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細野透明電子活性プロジェクト事後評価報告書
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総括責任者 細野 秀雄【東京工業大学応用セラミックス研究所 教授】
研究体制: 電子伝導性制御グループ
欠陥電子活性グループ
機能設計グループ
評価委員 一ノ瀬 昇 【早稲田大学理工学部物質開発工学科 教授】
横尾 俊信 【京都大学科学研究所材料機能化学研究系 教授】
真田 和夫 【株式会社フジクラ材料技術研究所 次長】
David L.Griscom 【PhD, University of Arizona】
David S.Ginley 【PhD, National Renewable Energy Lab.】

 


評価:Excellent

1. 事後評価の概要
 このプロジェクトは次のような基本構想に基づいて計画され1997年にスタートした。大きなバンドギャップを有する酸化物をベースとする結晶とアモルファスを対象物質とし、バンド構造と点欠陥の電子状態や光反応性を明らかにしつつ、それらの制御と活用により、光学的透明性を生かした新しい光・電子および化学機能を探索するとともに、透明酸化物のもつポテンシャルを引き出すための手法の開拓を行おうとすることにある。すなわち、透明酸化物という古くから知られている物質にstate-of-the-art な手法を適用することで、新しい機能材料としての展開を図ろうというものである。
 具体的な主要研究課題として、(1)透明酸化物半導体の研究〜新しいフロンティアとデバイス、(2)ナノポーラス結晶(12CaO・7Al2O3)の欠陥エンジニアリングによる光・電子化学機能発現、(3)真空・深紫外レーザ用シリカガラスの研究〜レーザパルスとの相互作用の解明と応用展開、(4)フェトム秒レーザシングルパルス干渉露光法と透明硬質材料のマイクロ・ナノ加工、などが挙げられている。これらは相互の連携のもとに系統的に新しい科学技術の展開を目指したもので、魅力ある課題といえる。
 この構想の具体化のために、以下の3つの研究グループが設置された。
 (1)電子導電性制御グループ
 (2)欠陥電子活性グループ
 (3)機能設計グループ
 今回のプロジェクトは物質の本質を見抜く鋭い洞察力と並はずれた理解力を持つ細野プロジェクトリーダの下で、透明電気伝導性酸化物TCOをはじめ数多くの未踏の課題に取り組んだ極めてチャレンジングな研究プロジェクトであった。当該プロジェクトにおける研究のモチベーションは非常に高く、これまで得られた成果は質・量共に並はずれている。新しい材料科学のフロンティアを拓く可能性のある成果が一つ二つではなく、プロジェクトの各グループに少なくとも一つはそのような成果が見られる。
 良いテーマが選定され、才能のある研究者が集まっており、また各グループリーダの素晴らしい素質、そして全てをまとめるプロジェクトリーダの先見性、指導性どれをとっても申し分がない。評価委員会は満場一致でプロジェクト全体をAA(秀)と評価した。
2. 研究の実施状況
 
2.1 透明酸化物半導
 透明酸化物で導電性を示す物質といえば、In2O3-SnO2系(ITO)、ZnO系、SnO2系などが知られており、透明酸化物導電体(Transparent Conductive Oxide, TCO)と称されている。これらの物質は各種ディスプレイの電極材料として多用されているが、半導体としての応用は皆無に近い。これまでのTCOの導電性はn型に限定されており、p型物質が見出されていなかったため、多様な半導体機能の原点であるp-n接合が実現していなかったことが主因である。
  本プロジェクトの根源は1977年に川副・細野グループが、p型透明酸化物半導体(Transparent Oxide Semiconductor, TOS)としてCuAlO2を見出したことに端を発している。それらの研究成果はNature誌に報告されている。また、同グループはフェルミレベルの制御が可能なアモルファスの透明酸化物も見出している。細野透明電子活性プロジェクト(Hosono Transparent Electro-Active Materials Project)はこれらの研究成果をベースに1999年スタートした。透明酸化物半導体に関するこの5年間の成果を要約すれば次のようになる。
  超低抵抗・超平坦ITO、深紫外透過β-Ga2O3、アモルファスで高い移動度を示す2CdO・GeO2やInGaO3(ZnO)1、p型アモルファスTOS(ZnRh2O4)、反応型固相エピタキシャル法(R-SPE法)の開発とInGaO3(ZnO)m(m=1〜100)ホモロガス超格子薄膜の作製、独自の設計指針に基づく各種p型TOS(CuMO2(M=Al, Ga, In), SrCu2O2, LaCuOS, ZnRh2O4) の開発、p/n両性を示すCuInO2の発見およびそれらを用いたホモ接合TOSダイオードの実現、p-SrCuO2/n-ZnOヘテロ接合を用いた近紫外LEDの実現、などである。
  これらの成果の中には世界初のものも含まれており素晴らしい成果である。成果は89件に及ぶ査読付の論文や国際会議プロシーディングとして発表されておりハイレベルの論文として高い評価を受けている。
 
2.2 ナノポーラス結晶C12A7
 点欠陥を活用して、ありふれた物質で新機能を実現しようという目論見で、本プロジェクトでは12CaO・7Al2O3(C12A7)というアルミナセメントの構成成分として知られている物質が取り上げられている。この物質は直径0.44 nmのケージが面を共有することで、3次元に最密充填された結集構造を有し、1/6のケージにはO2-イオン(自由濃度イオン)が緩く包接されている。この自由イオンを、通常では不安定な他のマイナスイオンで置換することで種々の機能を実現している。
  まず、最強の酸化力を有するが活性が高く不安定な「幻の科学種O-イオン」を2×1021p-3も安定に包接する試料が合成された。この試料は予想通り、高温で安定な白金さえ酸化できる強い酸化力を有していた。また、この物質に高温で電界を印加するとO-イオンの単色高密度(数μAp-2)ビームを生成できることを見出している。
  一方、電子は究極のアニオンと見なすことができる。自由酸素イオンを全て電子で置換することに成功した。ケージ中に包接された電子濃度は2×1020p-3、伝導度は100Sp-1に及ぶ。電子がアニオンとして働くイオン結合はエレクトライドとして知られているが、1983年に初めて合成されて以来、これまで低温、かつ不活性ガス雰囲気下のみで安定なため、材料としての応用はもとより物性研究も遅れていた。ここで合成した[Ca12Al14O32](e)4は空気中・室温で安定な初めてのエレクトライドとなった。また、この物質の仕事関数が0.6eVと極めて小さいことを利用して冷電子放出源として用い電界放射型発光デバイスが試作された。
  これらの研究成果はセレンディプティーの典型とも言えるものでありオリジナリティーが高く、発展性に富み、得られた成果は極めてインパクトは高い。
 
2.3 真空紫外光学材料
 本研究課題は主に合成シリカを対象とし、そのF2(波長157nm)やArF(193nm)エキシマレーザとの相互作用の解明という基礎的視点から取組み、その成果をフィードバックしつつ、これまで実現されなかったArFレーザのパワー伝送に耐えられるファイバーの開発を目指している。
  シリカガラスは広い波長域の光に対して透明でしかも大型のものが得られ、加工し易いことから光学材料として頗る有用である。特に、次世代リソグラフィーの波長である157nm(F2レーザー)に対して透明なシリカガラスを得ることは工業的にも重要である。シリカガラスの吸収端を決定している要因を明らかにし、その解決法を見いだした。次いで、F2レーザを照射した場合にシリカガラス中で起こりうる反応を明らかにしている。また、現在重要となっている水素ローディングしたシリカガラスについても調べている。得られた結果を踏まえて、DUV光を伝送するシリカガラス製ファイバーを開発した。
  上記の結果は将来のF2レーザステッパの実用化に向けて大きな影響を与えるとともに現用のArFレーザステッパにも大きな効果をもたらすものと思われる。
 
2.4 短パルスレーザの試作とナノ加工
 本研究課題ではサファイヤやシリカなどの透明で硬質な物質の表面および内部に精密なナノ加工が可能な方法の開拓を行ない、フォトンによる透明物質中への3次元光集積回路の形成を狙っている。
  フェムト秒パルスレーザはエネルギー密度が数TW/cm2と超弩級に大きいことに加えて、コヒーレント長は〜30μmと短いものの可干渉性に極めて優れているため、これを利用すれば光吸収の小さな透明酸化物の表面および内部にナノ加工による精密構造を形成できるのではないかとの予測の下に、新しいレーザ加工法の開拓に取組んだ。
  真空紫外領域でのフロンティア的な研究をするには深紫外・真空紫外領域で動作する信頼性の高い固体レーザが必要となるが、Ce3+ : LiCAF6結晶を用いて波長290nm、パルス幅115fs、尖塔値30GWの深紫外チャープパルス増幅システムmJ級フェトム秒レーザを自ら開発した。
  フェトム秒レーザパルスの干渉を使った透明材料への周期構造形成手法はフェトム秒レーザ光のもつ高エネルギー密度性、超短時間性、および高可干渉性を最大限活用した新しい材料加工技術である。本方法は感光性の有無にかかわらずすべての材料に回析格子を記録できる。本手法によりユニークなデバイスが創製される可能性が大きい。
  本研究課題のメンバーにより精力的に推進された新分野の研究成果は過去5年間の間に発表された30件の査読付の論文やプロシーディグにより示されている。
3. 研究成果の意義と将来性
 本プロジェクトの研究はオリジナリティー、科学的成果および経済的に価値ある将来技術などの観点からみて顕著に秀れたものである。それらの背景を以下に要約する。

3.1 透明酸化物半導体
 透明伝導体膜として最も重要なITOの低抵抗化を追及し、超平坦なYSZ基板の利用、基板温度の高温化(900℃)、PLD法によるエピタキシャル成長技術により7.8x10-5Ωpとなっている。
  次いで、ITOよりも吸収端がブルーシフトした紫外透明領域の広いTOSの作製、結晶に匹敵する移動度を有し、pnホール符号異常を示さないアモルファスTOSの作製、およびp型アモルファスTOSの作製にも成功した。アモルファスTSOによるpn接合は界面不整合の問題が低減されるため、今後のデバイス化に有利である。
  また、当該グループは、“反応型固相エピタキシャル法”(R-SPE法)という新規な薄膜成長法を考案した。この方法は蒸気圧の高い構成成分を含む複合酸化物単結晶薄膜の作製に威力を発揮し、超格子構造を有する層状化合物、2種類のアニオンを含むオキシサルファイド単結晶薄膜の作製に成功している。この方法の導入により作製可能な化合物の種類も飛躍的に増えるに違いない。また、極めて良質な膜ができるとのことであるので、量子構造を組み込んだTOSデバイス作製に道を拓く可能性が高い。
  各種p型TOSの発見、さらにはp/n両性TOSの発見に関する成果も見事である。実際にp/n(ホモおよびヘテロ)接合を作製し、ダイオード特性、TOSでは世界初となる紫外発光を確認した。R-SPE法で作製したホモロガス超格子構造の薄膜を活性層として用いて透明な電界効果型トランジスター(TFET)を開発した。
  上記の各々の成果は画期的であり、透明トランジスタの実現に向けて大きな一歩を踏み出したと言えよう。

3.2 ナノポーラス結晶C12A7
 この研究課題は本当の意味でのオリジナルなものと言えよう。この研究は細野リーダーが名古屋工業大時代に行なったスパーオキサイド(O2-)イオンと光に感度をもつカルシウムアルミネートガラスの実験をベースにしている。以下この研究のオリジナルな点と科学技術的な観点からのインパクトについて述べる。
  12CaO・7Al2O3結晶(以後C12A7)が高温酸素中で熱処理することにより1020〜1021p-3という高濃度の酸素ラジカルO-、O2-を包接するアニオン包接酸化物になることを発見した。カチオン、中性分子を包接するホストは多くあるが、アニオンを包摂するホストは稀である。その上、Ptあるいはメタンを直接酸化するほどの極めて酸化力の強いO-酸素ラジカルを多量に包接するのである。
  酸素ラジカル発生メカニズムとして、O2-(ケージ内)+O2(外気)→ O-(ケージ内)+O2-(ケージ内)なる反応を提唱している。
  乾燥酸素雰囲気中で熱処理することにより99.6%の理論密度の高密度透光性C12A7焼結体の作製にも成功した。これはある種の光学材料となり得るし、ジルコニアに替わる酸素イオン伝導体として重要な材料になりうる。
  O-イオンの電場放出実験は誠に興味深い素晴らしい成果である。これまで用いられていたジルコニアに比べて1000倍以上の〜μAcm-2オーダーの高い効率を示すので、イオン源として充分なレベルである。これの応用は枚挙に暇がないであろう。
  ヒドリオイオン(H-)を包接するC12A7焼結体および単結晶が光誘起伝導性を示すという発見は典型金属酸化物が電子伝導性を示す初めての例であり、大発見といえる成果である。約320℃以上の加熱によりまた絶縁体に戻るという可逆的変化を示すのも面白い現象である。換言すれば、紫外線照射により着色して電子伝導性を示し、温度を上げるとまた無色透明の絶縁体になる全く新規な透明伝導体酸化物(TCO)が開発されたといえる。さらに、イオン化エネルギーが低いため、紫外照射をしなくとも電子伝導性を示す可能性があるNa-イオンを包接させることを試みた。その結果、ドープ後光照射をしなくとも、H-イオンとほぼ同様の結果を得た。
  さらにはC12A7単結晶を金属カルシウム片と共にガラス管中に封入して700℃で加熱することによりケージ中のフリー酸素イオンを引き出し、代わりに電子を包摂することに成功した。 置換がほとんど全て進行すると、 透明無色なC12A7結晶は黒色へと変化し、 100Sp-1という高い電気伝導度を示した。エレクトロライド(電子化物)の出現である。大気中、常温で安定なエレクトロライドということなので、これは画期的である。この物質の応用展開は極めて興味深い。
  C12A7はこれまで教科書では典型的な絶縁体として分類されていたが、軽金属酸化物が電子伝導体に変換できた初めての例となり、「常識を覆す発見」と紹介されており、オリジナリティーは頗る高い。

3.3 真空紫外光学材料
 シリカガラスの吸収端を決めているのはSi-O-Si結合角の小さな歪みの多い3員環構造(D2)および四員環構造(D1)であることを明らかにし、Fドープによりそれらの小規模な環構造のSi-O-Si結合を切断してSi-F結合を導入することにより吸収端を157nm→153nmへとブルーシフトさせることに成功した。これによりF2レーザーリソグラフィー用シリカガラスフォトマスクが実用化された。工業的にも重要な意味を持つ。
  F2レーザー光とシリカガラスの相互作用についてもいくつかの重要な結果を得ている。F2レーザーがSi-OH基の水素を直接励起可能なことを利用して選択的に非架橋酸素ホール中心(NBOHC、Si-O・)を生成させ、それが6.8eVに吸収を持つことを実験的かつ理論的に確認した。また、欠陥を余り含まずSiOHを多量に含有する高純度合成シリカガラスにF2レーザーを照射し、〜3700p-1にあるSiO-H結合の赤外振動が〜70p-1レッドシフトし、同時にSiOH基のVUV吸収帯がブルーシートすることを見いだした。これはF2レーザ照射により水素結合状態のSiOH基が生成したことを意味するが、300℃まで安定なうえ、緩和の活性化エネルギーも1.7eVと大きい。具体的な描像は明らかではないが、興味深い現象である。また、シリカガラス網目中に存在する酸素分子が、F2レーザ照射により酸素ラジカルに解離し、それらがさらに酸素分子と結合してオゾンを生成したり、ネットワーク中に取り込まれてperoxy linkage(POL)を生成することを明らかにした。
  水素ローディング技術はフォトリフラクティブ効果の増大と長寿命化のため重要である。水素ローディングしたシリカガラスとF2レーザとの相互作用を調べ、NBOHCやE’センターは減少するが、酸素不足欠陥が高効率で生成することを見いだし、ArFレーザには適しているが、F2レーザには不向きであるという結論を導いた。
  フッ素ドープシリカガラスをコアとしてそれよりもフッ素ドープ量の多いガラスをクラッドとして光ファイバーを作製し、さらに水素ローディングを施すと、ArFレーザ(197nm)を60%(1m長)透過することを確認した。劣化も無いとのことである。また、酸エッチングに優れ容易に先端を尖らすことが可能とのことであるので紫外近接場分光などをはじめとするこれまでの不可能であった深紫外分光法に道を拓く画期的な発明と思われる。
  上記のようにArFエキシマレーザのパワー伝送に耐えられる深紫外用光ファイバが開発されたことは素晴らしいが、材料的には今後新しいものが出てくることを望む声もある。

3.4 短パルスレーザの試作とナノ加工
 フェトム秒パルスレーザーの光可干渉性を最大限に引き出すには二つのビームを空間的・時間的に厳密に重ね合わせることが必要である。これを特殊な方法、装置を使わず、「空気の非線形光学効果」を利用することで達成するという実に巧妙な方法を発見した。これが引き金となって記念すべき“2ビームフェムト秒パレスレーザ干渉露光計”の完成を見るに至った。
  この装置を用いて1パルスの照射で金属、透明酸化物、各種ガラス、プラスチックなどほとんどあらゆるものの表面に直径100μm程度の回析格子を形成することに成功した。強誘電体結晶薄膜に誘電体ドメイン反転構造の形成や、シリカガラス導波路内にマイクロ回析格子を形成し、光のスイッチングを確認した。また、干渉位置を材料内部に設定することにより、埋め込み型の体積ホログラム回析格子を作製することに成功した(ダイヤモンド内部にも書き込みに成功した)。ただし、通常の方法では表面から1μmまでしか書き込むことはできなかったが、フェトム秒パルスをchirped pulseとすることにより、表面に損傷を与えることなく2〜3mmの深さに書き込むことに成功した。さらに、一度露光した後試料を90°回転させて再度露光することにより(2重露光法)、ナノサイズの2次元周期構造の形成に成功した。しかもビームの衝突角度を変化させることによりメサ構造あるいは穴あけ構造にすることができるという極めてユニークな加工方法を見出したといえる。  上記の加工はチタンサファイアレーザの基本波(870nm)を用いて行ったものであるが、得られる周期構造の間隔の下限は〜40nm程度である。さらに縮小させることを意図して3倍波の290nmの深紫外光を用いて同様の実験装置の組み立てを行い、シリカガラス、サファイア基板等に周期構造を書き込むことに成功した。波長が短いためアブレーション、光化学反応による欠陥構造の生成などが起こりやすく、実験的には長波長の場合に比べて多くの困難を伴うと予想されたが、chirped pulseテクニックを利用して見事に解決された。応用の集大成として、フェムト秒レーザパルスだけで、LiF結晶内部に、発光色中心、導波路、回析格子を書き込んで微小分布帰還形(DFB)色中心レーザを構成し、中心波長450nmの室温発振に成功した。
  上記のように室温でレーザ発振に成功したことはこれからの新しい実用的なデバイスへつながるものと思われる。
4. 委員会からプロジェクトへのコメント
 物事の本質を見抜く鋭い洞察力と並はずれた理解力を持っている細野プロジェクトリーダーの下で、透明電気伝導性酸化物TCOに関する数多くの未踏の課題に取り組んだ極めてチャレンジングな研究チームであった。当該プロジェクトにおける研究のモティべーションは非常に高く、これまで得られた成果は質・量共に並はずれている。新しい材料科学のフロンティアを拓く可能性のある成果が一つ二つではなく、少なくともプロジェクトの各グループに1つはある。
 資源的に豊富な元素から構成されている化学的に安定な透明酸化物を研究対象とするという基本的考えは非常に受け入れやすいし、材料の実用化を考える上においても原料の確保や環境への優しさのため頗る重要な点である。また、酸化物の特徴として、カチオンの種類に応じて結合性がイオン結合性から共有結合性と広いバリエーションを示し、多種多様な結晶構造を取る、ことが上げられる。このような結晶構造の多様性を利用して様々な機能を引き出すことに見事に成功した。例えば、ナノサイズケージや2次元性の高い層状構造は量子構造と見なすことができ、この様な構造の積極的な利用が励起状態に安定化に関係する新機能の創出へとつながった。
 上記のように今回のTEAMプロジェクトは良いテーマが選定され、才能のある研究者が集まっており、また各グループリーダの素晴らしい素質、そしてすべてをまとめるプロジェクトリーダの先見性、指導性をとっても申し分ないと言えよう。本プロジェクトは拠点を東工大に移し、今後も継続させるようであり次のステップとして実用性のあるものへの展開を期待したい。
 

This page updated on January 25, 2005

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