皆様からいただいたご意見と回答

件名 : 「肺がんの原因遺伝子の発見とその臨床応用」の「劇的な効果」について

日時 2010年7月2日 16時03分
ご年齢 50代以上
ご職業 その他
ご意見 肺がんの原因遺伝子の発見に深い敬意を表すとともに、がんが薬で治るようになればすばらしいことと意を強くしております。ただ、「研究概要」と「研究成果のインパクト」を読み、事例を追跡したところ、気になることが生じました。そのためメールさせていただいたしだいです。 文中に「劇的な効果」と表現されている事例は、間野教授が医療ガバナンス学会のメールマガジンに投稿した内容(http://medg.jp/mt/2010/06/vol-208-eml4-alk.html)に従えば、次のブログ(http://www.inspire.com/groups/lung-cancer-survivors/discussion/eml4-alk-mutation/)を投稿した患者さんの一例のことです。この患者さんはボストンで臨床試験に参加し、2008年7月31日にブログに投稿した時点では、まさに劇的な効果をあげていました。ところが、大変残念なことに、その約10ヵ月後の2009年5月28日にお亡くなりになりました(http://juliadoesboston.blogspot.com/2009_05_01_archive.html)。そのため、「劇的な効果」をどう評価すればよいのかとまどっております。10ヵ月後に死亡では、「劇的な効果」とは言えないのではないでしょうか。「劇的な効果」を裏付けるさらなる根拠や事例はあるのでしょうか。「本発見によって毎年数万人の肺がん患者の命が救われると予想される」というのは言い過ぎ、あるいは時期尚早ではないのでしょうか。日本での臨床試験の成果に注目しています。
回答 JSTホームページで掲載している「主な事業成果」(http://www.jst.go.jp/seika/01/seika18.html)をご覧になってのご質問と思います。 本研究成果をもとに開発されたALK阻害剤の海外における臨床試験の成果として、評価可能なEML4-ALK陽性肺がん患者50症例のうち、本薬の投与により約9割の患者さんのがんが縮小し、中にはがん細胞が観察されなくなった(完全寛解)患者さんもいるという学会報告が最近されました(J Clin Oncol 28:18s, 2010 (suppl; abstr 3))。これは固形がんの治療薬としては非常に優れた効果といえます。 本薬の有効性について最終的な判断は臨床試験の結果を待たなくてはなりませんが、EML4-ALK陽性肺がんは非小細胞肺がん(全世界の患者数約130万人)の4〜5%(同5〜6万人)に存在することから、上記の成果から類推すれば数万に及ぶ多くの肺がん患者さんを救う薬になると予想しています。 日本における臨床試験は、本年3月から始まりました。したがって、国内のEML4-ALK陽性肺がんの患者さんも本剤の臨床試験を日本で受けることができます。臨床試験の詳細は、主治医にご相談ください。(臨床試験は製薬会社が実施していますので、当機構及び研究者は臨床試験に関するご質問には回答できません。) 最後になりましたが、がんは完全寛解といえども長期的に見た場合、寛解した時点で「治癒」したとは言えない難しい病気です。そのため、研究者はより良い新しい治療法に貢献できるよう研究しております。JSTはその活動を今後も引き続き支援し人類の課題解決へ貢献していきたいと考えております。なお、ご指摘をふまえ、上記JSTホームページの表現は整えることにしました。