JST トップ > ダイバーシティ推進 トップ > 外部との連携・発信 > レポート 性差に基づく新しいイノベーション論 ~科学におけるジェンダード・イノベーション~  開催レポート

[本文]

外部との連携・発信

レポート

2016年3月16日開催 JSTダイバーシティセミナー 開催レポート

性差に基づく新しいイノベーション論 ~科学におけるジェンダード・イノベーション~
Gendered Innovations in Science, Health & Medicine, Engineering, and Environment
  • 2016年3月16日(水)JST東京本部地下大会議室
  • 講師:Londa Schiebinger スタンフォード大学 科学史教授
  • 参加者:120名
Londa Schiebinger (ロンダ・シービンガー)教授

 2016年3月16日(水)、科学史が専門のスタンフォード大学Londa Schiebinger (ロンダ・シービンガー)教授をお招きし、性差分析を研究に取り入れてすべての人のためのイノベーションを目指す「ジェンダードイノベーション」についてお話いただきました。

 現在、「ジェンダードイノベーション」はスタンフォード大学のwebサイトにて、多岐にわたる分野における事例が収集、紹介されています。シービンガー教授のお話は主にこのwebサイトを紹介しつつ、研究開発になぜジェンダー分析が必要なのか、分析を行わない場合何が問題なのか、また、行うことで広がるイノベーションの可能性について多角的に掘り下げる形で行われました。多くの事例からこのレポートでは3点をご紹介します。

●事例1…性別のマッチング

幹細胞にも雄雌(xx,xy)の差があり治癒力に差があるなど特徴も違うことがわかってきている。特徴も違えば実験結果にも差が出る可能性があり、こうした差の他、様々な要素を含めて最初の段階で性差を踏まえた検討が必要。また、臓器移植も女性同士、男性同士の移植が望ましいが、臓器提供をするのは女性が多いという統計もあり、現実は男性臓器が不足している。この不足は生物学的な性(Sex)ではなく、社会的な性(Gender)の問題である。この二要素は相互作用しているため、双方を考慮に入れた検討が必要である。
https://genderedinnovations.stanford.edu/case-studies/stem_cells.html#tabs-2

●事例2…webの機械翻訳プラットフォーム

スペイン語で発信されたSchiebinger教授の記事を英語に機械翻訳した結果、教授は“He”と示され時には“It”のこともあった。翻訳プログラムのスタッフは全く無意識にプログラムを構築しており、この事実を知るとすぐさま改定に取りかかったが、結局きちんと対応することはできなかった。無意識のうちに男女の役割を決めてしまうジェンダーバイアスは様々なところに影響を及ぼし、その後の大きな問題に繋がりかねない。しかしプラットフォームができあがった後では既に修復不能な場合もあるため、必ず設計の最初にジェンダー分析を行うべきである。これを受け、現在スタンフォード大学工学部ではカリキュラムにジェンダー分析を取り入れている。
http://genderedinnovations.stanford.edu/case-studies/nlp.html#tabs-2

Londa Schiebinger (ロンダ・シービンガー)教授

●事例3…概念の再構築

公共交通分析の移動の分類に新項目「ケアリングワーク(介護や育児等ケアのための移動)」を設定し再分類した結果、この項目が通勤に次いで2位と大きかった。正確なデータを検討に使用することにより移動をより効率化し、コスト削減やQOL向上にも繋がってゆく。スタンフォード大学ではこうしたデータ収集のカテゴリを再構築するプロジェクトを開始している。
http://genderedinnovations.stanford.edu/case-studies/transportation.html#tabs-2

 今や様々な分野で取り入れられ始めているジェンダードイノベーション。講義では生物学的な性(Sex)、社会的な性(Gender)を常に考慮し、必ず最初から分析に取り入れること、そして双方は必ず相互作用し切り離して考えることはできないことが繰り返し強調されました。朗らかで情熱的な教授のお話に会場の参加者120名も大いに盛り上がり、その後の質疑応答では生物学、LGBT、メンタルヘルス、労働市場、歴史と伝統文化など教授も驚くような多彩な角度から質問が寄せられました。この多彩さは性(Sex・Gender)が広く深く私たちに影響を及ぼす非常に根本的な要素であることの表れでもあり、強く意識して取り組む必要性を感じさせるセミナーとなりました。

 なお、ご紹介したスタンフォード大学のwebサイトは各分野の事例のみならず、ジェンダー分析とは何か、その方法論や条項、チェックリストもありジェンダー分析を研究に取り入れるための基本情報も充実しています。様々な事例含めて是非詳細をご覧ください。
http://genderedinnovations.stanford.edu/(英文ページ)

Londa Schiebinger John L. Hinds Professor of History of Science

当日資料(PDF)

サイエンスポータルにも記事が掲載されました。
ひとりひとりの人間の違いを大切に
「性差に基づく新しいイノベーション論」を提唱したロンダ・シービンガー 米スタンフォード大学歴史学部教授

理事長メッセージ
室長メッセージ )野依先生インタビュー
Official Site ※英語サイトジェンダーサミット10

科学とジェンダーの国際会議
ジェンダーサミット
2017年 5月25日(木)26日(金) 日本開催予定

2015年12月1日
厚生労働省認定次世代育成支援認定マーク くるみん
を取得しました。
くるみんマーク