ERATO 巨視的量子機械プロジェクト Macroscopic Quantum Machines

PROJECT OVERVIEW

概要

理論量子情報科学

量子のルールと定石

最近、コンピュータプログラムが碁や将棋などのプロの棋士に勝つレベルにまで到達し、話題になっています。オセロ、碁、将棋といったゲームは簡単なルールにもかかわらず、その戦術や定石を極めることは非常に難しいという側面があります。我々が住む世界も、量子力学というシンプルなルールから構成されていますが、非常に多様で複雑な様相をみせてくれています。量子情報科学は、このような量子の世界の定石を情報や計算といった情報科学的視点から極める分野です。

図:量子のルールと定石

量子の世界の箱庭=量子コンピュータ

量子の世界を知るためには、実際に量子力学で動く世界をシミュレートしてみるのがよいでしょう。しかし、量子力学の世界は、粒子数が増えるにつれて、指数的に複雑になり、我々が使っているコンピュータではシミュレートすることができません。このため、量子力学のルールで動作する量子コンピュータが提案されました。

量子の世界をハックする

量子情報科学分野の究極的目標は、量子力学のルールに従って動作する機械である量子コンピュータの仕組みや挙動を理解し、また、それを実現することです。また、量子の応用といった工学的側面だけでなく、量子力学のルールに従って動作するすべてのものと互換性がある万能量子コンピュータの理解から、我々の自然界への理解が深まることも期待されています。

量子を守る=量子誤り訂正

量子コンピュータでは、従来の0と1のデジタル情報と異なり、2つの量子状態の連続的な(アナログな)重ね合わせ状態を利用します。この重ね合わせ状態は、雑音によってすぐに壊れてしまうという弱点があります。この問題を克服するために量子誤り訂正が提案され、万能なデジタル量子コンピュータが、実在するデバイスを用いて構築できることが示されました。このため、量子誤り訂正と誤り耐性量子コンピュータの研究が理論・実験ともに盛んに行われています。本研究チームでは、頑丈な量子コンピュータを実現するための新たな理論モデルを提案し、実験チームと協力することによってその実現を目指します。

図:量子を守る=量子誤り訂正

量子の世界をプログラムする

量子誤り訂正を取り扱う理論体系は、複雑な量子多体系をシンプルに取り扱うための処方箋を与えてくれるため、トポロジカル秩序などの物性物理学、ブラックホールや量子重力といった高エネルギー物理学の研究の舞台としても利用されはじめています。近未来的に実現される量子デバイスを用いて他の科学技術分野の地平を切り拓くことも目指します。