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難波プロトニックナノマシンプロジェクト中間評価報告書
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総括責任者 難波啓一(松下電器産業(株)先端技術研究所 リサーチディレクター)
研究体制: 分子構築グループ 研究員 今田勝巳 他4名
形態変換グループ 研究員 米倉功治 他3名
分子動態グループ 研究員 大澤研二 他5名
評価委員 曽我部正博(名古屋大学大学院医学研究科 教授)
月原冨武(大阪大学蛋白質研究所 教授)
吉田賢右(東京工業大学資源化学研究所 教授)

 

1. 研究の進捗状況と今後の見込み
1.1. 研究構想の具体化状況
 本計画の最終目標は、鞭毛モーターの構造−機能連関の理解である。そのために、モーターを構成する各サブユニットの結晶化とその精密な構造解析を行う(T)分子構築グループ、超分子集合体レベルでの構造変化のやや荒い解析を行う(U)形態変換グループ、そして機能再構成に基づく構造機能連関の解明を行う(V)分子動態グループの3グループが密接に連携して研究を推進している。鞭毛モーターについてこれだけ総合的なプロジェクトは他に例がなく、極めて挑戦的なプロジェクトである。各グループの研究者数も平均5-6名とバランスが取れており、主要な設備も充分に整えられている。全体として、3年間で研究構想が着実に実現されており、今後の発展を期待させるものである。
  1.1.1. 分子構築グループ
 実験室系でのX線発生装置をはじめ、回折実験法の改良を行いながら、細菌べん毛の28種のすべてのタンパク質の構造解明に向けて、組織的に集中した努力が注がれている。すでにF41フラグメントの2 Å構造解析に成功する成果も得た。また、flagellin以外の鞭毛軸構成蛋白質では、4種のロッド蛋白質と3種のフック結合蛋白質の大量発現系を確立し、試料調製に成功している。それぞれの蛋白質の結晶化、コンパクトなドメインだけの結晶化、分子シャペロンとの複合体の結晶化を行っている。鞭毛モーター回転子FliFのリングは26量体の細胞膜貫通複合体と考えられている。FliGはFliFと1:1の複合体を形成して、プロトンチャンネルを形成する膜蛋白質MotA-MotB複合体と相互作用して回転トルクを発生する。FliFリングとFliF-FliGリング複合体の電子顕微鏡による構造解析を進めると共に、結晶化のための試料調製法の開発を行っている。これらの研究の成功はこの分野に計り知れない影響をもたらす。しかし、すべてが後2年で完成するとは思えない。継続した援助が望まれる。
1.1.2. 形態変換グループ
 低温電界放射型エネルギー分光電子顕微鏡を高分解能の像を得る事ができるようにし、研究の技術的基盤を確立し、既に大きな成果も得ている。
 鞭毛フィラメントとキャップ蛋白質5量体複合体の構造決定を電子顕微鏡によって行い、flagellinサブユニットが重合するたびにキャップ蛋白質5量体複合体が6.5度回転しながら持ち上がっていく、構造形成の分子機構を明らかにした(2000年12月, Science誌)。これは、電子顕微鏡構造解析の特徴を生かした画期的な成果である。
 鞭毛フィラメントのラセン対称および多数の像を利用した平均による高分解能電子顕微鏡構造解析、FliF-FliGリング複合体の電子顕微鏡構造解析も進行中である。FliF-FliGリング複合体はHis-tag つきの蛋白質を発現させての大量調製を進めており、鞭毛モーター固定子でのNaチャンネルを形成する膜蛋白質PomA-PomB複合体は電子線構造解析に向けて2次元結晶化を行っている段階で、今後の進展が期待できる。
1.1.3. 分子動態グループ
 このグループは鞭毛モーターの各サブユニットを精製、改変するサブグループと、鞭毛回転速度やトルクの測定、あるいはプロトン流と回転のカップリングの解析の2つのサブグループに分かれている。最初のサブグループは膜蛋白質であるMotA-MotB複合体を数mg/l培地の高い収量の発現系の構築に成功した。その他幾つかの鞭毛蛋白質の大量発現と精製及び機能解析を行っている。プロジェクト全体に材料を供給するという重要な役割を充分果たしている。2番目のサブグループは、鞭毛モーターの仕組みを理解する上で最も重要なプロトン流と回転のカップリングの機構の解明を目指している。そのために、鞭毛モーターの駆動エネルギーであるプロトン流を高感度で計測するシステムを構築し、技術的基盤を確立した。現在、鞭毛モーター変異体を単離し、変異部位の同定や変異株の機能解析によってモーターの働きの仕組みを解明しようとしている。
1.2. 未踏課題への挑戦状況
 鞭毛構成蛋白質の構造決定のみならず、FliF‐FliG‐FliM‐FliNリングなどの複合体の結晶構造解析に向けて3グループが協力して取り組んでいる。膜蛋白質複合体の大量共発現系の構築、精製からから始め、電子顕微鏡による単粒子解析を行うと共に、3次元結晶化によるX線結晶構造解析を目指している。可能な限り鞭毛そのものに近い複合体のX線結晶構造解析がこのグループの最も大きな目標であろう。
 鞭毛の機能解析では、形態変換グループはプロトン流を計測して、構造と合わせてどのような機構で回転に転化されるのかを解明することを目指している。これはこの研究全体の究極的な課題といえよう。
 構造、機能の両面における未到の課題への挑戦の意欲と実現の可能性を十分感じ取れた。
1.3. 研究者の参集状況
 蛋白質の大量発現形の構築、精製、結晶化、X線結晶構造解析、電子線構造解析の研究者を配して構造研究を行う上で十分な体制が作られている。加えて機能解析の研究者もおり、構造と機能の研究の連携にも配慮できた陣容である。
1.4. 施設設備の整備状況
 実験室としては申し分ない。
2. 研究成果の現状と今後の見込み
 この3年間の研究成果としては、3グループともにそれぞれの依って立つ手法を確立した事が共通している。構成蛋白質のX線結晶構造解析では、成果がではじめた。今後、この研究は着実に成果をあげるであろうという印象を強く持った。これは、なによりも分子構築グループのみならず3グループの総力として、大量発現系の構築、精製法の確立、結晶化を行える体制ができていることが大きい。着実な成果が期待できる構成蛋白質のX線結晶構造解析だけでもトップ水準の研究になるが、さらに大きな超一流の成果を期待したい。電子顕微鏡とX線結晶構造解析によって、可能な限り鞭毛そのものに近い複合体のX線結晶構造解析ができれば、この分野の研究にとって劇的な発展をもたらす。これにチャレンジするに相応しい研究者構成になっており、主要な力をこちらに投入すれば画期的な成果が期待できる。ぜひともここに重心を置いた研究を展開して欲しい。また、プロトン流を計測することによる機能解析の研究は困難も有ろうが、大事な研究であり、すぐ成果が出なくても、じっくり取り組んで欲しい研究である。

This page updated on August 6, 2001
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