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取り組み・成果

最終更新日:平成25年12月27日

製造

ガラスと同レベルの硬くて疵付きにくいレンズ

熱流動解析手法による「ガラス表面硬度並み熱硬化性樹脂」用射出ユニット部の熱コントロール基準の確立

図1 射出部の解析結果

図1 射出部の解析結果

車載カメラ用途例

車載カメラ用途例

開発シリンダー(ウォータージャケット)

開発シリンダー(ウォータージャケット)

開発ノズル

開発ノズル

企業

吉川化成株式会社東北工場(岩手県奥州市)
新日鉄住金化学株式会社(東京都)

研究機関

岩手大学工学部

研究開発実施期間

平成24年12月〜平成25年3月

研究概要

新規に開発された熱硬化性樹脂:エスドリマー®化合物性は光学特性(ガラス同等)・耐熱特性(300℃以上)・表面硬度(6H:ガラス同等)に優れ、ガラスの代替材料となり得る素材です。しかし、温度が5℃変化すると粘度は約2倍変化するため、既成の液体射出成形機LIM(Liquid Injection Mold)の射出ユニットでは成形が困難です。このPDV樹脂を安定して連続成形できる射出ユニットの開発を目指し、その成形で一番重要な要素である「ユニットの熱コントロールの基準」を短期間で確立するため、岩手大学の「相変化を伴う熱流動の解析」シーズを活用して、熱流動解析シミュレーションと成形試作実験による検証を行いました。(図1)

期待される効果

自動車の安全性や自動運転などの技術開発が進み、車載用カメラモジュール需要が図2のように急拡大しており、技術開発やシェア争いが激化しています。現在、日本のカメラモジュールメーカーは、世界市場の約7割弱のシェアをもっていますが、海外の新興勢力も台頭してきています。モジュールシェアの優位性を保つためには、軽量化・小型化・生産性向上が必須要件です。
モジュール部品の中のカメラレンズの内、特に外気に触れる一番外側に位置するものは、自動車が求める擦過性、耐熱性、衝撃性などの観点から『ガラスレンズ』が使用されています。
今回、これらを満足できる樹脂が開発され、その射出成形条件を確立すれば、軽量で低価格なレンズを供給することができ、日本でのカメラモジュール生産を維持することに貢献できていきます。

研究開発成果

熱流動解析シミュレーションと成形試作実験による検証にて、射出ユニット部の熱コントロール基準を確立することができました。
「とうほく6県 自動車関連技術展示商談会」に出展し、自動車関連メーカーより新規熱硬化性樹脂:エスドリマー®がガラス代替として着目を頂き商談が進行しております。
可能性試験を経て、経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)」の採択に結びつけることができました。残された成形工程のコントロールと金型内における熱流動解析やキャビティ内での硬化過程の安定化等の課題についてはサポイン制度を活用して解決し、事業化を図っていきます。

図2 車載カメラの需要予測

図2 車載カメラの需要予測

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