CREST「免疫難病・感染症等の先進医療技術」領域の第5回(最終)公開シンポジウム
-2008年12月15日 東京コンファレンスセンター -

山中教授は、CREST「免疫難病・感染症等の先進医療技術」領域の第5回(最終)公開シンポジウムにおいて、「臨床応用に向けたiPS細胞の展望と課題」と題し、iPS細胞の樹立、その課題の克服、iPS細胞の今後の展望について、5年間のCREST研究における成果を発表しました。

本研究では、真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立を目指しました。まず、iPS細胞は、2006年のマウスついで2007年のヒトで4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)をレトロウイルスベクターで導入することでiPS細胞の樹立に成功しました。最初のiPS細胞には、c-Mycやウイルスベクターに起因する腫瘍形成が危惧されました。その後、この課題克服に向けての研究が進められました。c-Mycを除く3因子でのiPS細胞の作製、レトロウイルスベクターを用いないマウスiPS細胞の作製に成功しました。これらの方法で誘導されたiPS細胞は、いずれも、ES細胞に匹敵する分化多能性を持つことが確認されました。特に、レトロウイルスベクターを用いないマウスiPS細胞は、iPS細胞の誘導にゲノムへの遺伝子挿入は必要なく、体細胞における多能性誘導因子の一過的発現で十分であることが明らかになりました。また、安全性については、最初のiPS細胞では高頻度で認められた腫瘍形成も、その後の改良iPS細胞では殆ど腫瘍が発生していないことが確認されました。安全性に関する知見が着実に集積されつつあることが示されました。

iPS細胞の樹立とその後の進展は、近い将来、ヒトiPS細胞に由来する各種細胞が難治性疾患の病態の解明、新薬候補物質の探索、薬物毒性の解析に、PCR技術と同じように“ツール”として広く利用されるものと期待されます。さらに、レトロウイルスベクターを用いないiPS細胞の樹立とその後の安全性に関する研究の進展は、脊髄損傷や若年型糖尿病などの難治性疾患に対する細胞移植治療への応用に向けた基盤研究が着実に進展していることが示されました。

鉄系超伝導物質の結晶構造