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コムギの潜在的能力で食糧危機を回避せよ!

アフガニスタンの大地に再び根を下ろし芽を出したコムギ

アフガニスタンの大地に再び根を下ろし芽を出したコムギの遺伝資源。半世紀の時を超え、アフガンの地に戻ったコムギの遺伝資源は多くの人のサポートと協力を経て、しっかりと大地に根を張りました。これからのアフガンの食糧生産を支える貴重な遺伝資源です。

 世界の人口増加と地球規模での気候変動、これらの影響によって食糧危機のリスクが高まってきています。回避するためには、来る50年のうちに科学技術を駆使して穀物生産量を2倍にすることが必要不可欠。本プロジェクトは、開発途上国のカロリーの25%を支えている穀物であるコムギに注目し、アフガニスタン在来のコムギが持つ特性を生かした乾燥や病気に強いコムギの品種開発を目指しています。持続的・安定的に穀物を育てることが難しい土地であるアフガニスタンでも強く育つ品種の開発は、地球レベルでの食糧安全保障に大きな追い風となるでしょう。

坂 智広日本側研究代表者名: 坂 智広 横浜市立大学 木原生物学研究所 教授

岐阜大学農学部農学研究科修士課程修了。その後農林水産省農業研究センター研究員、九州農業試験場研究員、国際農林水産業研究センター主任研究官を経て、2000年に農学博士の学位を取得、現職に至る。

Abdul Ghani Ghurianiアフガニスタン側研究代表者: Abdul Ghani Ghurianiアフガニスタン国農業灌漑牧畜省(MAIL) 副大臣

カブール大学を1989年に卒業後、農業灌漑牧畜省でDirector of Forest improvements, Deputy Director of Natural Resource Management Directorate, Director General of Policy and Planning Directorateなどを歴任後、2010年より現職。

日本

日本国側の視点

■食糧危機のリスク回避
世界の人口増加と地球規模での気候変動により、食糧危機や国際取引価格の急騰が懸念されています。
アフガニスタンとの共同プロジェクトにより、強くて品質のよいコムギの品種開発を実現させることで、将来起こるかもしれない食糧危機へのリスクを軽減します。


アフガニスタン

相手国側の視点

■安定した食糧供給とアフガニスタン復興
1979年のソ連侵攻以来、混乱状態にあるアフガニスタンにおいてコムギはもっとも重要な作物の一つですが、需要量をまかなうだけのコムギが生産されていないのが現状です。
厳しい自然条件と復興途中という社会条件の中、このプロジェクトを通し、コムギの生産量を現在の1ヘクタールあたり2トンから4トンへと倍増させ、安定した食糧供給を実現することで、人々の生活を豊かにすることを目指します。


プロジェクト概要

アフガニスタンプロジェクト概要

レップスくん×プロジェクトインタビュー

レップスくん

このプロジェクトをやろうと思ったきっかけはなんですか?

先生

京都大学カラコルム・ヒンズークシ探検隊木原均博士を隊長に、戦後初の総合学術調査を行った京都大学カラコルム・ヒンズークシ探検隊。1955年、パンコムギの祖先を探してアフガニスタンのコムギの在来種、近縁野生種の遺伝資源が収集されました。実は2004年からJICAによるアフガニスタンの国立試験場の復興プロジェクトがありました。横浜市立大学には60年ほど前に生物学者、木原均博士がアフガニスタンでの学術調査から持ち帰ったコムギが大切に保存されていて、これらのコムギを用いて何かできないかと思ったのがきっかけです。そして昔の研究成果や思いを受け継いで、2010年に始まったのがこのプロジェクトなのです。

現在のアフガニスタンの食糧事情はどうなっているのですか?

坂先生

コムギ収穫風景カブールに隣接するカピサ州でのコムギ収穫風景。丈の長い在来品種が使われているのがわかります。アフガニスタンの農村地帯では、麦藁も家畜飼料、建築資材等に利用される貴重な副産物で、場所によっては穀物と同じ値段で取引されるところがあるくらいです。アフガニスタンの主食であるコムギの収穫量は目標の半分ほどです。1ヘクタールにつき4トン、というのが理想なのですが、現在は、水・土地・気候といった原因により2トンほどです。不足分やまく種を隣国からの輸入によって補っているので、絶対量が足りない、供給の安定性・持続性が十分でないといった課題があります。食糧保障は人々の生活の保障でもあるので、とても深刻な問題ですね。

アフガニスタンにコムギを戻す際に大変だったのはどのようなことですか?

坂先生

国を超えて品種を持ち運ぶ際の国際ルールが厳しくなったことですね。新たな品種を持ち込んだ時、病気をどう防ぐかといったリスク管理や、それら品種の知的財産権をどういった形にすれば皆が使えるようになるのかといった制度がまだ整備されきっていないので、人材育成を通してルール・システム作りがうまく進むといいな、と思っています。

日本とアフガニスタンが共同開発することによるメリットはなんですか?

坂先生

アフガニスタンでは、長年の内戦による空白の時代があったため、コムギ品種の育成におけるかつての技術、また、自国にあるコムギ遺伝資源の数などの情報が伝達されていません。日本が持つ科学技術と人材育成計画により、この空白期間を埋め、アフガニスタンの環境に合った新しいコムギ品種をアフガニスタンの人自らが開発できるようになると考えています。また、日本側にとっては、これまで木原研究所で保存されてきたアフガンコムギや、SATREPSで新しく開発しようとしているコムギの特性を現地で評価できることで、将来的に日本のコムギ開発にもつながる新しい科学的知見が得られるかもしれません。このように、双方の協力により食糧の安定供給につながる成果が得られることが期待される他、科学技術外交という新しい形でアフガニスタンの復興支援に貢献できることも大きなメリットです。

今後のプロジェクトの展望について教えてください!

坂先生

安全管理の面で我々が頻繁にアフガニスタンに入って共同研究や人材育成ができるというわけではない状況の中、現地に入らなくても成果を達成するにはどうすべきかなどを今後、具体的に考えていく必要があります。例としてはアフガンと似たような環境の多様性を持つ、またアフガンに先行してコムギ品種の開発を達成してきた第三国でのアフガン人材育成研修トレーニングコースを設定できないか、模索しているところです。かつて木原均博士が戦後日本と世界の科学を橋渡しすることで緑の革命につながったように、我々も第2の緑の革命に向け活動していく計画です。


レップスくん豆知識

日本語が書かれたバス 毎日ふれあい号!!日本で使われた車が廻りまわってカブールにやってきます。日本語のロゴは本物の日本車の証。彼らにとっては最高の宝物です。アフガニスタンには日本語が書かれた日本車がたくさん走っているんだ!車に書かれた日本語は現地の人にとって品質のよい車の目印になるんだって!なんだか嬉しいね!



インターンからひとこと

アフガニスタンプロジェクトの紹介を担当したインターンの杉江郁美 アフガニスタンプロジェクトを担当しました杉江郁美です。
 こちらのプロジェクトはインターンとして活動を始めてから一番深く関わったプロジェクトで、紹介文を書かせていただけることになってとても嬉しかったです。研究室への訪問、留学生との交流、市民フォーラムや写真展への参加など、様々なイベントを通して、この60年前から現在にまで繋がっているプロジェクトの壮大さとプロジェクトに携わる人の熱意に触れて感動したのを覚えています。特に代表研究者の坂先生の「"Hungry Cause Anger"、小さなコムギの研究がアフガンを救うことになる」という言葉は心に深く残っています。

 インターン活動を通して、私自身、今まで知ることのなかった科学技術や国際協力が少し身近に感じられるようになりました!この記事がみなさんにとって地球規模の問題が少しでも身近に感じられるきっかけになればとても嬉しいです!
(SATREPSインターン・杉江郁美) 

生物資源

『持続的食糧生産のためのコムギ育種素材開発』 「希望の種」となる新しいコムギを
アフガニスタンに播け!

研究代表者(所属機関) 坂 智広(横浜市立大学木原生物学研究所 教授)
国内共同研究機関 理化学研究所、鳥取大学
採択年度 平成22年度(2010年度)
研究期間 5年間
相手国 アフガニスタン・イスラム共和国
相手国研究機関 農業灌漑牧畜省(MAIL) 他

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