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横山情報分子プロジェクト
総括責任者 横山 茂之
(東京大学大学院理学系研究科教授、理化学研究所主任研究員/ゲノム科学総合研究センタープロジェクトディレクター)
研究期間 1996年10月〜2001年9月
 
研究成果の概要
 生物の複雑で多様な情報を処理する高度な情報処理システムとしての面に着目し、遺伝情報分子および細胞情報分子の改変により、新しい人工情報処理システムを構築することを目的として研究を行いました。核酸合成酵素によって選択的に認識される非天然型の新規核酸塩基対(x-y)を創製した。xを鋳型DNAに組み込み転写反応を行うと、RNAのxに相補的な位置に選択的にyが取り込まれた。x-y塩基対を含む新たなコドン-アンチコドンにより遺伝暗号を拡張し、mRNAの特定したコドンに対応させて非天然型アミノ酸をタンパク質に導入できた。非天然型アミノ酸(3-ヨードチロシン)を選択的にサプレッサーtRNAに結合させる酵素変異体を創製し、無細胞系および培養細胞系において、タンパク質中の任意の位置に3-ヨードチロシンを取り込ませることができた。リン酸化3-ヨードチロシン部位に選択的に結合する結合タンパク質SH2ドメイン変異体を創製した。本研究により、生物における情報分子の作用機構の解明に貢献することが出来、遺伝情報分子および細胞情報分子を統合した生体内での人工情報処理システム構築への基盤が出来ました。今後全く新しいプロテインエンジニアリングの開拓が期待出来ます。

成果
非天然型核酸塩基対創製の実現
 核酸合成酵素によって選択的に認識される新規塩基対(x-y)の創製に成功した。嵩高い置換基を導入したxを鋳型DNAに組み込みRNA合成酵素を用いて転写反応を行うと、得られたRNAにはxに相補的な位置のみに選択的にyが取り込まれた。

試験管内転写-翻訳システムによる非天然型アミノ酸のタンパク質中への導入
 x-y塩基対を用いて遺伝暗号を拡張し、新たなコドン-アンチコドンを用いて非天然型アミノ酸をタンパク質中に導入することに成功した。Ras遺伝子の32番目のコドンに新たなyAGコドンを導入し、3-クロロチロシンを結合したtRNA(CUx)を加えた試験管内の転写-翻訳系でRasタンパク質中に3-クロロチロシンが選択的に取り込まれた。

非天然型アミノ酸を特異的に取り込むアミノアシルtRNA合成酵素の創製
 天然型アミノ酸(チロシン)よりも非天然型アミノ酸(3-ヨードチロシン)を選択的にサプレッサーtRNAに結合する大腸菌由来のtRNA合成酵素の変異体の創製に成功した。そして、これを用いた試験管内タンパク質合成系でタンパク質中の任意の位置にヨードチロシンを取り込ませることができた。

種々の機能性RNA分子の創製
 In vitroセレクション法を用いて特定の機能を有する種々の新規RNA分子を創製した。そして種々の毒素タンパク質の活性を阻害するRNAやプロトオンコジーンの一つであるRaf-1に結合してRasとの相互作用を阻害するRNAが得られた。

培養細胞における人工遺伝暗号系の構築(培養細胞中での非天然型アミノ酸のタンパク質中への選択的取り込み)
 原核細胞由来のtRNAやアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)が真核細胞由来のtRNAやaaRSと交差しないことを利用して、非天然型アミノ酸を結合しやすい大腸菌由来のチロシルtRNAとTyrRSを真核細胞中で発現させることにより、タンパク質の任意の位置に非天然型アミノ酸を取り込ませることができた。

リン酸化部位に非天然アミノ酸を用いた情報伝達経路の確立
 非天然アミノ酸を用いた新規細胞内情報伝達経路を構築するために、天然のリン酸化チロシン結合タンパクでは認識されない非天然アミノ酸として、3-ヨードチロシンの有用性を確認した。また、上流からのシグナルによって、タンパク質中の3-ヨードチロシンがリン酸化されたときに、それを認識して結合するリン酸化チロシン結合タンパクの変異体作成に成功した。

graph1
▲遺伝情報および細胞情報伝達の概念図

graph2
▲「tRNAとアミノアシルtRNA合成酵素との複合体モデル」

graph3
▲新規核酸塩基対

 
研究成果
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