橋本相分離構造プロジェクト

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総括責任者 橋本 竹治
(京都大学 大学院工学研究科 教授)
研究期間:1993年10月~1998年9月

分子が自然の仕組みに従い秩序構造を形成する過程(自己秩序化過程・相形成過程)に、何らかの人為を加えることにより新しい機能をもつ非平衡構造の構築を研究のねらいとしました。この為に「大きな構造がゆっくり変化する」高分子系やコロイド系をモデルに選び、それらの相転移に伴う自己秩序化過程を探究し、その階層性を解明しました。具体的には種々の散乱法によるフーリエ空間での構造解析法と種々の顕微鏡法による実空間解析法を併用し、数nm~数μmに至る広い空間スケールで実空間・実場解析すると共に、測定法の新たな開発も行いました。得られた成果を一般的な非線形時間発展方程式に基づいたシミュレーションにより理論解析し、その数理物理学的意義も明らかにしました。これらの研究により、高分子混合系、ブロック共重合体、ゲル、コロイド系の非平衡構造の制御法とその新材料創製への道が拓けたものと期待します。

成果

相分離構造の3次元画像構築と界面曲率分布の評価

分子量、粘度の等しい高分子二成分系をモデルにして、等体積に二相相分離する系の相分離構造が一般的にスポンジ状構造であることを初めて発見するとともに、その物理学的根拠、普遍性、微分幾何学的特徴を初めて明らかにした。

化学架橋ゲルの階層構造の発見とその原因の解明

内部構造を、共焦点レーザー走査顕微鏡、光散乱、中性子超小角・小角散乱、放射光Ⅹ線小角散乱により系統的に観察・解析して、1nm~数10μmに至る不均一構造の存在を初めて発見し、その原因を解明した。これらの結果は、従来支配的であった一様網目モデルと、それに基づいた物性理論の他に、不均一網目モデルに基づいた新しい物性理論の必要性を換起した。

高分子ブロック共重合体の相転移と秩序化過程の解明

実験・計算機シミュレーションにより、相転移に及ぼす熱擾乱の効果を解明し、熱平衡での秩序・無秩序相の共存の発見、熱擾乱に誘起された無秩序構造の解明と可視化、特異な核形成成長機構を発見した。また合成高分子一本の分子鎖そのものの直接観測に初めて成功した。

ナノ・プロセッシング、ナノ・ハイブリッドの開発

高分子ブロック共重合体の3次元ナノ構造をベースにしたナノ加工--一方の相の選択分解によるナノ多孔体、ナノ粒子の創製及び界面・温度勾配を利用したナノ構造の配向の極限制御--及びナノハイブリッド--ー方の相又は両相の界面へナノ金属微粒子の配列制御、ナノ多孔体表面の無電解メッキ--の開発及び先端高機能材料への展開を行った。

イオン性コロイド水分散系の相転移の解明

ラテックス・シリカ粒子系を、相転移の視点から究明し、粒子濃度-荷電密度-塩濃度 座標空間中で、無秩序、無秩序・秩序共存、秩序、気-液相分離領域を発見すると共に、無秩序相から共存相への特異な秩序化過程を発見し、系に働くネットな引力の存在を提唱した。

複合相分離を利用したメゾスケールの相構造制御と原理の究明

2種のブロック共重合体A-B、A-C混合系では、ミクロ相転移とマクロ相転移が複合して起こり得る。本系で、高分子B、C間の分子間相互作用エネルギーレベルを化学的、物理的に制御することにより複合相転移プロセスを制御し、極めて多種多様なメゾスケールの相分離構造が得られることを発見し、その原理を究明した。

fig1

▲背景:高分子ブロック共重合体のナノ・パターン(周期の異なる2つのラメラ相(左上半分と右下半分)とこれらが形成する巨視的界面)。

fig2

▲高分子ブロック共重合体が形成する共連続ナノ・パターンの透過電子顕微鏡写真(起薄切片)。

研究成果

評価・追跡調査

 

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