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今井量子計算機構プロジェクト中間評価報告書
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総括責任者 今井 浩 【東京大学大学院情報理工学系研究科 教授】
研究体制: 量子コンピューティンググループ
量子回路プログラミンググループ
量子情報グループ
評価委員 甘利 俊一 【理化学研究所脳科学総合研究センター センター長】
小芦 雅斗 【大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻 助教授】
細谷 暁夫 【東京工業大学理工学研究科 教授】
村尾 美緒 【東京大学大学院理学系研究科 助教授】
Charles H.Benett 【IBM,Ph.D】

 

 
概要
 今井量子計算機構プロジェクトが開始される2001年以前に、この国の量子計算科学と量子情報科学の研究者の多くは、個人単位あるいは少数のゆるい結びつきで行われていた。今井プロジェクトは、この新しい分野では日本で最初のそして唯一の公的資金でサポートされた研究センターである。この5年のプロジェクトの中間点における評価をおこなうことは、この国における量子計算科学と 量子情報科学の健全な発展に極めて重要であることと認識している。
 われわれ評価委員は、このプロジェクトの(1)Interim Progress Report (April, 2004)(英文)、(2)2004年6月17日に行われた総括の今井浩教授とプロジェクトリーダーである岩間教授、山下助教授、林博士、松本助教授、富田博士による業績と組織運営に関する口頭発表、(3)同日午後におこなわれた、若手によるポスター発表、(4)評価委員がすでに熟知している国内外の一般的な評判から、3年間の業績、組織運営の適切さ等について評価を依頼された。それに加えて、このプロジェクトのセンターとしての役割と研究者のみならず若い人たちへ与えた広い意味の教育効果についても言及すると、3年間の実績は極めて高く、これからもさらに質量ともに充実した研究を推進すると確信した。そして、評価委員全員が一致して、最高の評価を与えることにした。
 
1. 研究の実施状況と今後の見込み
 
評価 A
(1-a)
 このプロジェクトの特長であるところの量子計算、量子情報と実験的研究の「3角形構造」はたいへんうまく働いているように見える。それは、具体的には数人のキーパーソンが3角形の繋手になって研究を推進していると見た。彼らが同時に強く動機づけられた若い研究者の教育もしてきたことは高く評価される。これからは、若い研究者同士もふくめて、真のmultipartiteな共同研究が活発になることが期待される。サイトが筑波、東京、京都の3カ所に分かれていることはむしろよい結果をあたえているようにみえる。
(1-b)
 また、計算機科学、情報理論、量子情報技術、物理学など広範囲の研究分野にまたがるインターディシプリナリーな研究が活発に行われていることに感銘を受けた。いままで全く独立に研究してきた理論科学者と実験科学者の相互に刺激しあう共同研究を行うにいたったことは特筆に値する。
(1-c)
 この分野における唯一のセンターであるこのプロジェクトは、2001年から毎年国際会議EQIS: ERATO workshop on Quantum Information Scienceを組織開催し、国際的に一流の研究者を数多く招待し、研究者との交流をはかりまたこのプロジェクトの研究者のみならず国内の研究者に発表の機会を与えた。最近では、国際的にも高く評価された会議となっている。さらに、他の科学分野の研究者がこの新しい分野を認知する役割も果たしている。
(1-d)
 このプロジェクトの教育的な貢献も強調されなければならない。このプロジェクトで成長した若い研究者がやがて、この分野を深く理解した識見をもって、高等教育における量子力学や情報科学の良質な教育者として社会に貢献していくことは間違いない。
 しかし、敢えてアドバイスをするとすれば、一年に2,3回は学部生も含むより広範な聴衆を想定したセミナーや講演会があってもよいのではないだろうか、と思う。
 
2. 研究成果の意義と将来性
 
評価 A
(2-a)
 上記のProgress Report 、口頭発表と国内外の評価からこのプロジェクトの3年間の研究業績は質・量とも顕著であり世界水準にあると認める。これは数多くの質の高い出版論文[論文83編、国際会議の発表61回]からも明らかであり、社会的にもこのプロジェクトにより出願された特許[国際特許3件、国内特許7件]が実際に有用になる可能性がある。
(2-b)
 特にわれわれの注意を引いたのは以下の4つであるが、これは一部に過ぎない。
 量子計算と計算の複雑さ
 (i) 暗号の複雑さの対話型証明と量子一方向関数の性格付けを強化した。
 量子情報理論
 (ii) 量子的な信頼性関数の性格付け。ホレボ容量と生成エンタングルメントの加法性の同等性に対する貢献。この研究から、加法性のクラスという未解決の大問題への重要な前進があった。
 (iii) 量子統計的推測に関する組織的かつ広範な研究
 量子暗号と実験的研究
 (iv) 良質の微弱な光子検出器の開発によって、実用的な量子鍵配送をめざした長距離(150 km)単光子通信において世界記録が達成された。それは主に検出器は効率とダークカウントの比が顕著に改善されたことと、伝送の安定化によるものである。
(2-c)
 さらに、このプロジェクトの活発な研究が若い大学院生やポストドクを新しい研究分野に導きかれらを督励して、質の高い研究成果を上げさせたことは大きな成果である。
 しかし、敢えてアドバイスをするとすれば、外国などから来る有力な研究者が滞在するときには、もっと積極的に議論し、さらには自分たちの研究内容を知ってもらうことであろう。そうすれば、現在みられる活発な研究上の相互作用をより質の高いものにできる。
(2-d)
 このプロジェクトは、広い意味の量子情報科学という新しい分野で研究を活発に進めているが、そこでは量子力学の不思議さと意外さが本質的に使われており、一方日常何気なく使われている「情報」「計算」の意味を問い直すという思想的な深みもある。そのことが科学の興味深さを、現在進行形で社会に発信もしている。さらに、そのような基礎的な研究がたとえば量子暗号、通信、計算という画期的な新技術を生み出す可能性を秘めているという夢も与えていることは大きなことである。


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