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アートな科学

【アートな科学002】  〜JSTの研究開発課題の中の美しい1枚をご紹介します〜

より堅牢な磁石を求めて

【解説】
右の黄色の画像は何だと思いますか?

どんなロッククライマーも足を取られる滑らかな岸壁…?

よくよく見ると写真ではなさそうと思った方は、正解!
これは物理的な凸凹ではなく、私たちには触れることすらできない「磁力」を測って描画したものです。

磁気力顕微鏡(MFM)を通して磁性試料を観察すると、探針の先の磁石とのわずかな引力や反発力を感じ取って、溶けて折り重なるキャラメルのような濃淡が描き出されます。こまかな磁区の向きによって色の濃淡がついて、試料表面の磁場情報を伝えているのです。磁力を匂いで観測できる機械があれば、甘い香りがするのかもしれない、そんな想像が膨らみます。

では左の白黒画像はなんでしょうか?

カー効果偏光顕微鏡(MOKE)では、光を磁性体に当てたときに反射光が楕円偏光に変わる現象を読み取ります。簡単に言うと光がねじれて反射するのです。カー効果は10年くらい前まで普及していた光磁気(MO)ディスクからデータを読み出すときにも使われていました。
とりどりの濃淡は、地学の教科書に載っている鉱石の偏光顕微鏡写真を彷彿とさせますが、これも磁気の向きを表します。

よく見ると、キャラメル色の画像と白黒の画像は、模様はまるで違いますが、輪郭が一致するところがあります。なんと、同じ試料の同じ部分を測定したものなのです。より新しいMFM画像のくっきりとした描線が技術の進歩をうかがわせます。

ちなみにこの試料は、ネオジムや鉄、ボロンを主成分とする強力な永久磁石。そろっていると思われがちなN−S極の向きに、十数度のばらつきがあることがMFM画像から読み取れます。方向をそろえればもっと強い磁石になるだろうか、表面に別の金属をつけたらどうだろうか、と研究が続きます。

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【JST課題名・研究者名】
研究成果展開事業
産学共創基礎基盤研究プログラム
技術テーマ「革新的次世代高性能磁石創製の指針構築」
研究課題名:
「3次元磁区構造観察装置を用いた、永久磁石の微構造と磁区構造の相互作用の研究 」
研究代表者:小林 久理眞 教授(静岡理工科大学 理工学部 物質生命科学科)

撮影者:小林 久理眞 教授