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取り組み・成果

最終更新日:平成26年3月31日

医学・医療等

緑内障治療用の新しい目薬の開発に向けて

高い眼内移行性を有するナノ粒子眼科製剤の開発と有効性評価

レボフロキサシンナノ粒子のSEM画像

レボフロキサシンナノ粒子のSEM画像

プロドラッグナノ粒子分散液中のレーザー光散乱

プロドラッグナノ粒子分散液中のレーザー光散乱

企業

大内新興化学工業株式会社(福島県須賀川市)
ハムリー株式会社(茨城県古河市)

研究機関

東北大学多元物質科学研究所
東北大学医学系研究科

研究開発実施期間

平成25年3月〜平成27年3月

研究概要

既存の眼病治療薬は点眼により患部に到達する有効成分はごくわずかであり、点眼治療時の患者への負担や副作用が懸念されます。本研究では、有効医薬成分を化学修飾し微粒子化させ、効率的に患部まで運ばせるドラッグデリバリー性を有するプロドラッグを開発します。東北大多元物質科学研究所のシーズに基づき、大内新興化学工業(株)では、水に溶けにくい置換基を化学的に結合させた候補化合物を合成し、再沈殿させて得られた薬剤ナノ微粒子の分散液の評価を東北大多元物質科学研究所で行います。現在は、プロドラッグデザインや再沈殿法の条件などを幅広く検討し、安定なナノ粒子を製造する条件を探索中です。
ナノ粒子化したプロドラッグの薬理効果は、東北大医学系研究科およびハムリー(株)における動物実験により評価します。
本プログラムでは、ナノ粒子化点眼薬の最適化と安全性・有効性試験を目標としています。GMP準拠ラインで製造されたナノ微粒子分散液は、その後目薬メーカーで、臨床治験を通じて、最終医薬品に仕上げられることになります。

期待される効果

本研究開発の概念になる薬剤が開発されれば、眼疾病予防、失明予防効果が期待でき、医学界に大きな波及効果が期待されます。今回目指す薬剤は、既存原薬のプロドラッグであり、化学修飾も限定的であるため、開発品の安全性、有効性が大幅に損なわれる可能性は低く、被災地の中小医薬原体メーカーが目指す創薬事業に相応しい課題です。実現すれば、被災地経済の活性化が期待できます。

マッチングプランナーの声

大内新興化学工業(株)は、福島県内に原町工場、須賀川工場を有する、ゴム用薬品、農薬系抗菌剤、医薬用原体製造を行なう企業です。震災の津波と原発事故で原町工場の従業員は須賀川工場に避難、須賀川工場は建屋の瓦が落下、パイプラインの切断、タンクの浮き上がりなどの被害を受けました。原町工場の一部を残し、復旧しています。医薬GMPに対応した製造管理、品質管理システムも導入し、企業活動を行なっています。
そのような中、同社の原薬製造ラインを利用した新しい事業を模索し、東北大で研究中のDDSの基材となるナノ微粒子のシーズに注目したものであります。東北大コーディネータの協力を得て、両者を結びつけることが出来ました。四半期ごとの開発会議で成果を確認し、開発のベクトルを合わせ、進行中です。
(担当マッチングプランナー 郡山事務所 渡邉博佐)

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