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インドネシア固有の生物資源の活用と保全

 生物資源は、新たなバイオテクノロジーや医薬品の材料として研究や産業において重要な役割を持っています。生物多様性の高い熱帯の途上国の持つ生物資源は研究材料として魅力的です。しかし、生物資源を活用するために、利用における途上国側との利益配分は、線引きが難しく長期にわたる議論が交わされてきました。生物多様性条約のもと、2010年名古屋で開催されたCOP10(第10回締約国会議)では、長い間懸案であった生物資源の提供国と利用国の利益配分が議論され、名古屋議定書が採択されました。途上国が自国の生物資源を正確に把握し、適切な管理をする研究センターを設立することとし、先進国との友好的な関係で利用を促進する国際共同研究の基盤を整備することを目指します。
 ここで紹介するプロジェクトの舞台はインドネシアです。世界有数の多様な生物種を持つこの国では、今自然破壊によってその貴重な多様性が損なわれつつあります。インドネシア固有の生物資源の保全については、インドネシア科学院(以降LIPI)生物学研究センターが中心的な役割を担い、JICAのプロジェクトとして動物学、植物学の研究センターが整備されてきました。微生物は目には見えませんが、食品や環境に重要な生物です。その研究をするのがプロジェクトの目的です。

鈴木 健一朗日本側研究代表者名: 鈴木 健一朗 (独)製品評価技術基盤機構(NITE) バイオテクノロジー本部 参事官

専門は細菌分類学。東京大学で学位取得。理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)の系統保存室長を経て、2001年からは製品評価技術基盤機構生物遺伝資源センター(NBRC)の開設、運営に従事している。

Siti Nuramaliati Prijonoインドネシア側研究代表者名: Siti Nuramaliati Prijonoインドネシア科学院(LIPI)・生物学研究センター(RCB)所長

専門は動物学で、野生鳥類の繁殖学。英国グラスゴー大学にて学位取得。LIPI生物学研究センターの動物部門の部門長を務めた後、LIPI本部に勤務し、2008年より生物学研究センター長。

日本

日本国側の視点

■生物資源の効率的な管理技術の提供
これまで価値化されなかった微生物も、分類、機能性の評価、再定義をすることによって、新たな付加価値をつけることが可能となります。
NBRCが構築してきた生物資源の保全管理に関する技術の共通化により、日本とインドネシアが協力して、生物資源を効率的に管理できます。結果、我が国のインドネシア生物資源への適切なアクセスが可能となります。


ペルー

相手国側の視点

■インドネシア固有の生物資源を守る為に
LIPIでは過去のJICA技術協力プロジェクトにより、センター内の動物、植物部門の整備が先行して進められてきました。LIPI傘下のボゴール植物園は英国のキューガーデン、オランダのライデン植物園と並ぶ植物園として評価されています。微生物部門も、このプロジェクトによって、世界レベルの微生物保存機関として学術的に重要な役割を果たすとともに、国の生物資源管理に貢献することが期待されています。


プロジェクト概要

熱帯地域にあるインドネシアは、オランウータンやコモドオオトカゲが棲んでいるような世界有数の生物多様性を有する国です。そして日本とは異なる微生物が発見されることが期待されます。近年、微生物資源を、農業や食品、医薬品などに活用することは環境にやさしい技術として関心が高まっています。本プロジェクトの研究では、農業や畜産に役立つ有用な微生物の発掘を行い、特性を解明するとともに、得られた微生物を保存・管理し、それらの情報をデータベースにまとめることで、微生物資源の持続可能な利用と保全に役立てます。

レップスくん×プロジェクトインタビュー

レップスくん

このプロジェクトの持つ意義をどのようにお考えですか?

鈴木先生

標本私の所属するNITEは、過去6年間にわたってLIPIとの共同研究を実施してきた実績があります。いままでの研究実績を生かし、2機関間の協定の下で実施されてきた従来の体制から、微生物を国の資源として一つの国内機関に集約し、適切に整備・管理していく中核機関を整えたいという要望がインドネシア側からあげられました。生物資源を保持する者(国)が責任を持ってきちんと管理できる体制を整えることが、インドネシアのみならず、今後アジア全体の資源保存にとっても重要なのではないかと考えました。

どんなことを意識して活動しているのですか?

鈴木先生

インドネシアの人達に、自国原産の微生物は生活・産業にとって、とても重要であり貴重な財産・資産であるという気持ちをまずは根付かせたいと思います。
この資産を利用する研究開発だけでなく、自らの資産を正確に認識し、識別する分類学の知識と技術をインドネシアの人々自身に身につけてほしいと思います。日本では古くからお酒や、納豆といった微生物を食産業的利益に結び付けてきましたが、インドネシアにもテンペなどの伝統的発酵食品があります。その可能性を彼らにも気づいてほしいですね。

共同研究の重要性とは?

鈴木先生

ミーティング一言で言えば、インドネシアと日本の間の研究交流が盛んになるということです。部分的ではありますが、NITE-LIPI間では日本側からの技術移転、インドネシア側からの資源と情報の提供、という形の共同研究を実施することで、研究者交流やノウハウの共通化といった仕組みができます。その中から、今回のプロジェクトには日本の大学で博士号を取得したインドネシアの研究者も数多くいます。彼らは日本での経験を生かし、本プロジェクトでは、5年間で25名の日本人研究者を現地に短期派遣するとともに、インドネシア側からは約60名の研究者を日本に短期招聘することによって、研究交流の深化を図ることができるのではと思っています。

プロジェクトを進める上で一番の困難は?

鈴木先生

両国の微生物の研究者は同じ興味を持って研究を進めますが、それを管理する役割として政府機関があります。彼らは、他国との共同研究において、いかに自国の資源から利益を得るかという考えを持っています。そうした研究者と管理者との間にある意識のギャップをいかに乗り越えるかが困難なポイントです。

今後、活動をどのように進めていく予定ですか?

鈴木先生

今春よりプロジェクトが正式に開始される予定ですが、まずはLIPIに微生物の分類と同定に使う分析・測定機材を導入し、研究体制を整えることから始めます。平行して、研究者の派遣、招聘を両国間で行って技術移転をはかり、LIPIに微生物の保存センターを作ります。


レップスくん豆知識

微生物というと、病原菌のようなものをイメージする人も多いと思うけど、実はわたしたちが普段口にする納豆やヨーグルトといった食べ物や、医薬品を作るのに大事な役割を果たしているんだよ。



生物資源

研究代表者(所属機関) 鈴木 健一朗((独)製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 参事官)
国内共同研究機関 理化学研究所、東京大学
採択年度 平成22年度(2010年度)
研究期間 5年間
相手国 インドネシア共和国
相手国研究機関 インドネシア科学院(LIPI)・生物学研究センター(RCB)

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