今井量子計算機構プロジェクト

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総括責任者 今井 浩
(東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授)
研究期間:2000年10月~2005年9月

 

本ERATOプロジェクトは2000年に「量子計算機構」という名のもとに、量子計算・量子情報処理への期待と新分野に挑戦する人が終結し、この将来をささえる新情報技術基盤の研究・技術開発を遂行することを目指して発足しました。その結果、量子計算・量子情報処理の分野で多くの重要な成果を挙げることに成功しました。

たとえば、従来のコンピュータでは不可能であった、確率1でリーダーの選出を行う問題について、それを可能にする量子計算を用いたアルゴリズムの性能の評価を行いました。また、量子計算機は量子回路の組み合わせからなるものですが、その回路図の設計指針を与える研究を行ないました。そしてどのような問題で量子計算機が従来の計算機の性能を上回るかについて研究しました。

また、量子計算機が実現した場合、現在の暗号システムが解読可能となることが知られています。そのような状況でも安全となる量子暗号に注目し、その150kmの伝送実験を行ないました。理論面では量子暗号においてノイズに紛れた盗聴を不可能にするための符号化法について研究しました。

さらに、これらの量子効果の源泉である量子エンタングルメントの定量化についても研究し、このテーマと量子状態を用いた通信との関連を明確にしました。同時に、生成されたエンタングルメント状態の精度を検証する方法について研究し、その最適化にも成功しました。

成果

量子アルゴリズム

量子計算が質問計算量や通信計算量など様々な尺度において古典計算を凌駕する可能性を探求するため、オラクル同定問題やリーダ選挙問題を始めとする幾つかの重要な問題に対する新しい量子アルゴリズムの開発を行った。

量子アルゴリズム開発への基本ツール

量子アルゴリズムを開発する上で重要な基本ツールとなりうる量子回路設計や量子ウォークの解析などの研究を行った。

量子計算理論の暗号への応用

量子計算が古典計算より高速にできることの可能性とその限界を計算量的に解析し、量子ゼロ知識証明や 量子公開鍵暗号を始めとする計算量的暗号への応用の研究を行った。

量子計算の計算論的解析

量子計算の特性を明らかにするため、量子オートマトンなどの簡素な量子計算モデルにおいてどのような問題が解けるのかに関する計算論的側面からの研究を行った。

量子鍵配送

従来の量子鍵配送の研究で量子鍵配送が理論的に可能となる ことが分かっていたが、現実のノイズのある量子通信路を用いた場合での、定量的な議論は不十分であり、実現のためにはさらなる研究が必要であった。 我々は、従来の性能を向上するための研究を行なった。

量子エンタングルメント

量子プロトコルの要であるエンタングルメントについては、その性質を究めるべく、複数の研究を行なった。

量子系での統計的推測

量子系では情報獲得のためには、測定が不可欠である。 しかし、測定を行なうと状態破壊を伴うため、その選択には、慎重を要する。 我々は、この問題を解決すべく、測定過程の最適化まで含めて、情報抽出過程を最適化する研究を行なった。

量子情報処理の物理的実装

我々は量子情報処理を物理的に実装のアイデアとして、幾何学的位相や線形光学素子を用いた手法を提案した。

量子暗号鍵配布実験

量子暗号鍵配布(配送)を行うためのキーデバイスである通信波長帯の光子検出器を開発した。この光子検出器を用いて光ファイバ長100-150kmの長 距離量子暗号伝送を行った。また、短距離での実用性の高い量子暗号鍵配布装置も同時に開発し、商用架空ファイバでのフィールドテストを行った。

非古典光子の生成

エンタングルした2光子状態は量子情報処理実現のための要となるものである。まず、エンタングル光子対の評価方法を確立し、エンタングルド光子対の生成 について研究した。開発した技術を使って、反正規順序による光子検出、エンタングルメントの検定、デコヒーレンスフリーサブスペースを用いた量子暗号鍵配 布の原理実証実験などを行った。

量子計算にむけて

量子計算に向けて、測定を伴う量子フーリエ変換回路を光学素子で構成した。また、制御ゲート、量子メモリには物質系の量子ビットを用い、光子による伝送 や1量子ビットユニタリ変換と組み合わせるハイブリッド型の量子計算を考え、光子とのインターフェースにおけるフォノン緩和の影響の理論解析、光との結合 を制御するための微小共振器の設計、単一の半導体量子ドットの光物性といった基礎的な研究を行った。

 

研究成果

評価・追跡調査

プログラム

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