筒状容器で甘草を約1年栽培した写真である。土壌栽培とほぼ同様の生育状況である。
甘草は露地でも栽培中である。
筒状容器で栽培1年後の甘草の根。円盤状のものは筒状容器の底板。
株式会社カンナ(千葉県富里市)
奥羽大学薬学部
平成24年10月〜平成27年3月
漢方薬の原料として一番使われるのが「甘草(カンゾウ)」という植物であり、甘草が配合される処方は漢方薬全体の70%以上にもなります。この甘草、実は全て輸入ものなのです。戦国時代、果敢に栽培にチャレンジした武将がいましたが、残念ながら失敗に終わり、以来今日まで海外から輸入されています。
しかし、生産国では乱獲等により、絶滅の危機に直面し、海外への輸出を規制するようにもなっています。このような背景から近年日本国内では甘草の栽培研究が活発になりつつあります。
私たちは日本の気候でも生育する株を発見できたので、次に上手に育てる栽培技術の開発を行なうことにしました。甘草は花や葉ではなく、根を利用しますが、この根の生長には3〜5年もかかります。狭い日本ではもっと早く成長させて土地利用を効率化させる必要があり、研究の結果、今では20か月で収穫できるようになりました。
我々は現在、もっと効率良く栽培するため、苗作り、肥料、温度や水の管理法、地中深く複雑に絡み合う根の収穫技術、さらには国産甘草の成分分析等、いろいろな方面から研究開発を進めています。
甘草の最大の生産国である中国は、現在も輸出規制を継続しています。国際状況により今後一方的に規制が厳しくなる可能性は否定できず、甘草入手は大きなリスクを抱えているのが実情です。
本研究でもたらされる国産甘草の供給は、漢方原料に関する危機対応策として大変重要な解決策であり、社会的にも大きな貢献をなし得るものと考えています。
甘草は輸出国の希望で価格が決まっており、日本の医療制度・薬価制度を配慮した上限価格で留まっているが実情であり、今後の価格予測はつかないのが現状です。したがって本研究で生産技術を確立予定の国産甘草は、その生産量の増大と共に甘草の流通価格にインパクトを与えることになり、経済的安定性へ貢献できるものと考えています。また、この生産技術は放射性物質汚染地でも安全性の高い甘草を栽培でき、被災地の復興促進に役立つことが期待できると考えています。
マッチングプランナーは「自ら体験し理解する」という姿勢で、甘草の栽培試験現地を適時訪問して目と舌(甘草は甘味料!)で実体験しながら本テーマの抱える課題を現場目線で理解した上で高所から冷静的確なアドバイスをしています。本研究開発では、将来課題として製品化検討が待ち構えており、このためには根の砕粉技術開発が必須ですが、本研究開発範囲外のこのような課題についてもマッチングプランナーの研究者ネットワークを活用して、広い範囲から適切な機関の紹介等をしていただきました。
(研究責任者 奥羽大学薬学部 准教授 伊藤徳家)