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横山液晶微界面プロジェクト事後評価報告書
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総括責任者 横山 浩【産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門長】
研究体制: 理論・シミュレーショングループ
微界面物性研究グループ
評価委員 内田 龍男 【東北大学大学院工学研究科電信工学専攻 教授】
高津 晴義 【株式会社大日本インキ化学工業 技術本部長】
竹添 秀男 【東京工業大学大学院理工学研究科 教授】
Robert B.Meyer 【Professor,Brandeis University】
Martin Schadt 【PhD,MS High-Tech Consulting】

 


評価:Excellent

1. 事後評価の概要
 液晶は流動性を有し、かつ長距離の配向秩序を持つ。液晶相では、さまざまな相互作用によって多くの相や構造が実現する。これまでの液晶研究では、均一系における分子間の相互作用や均一界面と液晶分子との相互作用を考慮することが一般的であった。様々な不均一な相互作用を導入することによるナノメートル領域での階層構造形成は、液晶の多様性を理解する上で科学的、工学的な観点からも極めて重要であるが、その要因である液晶ナノ構造のほとんどの部分が未開拓のままに残されている。
  本プロジェクトは、このナノメートル領域で液晶の階層構造性に焦点をあて、高次構造形成の本質に迫るとともに、ナノ構造の意識的な導入によって、新規な液晶状態を創成することを目標としてスタートした。プロジェクトが提唱した「ナノ構造液晶」の概念は、液晶研究に新たな方向性を与え、液晶研究とナノテクノロジーの合流に基づく新しい液晶科学の創出のみならず、次世代情報エレクトロニクスを支える新規デバイスの創出も期待される。
  本プロジェクトは、液晶の持つ強い自己組織性に立脚しつつも、広い意味での微視的な界面制御に主軸をおき、人工的な微小構造体と液晶分子の複合構造体(液晶微界面構造)を研究推進のための独自の基盤と位置付け、液晶の機能発現の仕組みとその人為的制御の方策の探求を行った。すなわち、液晶分子が局在する表面(macroscopic)、相分離したドメイン境界(mesoscopic)、分子間の相互作用(microscopic)などの界面の利用である。その結果、本プロジェクトではこのような領域のさまざまな配向のフラストレーションを巧みな方法で取り入れて新しい構造形成に成功している。
  一般に大きなプロジェクトでは理論と実験、物理と化学をうまく融合し、基礎科学的にも応用にも資する成果を挙げることが求められる。この意味で、人的バランス、実際の共同研究の効率等申し分ない。ナノスケール、マイクロスケールの秩序形成を目指すという、タイムリーで興味深いテーマを、トップダウン、ボトムアップの両面からアタックするという方法論が成功の要因であろう。
  長い液晶研究の歴史の中で、これほど短期間に、これだけの限られた人数で、これほどの成果をあげた例をわれわれ評価委員は知らない。これはプロジェクト参加研究者の能力ばかりではなく、プロジェクトリーダーのリーダーシップの賜物であろう。
2. 研究の実施状況
 
2.1 理論・シュミレーショングループ
 すべての評価委員が高い評価(excellent)を与えた。グループの目標は実験グループと連携をとり、プロジェクトの目的を遂行することであった。この目的は十分に達成された。すなわち、以下に列記する興味深い実験に対し適切な計算手法を選び、シミュレーションで見事に説明して見せた。少ない研究者でよくここまで成果が上げられたと賞賛に値する。ともすれば、理論のための理論となり、実験との対応が十分でない場合が多いが、本プロジェクトでは実験の結果から取り組むべきテーマを適切に選択し、実験を忠実に再現するために、分子動力学、連続体理論、原子モデリングを総合的に扱い、理論を構築し、定量的あるいは半定量的に実験を解釈した。
 以下にいくつかのトピックスについて個々に評価者の意見を述べる。
 (1) ネマチック中のコロイド粒子周りの配向場の解析では、非常に異なるスケールの秩序を解析する計算手法の開発を行った。
 (2) 水面上の液晶単分子膜の光誘起波のモデルの理論構築とシミュレーションでは、何年も前に実験的に確認されていた現象を完全に説明することに成功した。
 (3) perfluoroalkyl末端鎖を持つ液晶分子の作るキュービック相のシミュレーションでは、異方性流体系を扱うための理論を構築し、分子がキュービック格子を組む様子を見事に再現して見せた。
 
2.2 微界面物性研究グループ
 本グループはmacroscopic, mesoscopic, microscopicな視点でナノ界面を取り扱う3つのグループからなる。グループは合成化学、実験物理学の有能な人材からなり、うまくバランスされている。3つのグループではさらにいくつかのテーマを分担している。成果に差はあるが、全体として評価をexcellentとすることに対して、評価者から異論はなかった。やや、各グループが独立しているきらいはあるが、ミクロからマクロにいたる界面との相互作用で液晶組織体を制御し、機能を創出しようとする全体の目的に合致するものであると評価できる。
 Macroscopicグループのサブテーマのひとつであるナノパターニングの技術はネマチック液晶の多重安定性配向を実現し、基礎科学として面白いばかりではなく、ディスプレイへの応用の可能性としても興味深いものである。AFMによるパターニングではなく、光配向技術など実用的な技術を使った、実用可能性の確認が望まれる。
 ラングミュアー単分子膜の光誘起ダイナミクスは理論グループによる解釈がなされたこともあり、高く評価される。バイオ系への展開を視野に入れた更なる研究が望まれる。
 Mesoscopicグループは自己組織的にナノスケールの構造体を構築するためのいくつかの方法を例示した。液晶-コロイド系を光学的に操作する方法を提示し、コロイド粒子間の力の測定にも成功した。
 Microscopicグループは分子レベルの相互作用にさかのぼって新しい構造形成を試みている。キラリティによる構造形成では、主にtwin分子を用いた液晶系が多くの成果を引き出している。新規な構造形成の基本となっているのは異なった配向間のフラストレーション、競合である。TGB相、キュービック相、ブルー相などのさまざまなキラリティやフラストレーションによって形成される相の出現を確認している。中でもtwin分子系を用いた混合液晶における等方的スメクチックブルー相はフォトニック結晶としての応用が期待される。この系では各サブグループ間の協力も見られ、興味深い成果が得られている。
 一部のグループでは評価委員から評価不可能とコメントされている。例えば、BLT LC マイクロエマルジョングループは以前からこのテーマに取り組んでいるが、外国の評価委員からは”Since no results are published yet, the project is not rated.”と評価されている。Orderly publicationが強く望まれる。
3. 研究成果の意義と将来性

3.1 理論・シュミレーショングループ
 前述したようにこのグループはプロジェクトチームで得た多くの興味深い実験に対して、理論的な骨組みを与えるという非常に優れた成果をあげた。このグループの成果で特筆すべきことは、これら具体的な成果にとどまらず、他の系に適用可能な方法論を確立したことである。今後、多くの距離スケールの構造体、異方性物質への展開が可能であろう。また、さらに詳細な実験環境を取り込んだ理論、シミュレーションの展開が、現在の計算機の能力の範囲でどこまでできるかを含め、検討される必要がある。このような展開は今後の応用展開にも資するところが大きいと思われる。さらに、このような計算手法は膜透過、ドラッグデリバリーなどの生物物理分野への応用も興味深い。このグループの今後の活躍にも期待したい。

3.2 微界面物性研究グループ
 それぞれのサブグループはオリジナリティのある成果を出し、さまざまな観点からインパクトも大きい。microscopicグループはさまざまな分子間の相互作用が多くの秩序相を形成する可能性を有することを示した。このことは更なる新規な分子系の探索に多くの指針を与えた。
 Mesoscopic グループのレーザマニュピュレーションは単にこの成果にとどまらず、多くの他の系への適用の可能性を示唆するものである。また、コロイド系に対する光化学的手法の応用は液晶ディスプレイへの応用の観点からも興味深い。
 Macroscopicグループでは特にナノパターニングによるネマチック配向の多重安定化が応用の可能性を有している。しかし、基板のパターニングにAFMを用いていたのでは実用的ではない。光配向技術の適用可能性について早急に確認する必要がある。また、面内電場印加法ではない垂直電場印加の可能性も探る必要があろう。
 総じていうと、液晶と界面との相互作用の新しい理解を深め、それを制御する方法を提示するといった、サイエンスとしての成果には余りあるものがある。一方で、具体的な応用への距離はかなりあるが、将来への幅広い応用の可能性が示されており、ERATOの趣旨には十分沿うものと考えられる。
 

This page updated on January 25, 2005

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