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取り組み・成果

最終更新日:平成26年1月31日

環境・社会基盤・その他

日本に元気を!ウィンタースポーツと計算化学の融合

マルチスケール計算化学を活用した新規スキー用ワックスの開発

企業

株式会社ガリウム(宮城県仙台市)

研究機関

東北大学未来科学技術共同研究センター

研究開発実施期間

平成25年1月〜平成27年3月

研究概要

スキー競技のあらゆる条件下で抜群の滑走性と耐久性を併せ持つ“究極のスキーワックス”を開発します。スキー用ワックスはパラフィンを主成分とし、種々の添加剤が加えられ、製品化されます。各種競技会においては、ワックスの選定は勝敗を左右する重要な要因です。添加剤選定には科学的知見に裏付けられた根拠は十分でなく、商品開発は主に試行錯誤的な手法により行われています。
本研究では、東北大学の保有するミクロ〜メソ〜マクロスケールまで対応可能なマルチスケールシミュレーション技術と各種分析評価・計測技術とを組み合わせることにより、滑走面と雪面との摩擦現象、撥水性、滑走面に対するワックスの浸透現象等を解明し、従来、官能試験が主であった摩擦係数等の指標を定量化します。これを基に実験、機器分析を行い、種々の条件下における最適添加剤選定の指針を得ます。これにより、従来品を遥かに凌駕する高性能スキー滑走用ワックスの商品化を目指します。

期待される効果

前記の“究極のスキーワックス”が世界に先駆けて開発された場合、日本スキーチームによって真っ先に使用される。これによりオリンピック、世界選手権等の大会で上位進出に寄与すれば、未だ、復興途上にある被災地に明るい話題をもたらします。同時に同社(製品)の名声が伝統ある欧州をはじめとし、グローバルに高まることにより、被災地にある小さな企業発の“グローバル・オンリーワン”製品が世界中で愛好され、同じ境遇の被災地企業にも勇気と希望をもたらすことが期待されます。
また、本研究により得られる“雪面での潤滑性や撥水性”に関する知見は、タイヤゴム、窓ガラスのコーティング材等、自動車関連分野その他への新たな展開が期待できます。

これまでの研究開発成果

機器分析により、スキー滑走面に対するワックス浸透状態を評価しました。この種のデータ報告事例はこれまでにないです。本プロジェクト開始後に導入された摩擦試験機により、各種ワックスの添加物有無・種類と摩擦係数の比較を行いました。また、浸透・摩擦摩耗・撥水の三つのシミュレータを予定通り完成させました。今後、実験との整合、特性予測等に活用する予定です。

マッチングプランナーの声

私が、企業で永年実用化に携わったLEDやレーザー用の化合物半導体GaAsが1980年代、脚光を浴び、その原料であるGa(ガリウム)の高純度化精製を雪深い秋田県の鉱山会社が始めました。同社は用途拡大のため、その静電気除去性に着目し、“Ga配合スキーワックス”を開発し、特に選手や上級者の高い評価を受けたと当時から聞いていました。その部門が分離・独立したのが本企業(株)ガリウムで、今回マッチングプランナーとして関わることになったことに運命的なものを感じています。
(担当マッチングプランナー 仙台事務所 藤田慶一郎)

 

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