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川人学習動態脳プロジェクト

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総括責任者
(現職)
川人 光男((株)エイ・ティ・アール人間情報通信研究所第三研究室長)
研究実施期間 平成8年10月〜平成13年9月

 

1.研究の概要

 20世紀は物理学の世紀であったといわれる。18世紀、19世紀に実験科学として着実な進歩を遂げてきた物理学が、相対性理論、量子力学、統計力学などの人類の歴史に残る偉大な理論を産み出し、自然科学の雄として、人々の自然観を根底から変えたのである。21世紀は脳の世紀となるはずである。20世紀後半に実験科学として長足の進歩を遂げた神経科学が理論研究者に刺激を与え理論物理学に匹敵する計算論的神経科学が花開くであろう。これは従来の物理学が単純な素子が一様に多数集まったシステムしか取り扱えなかったのに対して、複雑なシステムの科学を作り出すことになる。その影響は脳を守る(臨床医学への応用)、脳を創る(ニューロコンピュータ等の工学技術)に加えて脳を知るという人類の最も根源的な知への探究に通ずることになる。
 脳の神経系の機能つまり情報処理の仕組みを明らかにするためには従来からの伝統的手法、神経生理学、神経解剖学、分子神経生物学などの大半はハードウェアレベルの研究に終始していて不十分である。
計算論的神経科学の上述の問題点を解決するためには、モジュール統合の双方向理論という大きな枠組みの中で、脳の入力から出力までの情報処理を首尾一貫して理解することが必要である。それには神経生理データの解析、心理・行動実験、計算理論研究、計算機シミュレーション、ヒューマノイドロボット制御実験を有機的に組み合わせ、Marrの3レベルを同時に研究してつないでゆくことが重要な鍵となる。
 脳の理解は21世紀に向けて人類に残された最大の課題であるが、原理的にも最も困難な問題であると考えられ、従来手法に固執しているだけでは、大きな進歩は望めない。本研究主題では計算理論的手法が最も成功した感覚運動変換を基礎として意識や思考などの高次脳機能を解明しようとするもので、目標の1点においてでも成果が得られれば、脳科学の将来を大幅に変えるようなパラダイムシフトが生じると期待される。このような科学的な成果が、情報処理装置など工学技術にそのまま応用可能であることも明らかであろう。
 本研究では、計算論的アプローチ、心理学・行動学の実験、神経生理学的研究、ロボティックスの実験の4つの研究手法を有機的に組み合わせて、ヒトの高次脳機能のなかでも、学習、思考、言語、意識、注意などの機能を計算論的に明らかにすることを目指す。

2.研究体制と参加研究者

○研究体制
計算神経生理グル−プ (京都府相楽郡/(株)国際電気通信基礎技術研究所内)
【大脳基底核学習モデルの提案と各種実験・計測による検証・証明】
計算心理グル−プ  (京都府相楽郡/(株)国際電気通信基礎技術研究所内)
【視覚運動変換に関する様々の計算理論やモデルを心理実験により検証】
計算学習グル−プ  (京都府相楽郡/(株)国際電気通信基礎技術研究所内)
(Los Angeles, U.S.A/University of Southern California内)
【脳神経系の学習能力を理論的に明確にする学習計算理論の研究】
○参加研究者(グループリーダー、研究員)    (  )内は発足時からの通算
企業 大学・国研等 外国人 個人参加 総計
1(2) 0(0) 2(5) 8(8) 11(15)

3.研究成果の概要

○特許出願件数
国内 海外
○外部発表件数(論文・口頭発表)
国内 海外
論文 30 36
総説・書籍 11 19
口頭発表 98 62 160
115 100 215

【発表主要論文誌】
  Nature/Current Opinion in Neurobiology/Neuro Report/Journal of Neurophysiology/Trends in Cognitive Sciences/Neural Networks/Physical Review Letters/Journal of Neuroscience/Neural Computation

主な研究成果

1) 小脳、基底核、大脳皮質の機能分化と統合
 小脳、基底核、大脳皮質の計算原理を、それぞれ教師付きの内部モデル学習、報酬予測による強化学習、教師なしの統計的学習という形で特徴づけた上で、同じ行動課題が状況に応じて異なる複数の表現とアルゴリズムにより学習可能なことを予測し、その一部を実験的に証明した。さらに状態予測器と強化学習回路の対を複数持つアーキテクチャーによって、非線形・非定常系の効率良い強化学習が可能なことを示した。これは、感覚運動学習を基礎に置きながら、シンボルの生成やその階層処理への道を開く可能性を持つモデルである。
2) 視覚認知のダイナミクス
 運動方向の知覚に関して、フィードバック結合を用いた計算(繰り返し計算)が視覚計算に用いられていることを、計算理論と心理学実験を組み合わせて示した。繰り返し計算では、脳内に入力画像と3次元世界に関する内部表現があって、それが時間とともに変化して最終的な知覚へと変化していく。このように知覚の内部表現が時間とともに変化することを実験的に示したことは最初であり、計算理論からの予測と実験データは見事に一致する。
3) 道具の使用を可能にする脳内学習機構の解明
 人間の被験者が道具の使い方を学んでいるときに、脳の活動を核磁気共鳴画像装置を用いて計測した。学習中の小脳活動には、(1)誤差の情報を正確に反映する活動、(2)学習が進むにつれて増える活動、の2種類があることが解った。この結果は、小脳に学習対象の「内部モデル」が獲得されるという、計算理論の予測と一致していた。
4) 運動学習に伴う制御戦略の変化の解明
 新しい運動を学習するとき、始めはぎこちなく融通のきかない動作を行っているが、次第に、楽に自由な運動ができるようになる。この変化を筋肉の電位変化を計ることで、定量的・動的にとらえた。その結果、人間の脳は、(1)筋肉の剛性を上げ、未知の負荷力に抵抗する(学習初期)、(2)負荷力を予め予測し、必要十分な力を出す(学習後期)、という2種類の制御方法を組み合わせていることが解った。
5) 脳研究のためのヒューマノイドロボットの開発
 人間の運動生成、運動学習理論の実験的検証のためのヒューマノイドロボットの開発を行った。本ロボットは、人間に近い関節構成、および重量を持ち、また従来の産業用ロボットと違い、人間と同様な柔らかい関節を持っている。平成11年6月に、いくつかの研究成果と共に本ロボットに関する新聞発表を行った。
6) ヒューマノイドロボットのための新しい運動学習手法および運動生成手法に関する研究
 人間と同様に複雑な機構を持つヒューマノイドロボットのための運動学習手法および運動生成手法として、統計的学習理論を応用したオンライン学習手法の開発、人間の眼球運動生成メカニズムを参考にした適応型前庭動眼反射制御アルゴリズムの開発などを行い、実際にロボット上に実装し動作検証実験を行った。また、感覚運動統合の例として神経振動子を用いたリズミックな運動の生成手法の開発および実装や、人間の機構情報を用いてビデオ画像からロバストに人間の運動を抽出する手法の開発、ジョージア工科大学の研究者と共同で、3次元位置計測装置により計測された人間の動作からロボットの運動を生成する手法の開発などを行い、それぞれヒューマノイドロボットを用いた動作実験の結果、良好な結果を得ることができた。


This page updated on May 12, 2000
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