Py/ICP-MS装置のインターフェイス部
Pyの試料導入部
Pyのコントローラー
フロンティア・ラボ株式会社(福島県郡山市)
産業技術総合研究所
平成24年10月〜平成26年9月
環境試料(水、土壌、廃棄物)、工業製品(プラスチック)、食品などに含まれる微量の元素を簡便にかつ高感度で測定するための装置で、分析試料を加熱するための熱分解炉(Pyと略)と、元素を検出するための高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MSと略)とをオンラインで結合したPy/ICP-MS装置を世界で初めて開発します。熱分解炉では試料を急速に加熱することにより試料中の元素を気化させ、元素は化学形態(例えば、水銀だと無機水銀とメチル水銀など)に応じて気化温度が異なるため、正確に制御しながら昇温すると化学形態別に気化することが可能となります。これをICP-MSで高感度に分析します。これまではPyで気化した元素をICP-MSに導入しようとすると、温度が低下し配管に吸着する問題がありましたが、本開発では従来の問題を解決できるPyとICP-MSのインターフェイスを開発するのがポイントとなります。
この解析装置により、例えば、放射性物質で汚染された土壌、ガレキ等を種々の条件で加熱・焼却した際の挙動のシミュレーション、解析が迅速に出来るようになります。津波被害により被災地各地で重金属に汚染された土壌が問題となっていますが、そこでも本装置の適用で迅速分析が可能となります。工業製品(ICチップ)やその原材料(プラスチック)に含まれてはならないとされるカドミウムや臭素系難燃剤などの欧州の有害物質の規制(RoHS規制)に関わる元素を簡便・安価に検査できるため、工業製品の検査コストの削減や、製品輸出に伴うリスク低下に効果も期待できます。また、食品試料中のヒ素や水銀などの有害元素や、健康維持に必須な元素の迅速な分析が可能となるため、食品に対する安全・安心につながり流通を活性化する効果もあります。本製品は、従来よりも少ない労力・時間で、迅速な分析を可能とするため、直接的な検査コストの低減に効果があるとともに、安全・安心の向上を通じた流通の活性化など間接的な面からも経済・社会への貢献が期待できます。