等で生まれた技術シーズを特許化し、それらの知的財産を国内の企業との連携により有効に活用し、事業化するなど、国内産業の推進・国際競争力の強化を図っております。
以上のとおり、JSTは今後もグローバルな視点でイノベーションを通じた我が国の成長・競争力強化に貢献すべく知的財産の有効活用を積極的に推進いたします。