ミッション

GPCR構造解析技術の確立 ヒトゲノム解析のおかげで病気に関わる蛋白質がこれまでに多数特定されてきました。疾病関連蛋白質の立体構造がわかると、効率良く薬の開発が行えるばかりか、狙った蛋白質にだけ作用する副作用を抑えた薬の設計も可能になります。市販医薬品の実に5割以上が細胞膜に存在する蛋白質、特にG蛋白質共役型受容体(又はGPCR 以下「膜受容体」)をターゲットにしています。
当プロジェクトの開始時点では、構造が解析されたヒト膜受容体はまだ一つもありませんでした。これは主として、

  • 大量発現・精製が困難
  • 疎水性のため結晶化が難しい
  • そのため良好なX線回折データを得られない
といった膜蛋白質特有の性質に起因する技術課題によるものです。
2007年にヒトGPCRとしては始めて、β2 adrenergic receptorの結晶構造がScripps研究所のStevens博士、Stanford大学のKobilka教授のグループにより解析され、ヒトGPCRの結晶構造解析研究に弾みがつきました。
当プロジェクトは科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業(ERATO)の一環として、研究総括が蓄積した非ヒト由来膜蛋白質構造解析のノウハウを基盤に、

  • 機能を保持した膜受容体の大量発現系(酵母)や結晶化を妨げる糖鎖の除去法等の開発
  • 膜受容体に結合して親水性・結晶性を向上させる蛋白質の開発
  • 極微量サンプル(ナノリットル)結晶化技術と結晶自動マウントロボットを組み合わせた、結晶化最適条件の高速自動スクリーニングシステムの実用化
  • 新世代放射光を利用した超低ノイズデータ計測系の構築
を通じてヒト膜受容体構造解析を系統的に行う技術の確立を目指します。
プロジェクトの成果は創薬だけにとどまらず、細胞内の情報伝達経路の解明などライフサイエンス全般への広汎な応用が見込まれます。
当プロジェクトの岩田 想 研究総括は日英両国にまたがって研究活動を行っています。英国のインペリアル カレッジ ロンドン 生命科学科 を研究本拠地とし、日本では京都大学大学院医科研究科で研究を行っています。
当プロジェクトは、英国の放射光施設 ダイヤモンドと日本の京都大学大学院 医科研究科の二カ所に研究サイトを設けています。英国では放射光施設 ダイヤモンド、インペリアル カレッジ ロンドンのMPCグループや構造生物学センターの、日本では京都大学大学院 医科研究科分子細胞情報学研究室ならびに理化学研究所 横浜研究所 生命分子システム基盤研究領域の協力を受けつつ研究を進める予定です。