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横山情報分子プロジェクト中間評価報告書
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評価委員
石黒正路 (財)サントリー生物有機科学研究所 部長研究員
多比良和誠 東京大学大学院 教授
三浦謹一郎 学習院大学理学部 教授

 

1. 研究の進捗状況と今後の見込み
1.1. 研究構想とその具体化状況
 本プロジェクトは、生物の複雑で多様な情報を処理する高度なシステムとしての面に着目し、遺伝子と蛋白質という情報分子を人工的に設計・合成して、生命現象に関わる情報伝達の分子機構への深い理解をめざすとともに、新しい人工の情報処理システムを構築することをねらいとしている。そのための具体的な戦略は、非天然型アミノ酸をコードする人工の塩基対を設計・合成し、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)などの天然の酵素を利用して、蛋白質に非天然型アミノ酸を導入して、従来にない新たな機能を産み出す、というものである。このように、本プロジェクトの研究内容は、化学から細胞生物学までの広範囲の融合領域である。
 この目標を達成するために、当初は、1. 遺伝情報分子研究グループ、2. 細胞情報分子研究グループを発足し、それらの成果をうけて、3.人工情報分子研究グループ、を発足する予定であった。しかし、二つの研究グループの研究が進むにつれて、それぞれが、人工情報分子研究グループの任務である人工的な総合システムの研究へと踏み込んでおり、そうした状況を勘案して、現状の研究グループ体制を維持した研究の継続が今後も予定されている。以下に各研究グループの活動状況への評価を記載する。
(1) 遺伝情報分子研究グループ
 本グループでは、新しい塩基対を作ることによるコドン表の拡張を可能とすることによって、新しい非天然型アミノ酸を導入した蛋白質を発現する細胞系の確立をめざしている。これまでの活動の結果、新しい人工塩基対を作り出すことに成功し、しかも、その塩基対は、天然の酵素が使用可能という点でも画期的な成果である。本成果は、非天然型アミノ酸を取り込んだ新規蛋白質を作り出す目標に向けて一段階が具体化したといえる。今後は、本プロジェクトの次ぎの課題へと進む段階であり、in vitro/in vivo での新規蛋白質の発現がおおいに期待できる。
(2) 細胞情報分子研究グループ
本研究グループでは、細胞シグナル伝達などにおいて、蛋白質による制御機構で特異的な認識機構を産み出すことを目標として、epidermal growth factor (EGF)レセプターとEGFとの間の認識機構の解明を土台にして、認識部位の人工的改変から特異的な認識機構を作り出すことを検討している。その結果、EGFレセプターは二量体化することによって活性化するが、二量体化するだけではシグナル伝達が進まないこと、また、このシグナル伝達系に非天然型アミノ酸を導入して特異的なリガンド−レセプター認識機構の制御が可能であることを示した。このような研究を進めて、次ぎに、非天然型アミノ酸を導入したEGFレセプターの発現による評価が待たれるところである。
  1.2. 未踏の課題への挑戦状況
 本プロジェクトの研究課題のひとつである天然の酵素が認識する人工塩基対の設計・合成という研究課題は、さらに天然の塩基対との区別が要求されるために、アメリカの化学者を中心とした世界の幾つかの優秀な研究グループがこの10年間努力しているが未だ成功していなかった。本プロジェクトの前半で、この困難な未踏の課題の解決にほぼ成功したことは画期的であり、間違いなくこの研究分野で世界を大きくリードしている。
1.3. 研究者の参集状況
 遺伝情報分子研究グループのグループリーダーは、ヌクレオチドの有機合成化学を基本として分子生物学分野に飛び込んできているが、生物現象の解析的な面でも優れているので、このようなプロジェクトを進める上でリーダーとして具合よく働いている。細胞情報分子研究グループのグループリーダーは、有機化学、蛋白質科学、細胞生物学に通じていて、プロジェクトの展開には向いている。両者ともに新しい目標に意欲的であり所を得ている。短期間のプロジェクトなので、研究者を適時に集めることは難しいと思われるが、現在はかなりよい具合に集まっている。
1.4. 施設・設備の整備状況
 両グループについて、おおむね良好であるが、研究室のスペースがもう少しあるとよい。
2. 研究成果の現状と今後の見込み
プロジェクトはまだ前半を過ぎた段階であるが、すでに目だった成果を挙げ、今後の展開がおおいに期待される。
  2.1. 遺伝情報分子研究グループ
 天然の酵素が利用できる新しい人工塩基対を作り出すことに成功している。今後は、今回開発された人工塩基対の一層の改良などの開発をさらに進める一方、非天然型アミノ酸の蛋白質への導入のために、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)の改造をすることや、ターゲット蛋白質を選んで実際に新しい蛋白質を作り出すことが必要であろう。そのためにも、最終的な細胞情報分子研究グループとの融合が望まれる。先への展開が期待される。
2.2. 細胞情報分子研究グループ
 EGFレセプターの細胞外ドメインの機能として、リガンド特異性ドメインとリガンド親和性ドメインが存在することを明らかにしてきている。それにより二量体化によって活性化されるレセプター群でリガンド−レセプター相互作用の解析と、それに基づくリガンド設計が、さらに効率よく進む可能性が示された。細胞情報伝達では、レセプター間の相互作用の解析が重要課題であるが、非天然型アミノ酸を導入した系での解析は、新しい機能制御系を産み出す可能性があるので、その取り組みもできるだけ早く始めることが望まれる。
3. 結語
 本プロジェクトは、「遺伝情報分子研究グループ」と「細胞情報分子研究グループ」の2グループで研究を進めている。遺伝情報分子研究グループでは、人工の新塩基対を作ることに成功した。しかも、この人工塩基対は、天然の酵素が利用できるという点で画期的である。これは、世界初の成果としておおいに評価できるし、研究構想の具体化の第一歩として立派である。一方、細胞情報分子研究グループは、EGFレセプターにおけるシグナル伝達について具体化しようという目標で研究を行い、特異的なリガンド−レセプター認識機構の制御が可能であることを示した。EGFレセプターは二量体化することによって活性化するが、二量体化だけではシグナル伝達が進まないことを明らかにし、この伝達系に非天然型アミノ酸を導入することによって、この伝達系を制御しうることを示した。プロジェクト全体としては、現在開発に成功した人工塩基対を蛋白質への非天然型アミノ酸の取り込みに利用する試みをいち早く具体化することとともに、「遺伝情報分子研究グループ」と「細胞情報分子研究グループ」との共同作業を早めに試みることも必要であろう。いずれにしても、将来性があるプロジェク トである。5年という期間はこのプロジェクトの目標としては短いし、成果も上がっていることなので、第2期のプロジェクトを作れるようにできるとよい。以上の通り、本プロジェクトは、すでに目立った成果を挙げ、今後の展開がおおいに期待される。

This page updated on May 12, 2000
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