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取り組み・成果

最終更新日:平成26年3月31日

製造

“軽く” “強く”そして“金属代替”へ

長繊維強化熱可塑性樹脂を用いた軽量・高強度化技術の開発と金属代替製品への応用

長繊維の一般的なウエルド状態

長繊維の一般的なウエルド状態。強い繊維配向とボイドの連結によりウエルド部にクラックが発生

ランダムな繊維配向→ 強度の改善

従来:強い繊維配向(=接触・相互作用が起き難い)
         → 強度低下
本法:ランダムな繊維配向(=相互に刺さる効果)
       → 強度の改善

実際の画像(ダンベル試験片)

実際の画像(ダンベル試験片)
粒子添加によって繊維の配向状態が乱雑になっている

企業

株式会社エムジー(宮城県利府町)

研究機関

山形大学理工学研究科
宮城県産業技術総合センター

研究開発実施期間

平成25年1月〜平成27年3月

研究概要

空調機など生活家電の部品は、アルミニウム合金を主流に鋳造と切削加工を組み合わせ、製造されています。これに代わる新しい製品としまして、当該プロジェクトでは長繊維強化熱可塑性樹脂を用いる軽量・高強度かつ省エネ効果の大きい“金属代替製品”を開発します。
金属代替製品を開発するに当たり、実用性の面から大きな課題とされているのが“ウエルド部の強度低下”です。射出成形加工において、樹脂の合流するウエルド部では強い繊維配向に起因して強度低下が引き起こされることが確認されており、この分野における“難題”ともなっています。これに対し、短繊維または粒子を混合する長繊維分散系複合材料を適用することによって、局所的に“不均一な場”を生じさせて射出成形時の溶融体の流れを乱し、繊維の配向状態を乱雑にする、つまりウエルド部の長繊維配向分布が改善でき、繊維配向がランダムとなるため異方性が出難く、ウエルド部の強度向上を実現できます。この課題解決のアプローチに基づき、軽量かつ高強度な金属代替製品を開発します。

期待される効果

東日本大震災以降、省エネが重要視されていることも相まって、新たなマーケットとして金属代替製品市場がより拡大すると予測されています。このような背景が後押しし、目指す“軽量・高強度樹脂製部品”の需要増大が見込まれています。適用製品を広げていくことで、材料使用量の増加と材料単価のコストダウンを促し、そして自動車のエンジン周辺部品など更なる用途開拓へと繋がり、大きな波及効果が期待できます。同社は牽引役としてこの“復興促進スパイラル”を奮起させ、被災地域のプラスチック成形加工関連企業と共に、震災復興へ貢献していきます。

これまでの研究開発成果

長繊維分散系複合材料に粒子径が1μm程度以下であるCaCO3粒子を分散させることでウエルド強度の改善が可能であることがわかっています。さらに、金型構造によってボイドの発生を抑えることにより、上記と併せて更にウエルド強度が向上することが確認されています。現在は目標とする製品へ向けて、さらなる研究開発を実施中です。

マッチングプランナーの声

製品化へ向けた研究開発目標の設定について、山形大学、宮城県産業技術総合センターの技術視点を加えて課題の作り込みを行うと共に、ユーザーによる評価を研究計画に取り入れ、開発へとフィードバックすることで、早期事業展開がスムースに図れるようプロジェクトメンバーに提案し、本プロジェクト実施に至っています。
(担当マッチングプランナー 仙台事務所 磯江準一)

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