iPS細胞用培養液製品:現状では培養液に添加剤を加えて最終調製する必要があるが、開発する新規培養液は安定性が向上するため、完全調製済み培養液として提供される。
iPS細胞用培養液で培養されたヒトiPS細胞:従来必要とされたフィーダー細胞や動物由来成分を使用しなくても、未分化性を維持した状態での増殖培養が可能である。
株式会社細胞科学研究所(宮城県仙台市)
産業技術総合研究所
平成24年10月〜平成27年3月
iPS細胞に代表される再生医療が実用化されようとしている中、体外での細胞培養に必要な細胞培養液には可能な限り動物由来の材料を用いないことが求められ、こうした背景から無血清培養液の開発が盛んに行われています。
無血清培養液で細胞を培養する際には、増殖因子を添加しています。現在ではFGF2などの線維芽細胞増殖因子が汎用されていますが、長期間に渡る増殖活性の持続が困難であり、毎日培養液を交換しなければなりません。また保存性の観点から培養液と増殖因子は個別の取扱となり、用時調製が必要となっています。
当該プロジェクトでは、こうした課題の解決をめざし、動物由来成分を含まない無血清培養液と高い生理活性と安定性を有する細胞増殖因子FGFC(FGFキメラタンパク質)を用いて、ヒトiPS細胞用の “高機能化細胞増殖因子(FGFC)含有型無血清培養液(完成培養液)”を開発しています。
従来の培養液では、使用の都度ユーザーが不安定な増殖因子を添加し、調製するためコンタミネーションリスクや品質的な問題が発生することが危惧されます。しかし、保存安定性の高い増殖因子であるFGFCを用いることで、これら問題点を解決し品質管理の行き届いた “完成培養液”として出荷・販売することが可能になることが見込まれます。また、「再生医療新法」および「改正薬事法」が先の臨時国会で成立し、今後多数の企業が再生医療分野へ参入し、培養液の需要も格段に増加すると考えられるため、従来より進化したiPS細胞用無血清培養液を開発、上市することはiPS細胞の実用化、さらには産業化を促進すると共に、大きな経済的波及効果を生み、震災復興に貢献します。
FGFCまたはFGF2を添加した無血清培養液について、細胞の未分化性維持能、細胞増殖促進能などの解析を行っています。目標とする製品へ向けて、さらなる研究開発を実施中です。
細胞科学研究所は、様々な細胞に対応する“細胞培養液”製品を数多く提供している高度な技術と製造ノウハウを持つ企業です。産業技術総合研究所と取り組む本研究の完成培養液は、将来的に医療分野に大きな革新をもたらす“被災地発”の技術として、この東北地方に新たな医療関連産業を起こし、“復興”そして“新興”へと繋がる一大拠点形成をも実現する開発であると確信し、支援をしています。
(担当マッチングプランナー 仙台事務所 磯江準一)