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プロジェクトの概要

研究構想の概要

 有機化学は100年以上の歴史があり、炭素や水素、窒素、酸素などの基本元素を中心とした限られた構成要素から、無数の反応をもとに無数の化合物を作り出すことができます。得られた化合物はNMRの他、質量分析や単結晶構造解析などを駆使して正確に構造決定され、生理活性のほか、電子機能や磁気機能を持つ物質まで存在します。合成と構造決定、機能の三要素が揃うことで成熟した科学体系が築かれています。
 一方、無機化学はこれまでほとんどが結晶という「半無限」構造を持った物質を対象としてきており、おおまかには組成と結晶相というわずか2つのパラメーターだけで成り立っていました。近年になり、ナノテクノロジーの進展とともに無限の制約が取り除かれることで、さらに粒子サイズと表面という別のパラメーターが加わった。このサイズが極限まで小さくなる最終的には原子1つにまで行き着きますが、その手前であるサブナノ領域に数個から十数個の原子からなる「クラスター」と呼ばれる物質が現れています。サブナノ粒子とナノ粒子の最も大きな違いは結晶構造の有無ですが、この違いが、サブナノ粒子のサイエンスを展開する上での大きな壁となっていました。本プロジェクトでは、ナノ粒子と一見類似していながらも、既存科学が全く立ち入ることが困難とされていたサブナノ粒子の未開拓領域に、「合成」と「構造」「機能」の3本の柱を立て、新しい学理としての体系化と、社会実装をも見据えた大量合成プロセスへの道筋をつけます。
 本プロジェクトの目標は、これまでCREST等で培った精密金属集積およびそれを基盤としたサブナノ粒子の精密合成に関する成果を踏まえ、@サブナノ粒子を種類豊富な金属元素を原料に1種類のみならず複数種類自在に組み合わせ、原子単位で精密にハイブリッドする方法を確立し、次世代の革新的な機能をもつ新規サブナノ粒子を創製することと、Aサブナノ粒子の特性と原子数・元素種との相関を解明し、新物質群の位置づけを明確にすることで、未来化学の礎となるサイエンスの創出に資する新しい次世代マテリアルライブラリーの作成に挑むことです。
 これらを達成するため、後述のグループ体制を構築し、各グループが密接に連携して研究を推進します。
 また、本プロジェクトで創製したサブナノ粒子を社会実装段階へとスムーズに移行できるよう、社会ニーズ・技術動向の把握や創製したサブナノ粒子の成果と密接に関わり得る企業情報の収集を平行して行います。同時に意見交換を進め、試料等を企業に提供するとともに、クローズドなミニコンソーシアムの形成を目指し、社会実装化に向けた準備を行う。

研究体制

研究体制図

(1)ハイブリッドプログラミングムグループ
 本グループは、原子数・配合比を精密に制御したサブナノ粒子の合成を可能とする構造体の開発を目的とします。特に、デンドリマーポテンシャル勾配構造を利用した段階的な金属集積を基盤として、多様な金属種において原子数・配合比の精密集積制御を達成します。あわせて他のグループへこれらの構造体を供給する支援体制も構築します。

(2)サブナノ創製グループ
 本グループは、(1)ハイブリッドプログラムグループが合成した精密分子リアクター等を活用し、周期表に存在する様々な多種元素(dブロック、pブロック、sブロック、fブロック含む)を原子レベルで組み立て、原子数とその組成比を精密に自在制御する方法論を開拓します。これを発展させて、高速多種合成システムを構築し、社会実装段階も視野に入れた大量合成の要素も組み込みます。無数に存在する元素の組み合わせからハイブリッドサブナノ粒子を高速調製することで、特異機能を持つサブナノ粒子(超原子など)の探索をおこないます。

(3)サブナノ構造グル−プ
 本グループは、未だ体系化されていないサブナノ粒子の構造と電子状態の計測法確立とその解明を目的とします。原子分解能電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡、放射光を用いた構造解析、各種質量分析と分光計測あるいは理論計算などを複合することで、静的な構造と組成に加えて、in-situやin-operando条件下における解析を可能にする新しい方法論を開拓します。これらを活用し、基礎物理化学パラメーター(吸収発光波長、吸着エネルギー、酸化還元電位、配位数など)を各粒子組成に対して整理することで、サブナノ粒子構造と機能相関に係る基礎学理を追及します。

(4)サブナノ機能グループ
 本グループは、精密金属サブナノ粒子、あるいは(2)サブナノ創製グループが作製した新規ハイブリッドサブナノ粒子の化学・光学・電磁特性等をより詳細に検討・解明することで、革新的な次世代機能物質の開拓を目的とします。特に、@環境触媒機能、A光電磁機能の開拓に着目して研究を進めます。


 また、これらの研究グループとの連携を基に、プロジェクトマネ−ジャ−が中心となり、サブナノ粒子合成技術の産業界への移転を目指した準備を行います。また、企業からフィードバックされる実用化に向けた具体的な課題や要望の提案を踏まえ、各グループと連携しつつ社会実装に向けた合成手法の改善・高度化を目指します。