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高井生体時系プロジェクト事後評価報告書
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評価委員 竹市雅俊(京都大学大学院 教授)
竹縄忠臣(東京大学医科学研究所 教授)
廣川信隆(東京大学大学院 教授)

 

1. 研究の内容
 本プロジェクトは、分子スイッチの役割を果す低分子量G蛋白質に注目し、これが、どのようにして細胞情報伝達系の時間的・空間的制御を行っているかを明らかにすることを当初の目的として発足している。実際には、G蛋白質の下流にあってそのような制御を行っていると仮定されるタンパク質を、F-アクチンのオーバーレイ法等で網羅的に同定し、それらの機能を遺伝子ノックアウト法により検証しようとした。この試みは成功し、多数のタンパク質が同定され、その連鎖反応系の一部が解明された。その中でも、細胞間接着に関わるNAP系の発見は特筆すべきで、タンパク質の発見から遺伝子ノックアウトによる機能解析に至るまで、一貫した研究として完成している。細胞間接着装置の研究分野では、カドヘリン‐カテニン系、および、オクルディン‐クローディン系の研究が先行していたが、NAP系については、その2つのシステムをつなぎとめる役割が示唆されるなど、細胞接着調節の新しい概念の確立につながるインパクトに富んだ発見である。NAP系は、従来、その存在がまったく予測されておらず、本プロジェクトなしでは、未だ発見されていなかったかもしれない。
 5年間という、実質的にはさらに短い期間内で、これほど多くのタンパク質群を発見し、それらの機能を明らかにできたことは驚嘆に値する。上記以外のタンパク質については、機能研究について未完成な部分が多いといえ、一部については非常に興味深いノックアウトマウスの表現型が観察されており、今後の発展の布石として、重要なものばかりである。
2. 研究成果の状況
 短期間のプロジェクトであるのにかかわらず英文原著論文は40報に及び、その内J. Cell Biol. が7報、Science l報、J. Biol. Chem. 19報など、質の高い論文を輩出している。このような研究成果の発表状況は、5年間で研究を立ち上げ結果を出すという短期プロジェクトの困難さを考えに入れると、驚異的と言わざるを得ない。新しいタンパク質のノックアウトマウスの作製と解析には通常3−4年の月日を要する。しかし本プロジェクトにおいて発見されたいくつかのタンパク質についてすでにノックアウトマウスの解析が進み、論文も出始めているということは、研究組織の質の高さと効率の良さを端的に示している。さらに、NAPシステムという新たな接着制御機構の提唱は、世界をリードする研究として、今後の展開が楽しみである。なお、本研究では、あまりに多くの分子が同定されたために、すべてについて機能を明らかにする余裕はなかったとみられ、一部は、たんなる記載に終わっているが、これらについても、情報の収集・蓄積という意味では、十分意義のあるものである。
3. 研究成果の科学技術への貢献
 細胞骨格・細胞接着の問題は、細胞の運動・極性や形態形成に至る生命現象の根幹に関わる重要な現象に関与しており、本プロジェクトの成果は、これらの生命現象を理解する上で極めて貴重である。さらに、がんの転移克服など、将来の医療技術の発展にも密接につながり得るものである。以上の成果は、ほとんどが基礎的なものであるため、直ちに工業技術への応用が期待されるとは言い難いが、同定したタンパク質の多くについて特許の取得を行っているので、将来、これらタンパク質と病気との関与などが明らかにされた場合、威力を発揮するであろう。また、高井グループは、本プロジェクトにおいて得られたcDNAクローン・抗体などの他研究者への供与に関し非常に協力的であり、関連分野全体の発展にも大きく貢献している。
4. その他の波及効果
 基礎研究としての本プロジェクトが、短期間でインパクトの高い研究を大規模に押し進めることができたのは、ERATOの仕組みが基礎研究の支援に有効であることを示したよい例となろう。また、本プロジェクトを通して、多くの若い研究者が育ち、日本国中の大学や研究所の責任あるポストに迎えられている事実は、本プロジェクトが卓越した研究成果をあげただけでなく、人材育成にも大きく寄与したことの証明である。
5. その他の特記事項
 本プロジェクトは、他のERATOプロジェクトと比べても、質量共に優れた成功例であろう。実験科学の分野では研究の立ち上げに時間を要し、短期間でこのレベルの成果を得ることは一般に困難である。しかしこのように成功したプロジェクトについても一律に5年間で終わらなければならないということは、立ち上げにかかる時間を考えると、研究上かなりの損失である。終了前に評価を行い、良い評価を得たプロジェクトは数年間の延長を認めるような方式が考慮されてもよいように思われる。
 また、現在のように研究場所を大学以外に見つけてプロジェクト拠点を作らねばならないというシステムには無駄が多い。東京や関西などを中心として全国に数ヶ所のオープンラボなどの固定拠点を設けて、新しいプロジェクトの採用と同時に、プロジェクト構成員が同じ場所で研究を開始できるシステムを構築することが早急に望まれる。固定の設備や施設が無駄なく連続して使用でき、すぐに研究を始められるということがERATOなどの短期プロジェクトの成功には必須であろう。


This page updated on August 6, 2001
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