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相田ナノ空間プロジェクト中間評価報告書
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総括責任者 相田 卓三【東京大学大学院工学系研究科 教授】
研究体制: ナノ構築グループ
ナノリアクターグループ
ナノフォト・エレクトロニクスグループ
評価委員 岡本 佳男 【名古屋大学大学院工学研究科応用化学専攻 教授】
黒田 一幸 【早稲田大学理工学部応用化学科 教授】
澤本 光男 【京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻 教授】
Helmut Ringsdorf 【Johannes-Gunterberg University, Professor】
Samuel I.Stupp 【Northwestern University, Professor】

 

概要
   本プロジェクトの総括責任者は、精密に分子設計したナノ空間がこれまでの科学では予測されない物理現象や機能を示す可能性が高いことを研究を通じて実感し、その経験を基に本プロジェクトをスタートさせた。プロジェクトの目的は、デンドリマー、ペプチドのナノ組織体、炭素ナノ材料、メソポーラスシリカ等で構築されたナノスケールの容器の中に分子、電子、光子などを空間的に孤立化させる手法の開拓とそれにより発現する新しい物理現象、機能の解明を行うことである。ナノ空間材料科学を通じて、化学・物理の新しい領域を切り開くことを目指すものであり、極めて挑戦的で魅力にあふれており、ERATOのプロジェクトに相応しいものである。
 プロジェクトではこれらのナノ空間材料について、(1)ナノ構築グループ、(2)ナノリアクターグループ、(3)ナノフォト・エレクトロニクスグループの3グループを組織し研究を推進している。
 各グループの研究の実施体制、成果等についての評価は以下の項に示した通りであるので、ここでは各グループの特筆すべき点のみに触れる。グループ1の水溶性デンドリマーで包んだ共役ポリマーの構築と光誘起水素発生および巨大なポルフィリン配列体の構築と光捕集アンテナ機能や、グループ3のカーボンナノチューブ含有イオン液体ゲルおよび導電性グラファイト状のナノチューブの構築と機能に関する研究は、いずれも独創的で画期的な成果が得られている。また、グループ1の光による水からの水素の発生はエネルギー問題に直結し、光捕集アンテナ機能は人工光合成と関連があり、いずれも夢のある研究テーマである。グループ3のタイプの全く異なる2種類のナノチューブは、いずれも導電性であり、機能材料として高い可能性を秘めており、本プロジェクトのハイライトとして強力に研究を推進することが望ましいテーマである。
 グループ2の超分子化学を基盤とするらせん状ペプチドを用いるナノ組織体の構築と機能は、ペプチド化学の新しい展開例として、またグループ3のメソポーラスシリカの新合成法の開拓と機能化は、有機化学と無機化学の融合の有用性を実証する例として、いずれも評価できるが、グループ2の研究の出口が上述のグループ1、3の研究ほど明瞭でない点が惜しまれる。ただしこのグループについても基礎研究としての意義は極めて高いので研究を継続する価値は十分に認められる。
 プロジェクト全体としては、当初の目的の多くを達成しつつある。画期的な成果が得られており、新しい展開も見られるので本プロジェクトの継続を強く望みたい。また、Post-ERATOにつながる重要な成果も得られていると判断できる。
 

1. 研究の実施状況と今後の見込み
   
評価 A
  (1) ナノ構築グループ
   このグループは、デンドリマー構造を有する下記の5つのナノ構造体の合成と機能を中心に研究を展開している:(1)水溶性のデンドリマーに包まれた共役ポリマーの構築と光誘起水素発生、(2)バクテリアの集光機能をモデルとする巨大マルチポルフィリン配列体の構築と分子内エネルギー移動、(3)末端にフラーレンを有するデンドリマー状ポルフィリン組織体の構築と光による電荷分離、(4)ビタミンB12モデルとしてのデンドリマー・ポルフィリン・Co(II)錯体の構築と立体制御ラジカル反応、(5)自己組織化したアルキルトリアゾールFe(II)錯体の構築と相転移によるスピンのスイッチング。デンドリマー構造を有する様々のナノ構造体の合成と機能については、世界中で活発に研究が行われており、真のオリジナリティーについては判断が困難なテーマもあるが、グループ全体としての研究構想のオリジナリティーは非常に高いと判断される。
 いずれのテーマについても興味深い成果が得られており、情報発信も活発で高い評価を受けており、研究の実施状況については申し分ない。
 
  (2) ナノリアクターグループ
   本グループは、動的ならせん構造をとるペプチドと金属ポルフィリンから構築される機能性のナノ環状のホストの設計と合成について超分子化学の視点から研究している。このホストは、ゲストとの相互作用を通じてらせん状bundleの形成、らせん分子のセンシングおよび分離などの機能を示す。また、ペプチドと多関節分子とのヘテロ接合によるらせん状錯体の形成についても検討している。生体高分子として重要なペプチドおよびポリペプチドについては20世紀に膨大な研究が行われているが、本研究のように超分子化学の視点から行われた研究は極めて少なく、その点ではオリジナリティーは十分に認められる。
 メタロポルフィリン残基とアミノイソブチル酸ペプチドからなる環状ホストとキラルペプチドとのらせん状bundle形成とセンシング、ペプチドのらせんをホストに用いる左右のらせんの識別、多関節分子との相互作用によるヘテロらせん超分子錯体の形成など、先例のない研究成果が得られているが、他の二つのグループと比較すると、研究員が少ないことを考慮しても研究のアクティビティは若干低い。
 
  (3) ナノフォト・エレクトロニクスグループ
   このグループは、炭素ナノ材料とメソポーラスシリカを扱う二つのチームから成る。前者はイオン液体を利用するカーボンナノチューブの加工と超分子化学を利用するグラファイト状のナノチューブの合成を中心に研究を進めており、これらはいずれもプロジェクトを通じて新たに生じた研究課題であり、オリジナリティーは極めて高く、本プロジェクトの中で特筆に値する成果である。
 後者のチームは、多くのテーマを手がけており、たとえば、メソポーラスシリカのゾル?ゲル合成においてテンプレートとして機能を有する両親媒性の試剤を用いて新しい展開を図っている。また、有機反応を利用して、メソポアの内壁に完全に機能性の有機基をつけることに成功している。この領域はかなり成熟している感があるので、新しいパラダイムの展開が期待される。
 研究の実施状況は、両グループともこれまでは極めて順調に推移しており、特に炭素ナノ材料については、今後、実用面においても画期的な展開の可能性を秘めている。
 
  グループ 1-3について共通
   人材の活用については、プロジェクトの性格上、有機、高分子化学者が多いのは理解できるが、生化学者を参加させた方がプロジェクトを展開する上で好ましい。人材の流動性は高く評価できる。
 実験装置は、必要なものはほとんど備わっており、また外部との共同研究により不足分が補われている。
 

2. 研究成果の意義と将来性
   
評価 A
  (1) ナノ構築グループ
   デンドリマーのナノスペースを使った高効率の電荷分離と電子移動は、水からの水素の発生の効率を高める。この結果は非常に興味深く、エネルギー問題の観点からも注目に値する。多くのポルフィリンが規則的に配列した組織体は、合成技術の粋を集めたものであり、その中で励起エネルギーの移動が効率よく起こることが示された。この結果は人工光合成に関連があり興味深い。ポルフィリン・フラーレン組織体、デンドリマー触媒、トリアゾール系Fe(II)錯体の相転移と磁性に関する研究は、いずれも斬新であり、「デンドリマー効果」と呼べる現象を見いだしている。これらの成果は、多段の合成反応を経由して得られるデンドリマーで見いだされたものであり、実際に利用することは容易ではないが、新聞等にも取りあげられており、学術上の価値は高く、今後さらなる展開が期待できる。
 
  (2) ナノリアクターグループ
   ペプチドの特性を活かした超分子構造の構築とそれを利用したセンシングと識別は、ペプチド科学の新領域を開拓するものであり、いずれも興味深い。らせん状のペプチドと多関節化合物からなるヘテロ接合らせん錯体も新しい。このような視点からのペプチド研究はほとんど行われておらず、ペプチドの新しい可能性を追求する基礎研究として意義がある。
 
  (3) ナノフォト・エレクトロニクスグループ
   カーボンナノチューブは、新しい材料として高い関心を集めているが、不溶不融であるために加工性に難点がある。加工については、多くの試みがこれまでに行われているがよい手法は見いだされていなかった。その中で、イオン性液体を用いて非常に単純な操作によりゲルが得られることを発見したことは、大変意義のあることであり、実用化を含めて今後の展開が大いに期待される。グラファイト状のナノチューブは、超分子化学の手法を駆使して合成できたものであり、導電性を示す夢のある材料である。これらの成果は、本プロジェクトの中で最も注目されるものである。
 有機化学、超分子化学的な手法を基に様々の特性、機能を有するメソポーラスシリカの合成法が開拓されている。今後はより高度の規則性を有するシリカの合成を期待したい。


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