柳田生体運動子プロジェクト

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総括責任者 柳田 敏雄
(大阪大学 基礎工学部/医学部 教授)
研究期間:1992年10月~1997年9月

 

筋肉など生体運動を担う生体分子は熱ノイズレベルの小さなエネルギーで機能しています。これは熱エネルギーの数百倍のエネルギーをつぎ込んで正確かつ高速に作動させるコンピュータなどの人工機械素子とは対照的です。そこで生体分子1個の動作を直接高分解能で測定する技術を開発し、その生体分子の特性の解明を目指してきました。
その結果、生体分子1個が滑り運動したり、化学反応をしたり、機能している様子を直接可視化することに成功しました。また生体分子1個を生きたまま捕まえ操作することも出来るようになりました。そして個々の分子を見ると生体分子モーターはエネルギーの入力に対して決まった力学応答をするのではなく、状況に応じて多様な応答をすることが分かりました。
このようにして人工機械にはない生物分子機械のアルゴリズムが明らかになってきました。またこの間開発してきた1分子計測技術は新しい生物学を創ってゆくブレークスルーになるものと期待されます。

成果

1分子の化学・力学カップリングの直接証明

1分子レベルで ATP 加水分解反応と力学反応を同時に計測しその間のカップリングを直接観察した。その結果、エネルギーを使う力学反応は必ずしも ATP 化学反応に 1:1 に対応しているわけではないことが示された。

1蛍光分子直視技術の開発

水溶液中の蛍光色素1分子を直接観察することに成功、1分子の化学反応や、生物分子モーターであるキネシン1分子の滑べり運動を実時間で直接イメージングすることが出来た。

1分子力学過程の計測

キネシンやミオシン1分子の変位や発生する力、力ゆらぎをナノメートル、ピコニュートンの精度で測定した。さらに光化学、遺伝子工学の技術を組み合わせ生物分子モーターの運動の様子が明らかにされた。

DNA結合タンパク質の機能する現場の直視

DNA上で1分子のRNAポリメラーゼがプロモーター部位を探し特異的に結合する様子を実時間観察することによりイメージングできた。

分子間力顕微鏡の開発

サブピコニュートンの分子間相互作用を直接イメージングするために分子間力顕微鏡の開発を行った。これを使って疎水相互作用を測定したところ100ナノメートルを越す長距離力であることが分かった。

1分子スペクトロスコピーとタンパク質の多形性

1分子分光や偏光を使って個々のタンパク質分子の形態や状態を見る技術を開発した。その結果、タンパク質の形態は多形性があり、1つの分子を見ていてもダイナミックにその状態間を変化していることが示された。

 

fig1

▲1分子計測を用いた蛋白質モーターの動作原理の解明

fig2

▲1分子化学反応と力学反応の同時計測

fig3

▲Determination of conformational state for single protein molecules

fig4

▲Detection of inter-molecular force and chemical reaction in a single molecular level

研究成果

プログラム

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