シンポジウム
「女性研究者と共に創る未来」
パネルディスカッション第一部
「科学とSDGs -これからの科学技術と社会を考える
JST主催 終了

  • 【パネリスト】
    • ・赤井 恵(大阪大学大学院工学研究科 助教)
    • ・荒瀬 由紀(大阪大学大学院情報科学研究科 准教授)
    • ・所 千晴(早稲田大学理工学術院 教授)
    • ・矢尾 育子(浜松医科大学光尖端医学教育研究センター 准教授)
    • ・田所 ゆかり(日産自動車パワートレイン技術開発本部 EV・パワートレイン戦略部 テーマリーダー)
  • 【ファシリテーター】
    • 阿部 彩(首都大学東京 人文社会学部 人間社会学科 教授)

少数派として

阿部:男性多数の中で仕事をしてやりにくいと思ったことはありますか。
赤井:サイエンスの集まりでやりにくさを感じたことはありませんが、それ以外のグループでは、男性側が受け入れを躊躇、振り返ると私も少し遠慮があったかなと思ったことはあります。
荒瀬:不都合を感じたことはありませんが、距離感、気を遣われているなと感じたことはあります。
矢尾:医学・生物系では比較的女性は多いのですが、組織の上の方は女性の割合はまだ少ないので、その立場になると発言しにくくなるのかもしれません。

女性の共感力、リーダーシップ

阿部:一方で、仕事以外でもけっこうですが、女性が過半数のチームの経験はありますか。違いはあるでしょうか。
:プライベートで子供会の運営をしたことがあります。ほとんどが女性。女性は共感することで、同じ方向に向かって動くのではないかと感じました。男性は義務感・責任感がモチベーションとなる一方、女性はよく話し合いをして目的を共有することで良い結果が生まれると感じました。
阿部:運営のあり方が男女で違うということでしょうか。
田所:一般的に女子校ではリーダーシップが生まれやすいと言われますが、リーダーを決める場面などで女性であることを意識しないので、リーダーシップを発揮できるかもしれません。
阿部:異分野の方と課題解決に取り組んだことがありますが、つなげてくれたのは新聞記者の方でした。共感力について、私も女性の方があるかもしれないと思います。

アプローチ方法や視点の多様化

阿部:今後、男女混合チームがより効率を上げるために何が必要でしょうか。
:一度無理矢理女性だけのチームや女性多数のグループを作ってみてはどうでしょうか。試してみる段階にあると思います。
赤井:経験から、優秀で自信がある男性のほうが女性を恐れない。優秀な男性には女性を受け入れる下地があると思います。
:男性はこう、女性はこうと言いたくはありませんが、例えば発展途上国で苦しんでいる人を助ける事業にあたったとき、ビジネスとして捉えるか共感・感情移入して仕事を進めるか、男女混合チームであれば様々な視点をもって、問題解決に大きな力が発揮できるかもしれません。
田所:自動車開発関連では、これまでユーザに男性が多かったためスピードやパワー、つまり性能でしたが、(新しい技術である)自動運転などには、社会的弱者やマイノリティの視点が必要とされてきています。
矢尾:生物の分野では近年大きなチームを組むことが多いのですが、一つの目標に向かって男女関係なく努力すること、女性も自ら異分野に飛び込むことが重要だと考えています。

評価者のダイバーシティ

阿部:トップが男性か女性かで違いが出ると思いますか。
田所:海外で様々な出身の学生と勉強したことがありますが、わかり合えないことが当たり前という状況でした。考え方のバックボーンが違うことを互いに理解し、決めつけないという土壌がありました。
日々の業務では、男性が多い環境で、女性は感性が違うからか言いたいことが通じないことがあります。評価軸が男女で違うので、なかなか評価されないと感じてしまうこともあります。管理職の層にダイバーシティを広げることが大切ではないでしょうか。
また、チーム作りにおいても、トップが女性であればメンバーを集めるときにダイバーシティを考慮するのではないかと思います。

男女以外のダイバーシティ

矢尾:女性だけのグループより、ダイバーシティがあるほうが強いグループとなるはずです。男女混合で、さらに国籍等もダイバーシティに富んでいることが重要だと思います。
荒瀬:中国で仕事をしたことがありますが、外国人が半数くらいになると自然と英語での会話になります。そのような、自然と偏りが解消される仕組みがあるといいですね。
赤井:基礎科学では、アウトプットの具体的なターゲットがなかなか見つけられません。融合領域のグループ作りは(人集めの手段が)人脈に頼っています。分野のダイバーシティを考慮した大きな視野でターゲットが示されて、その課題解決と自分の研究がリンクされれば嬉しいですね。
阿部:ぜひ社会科学と融合して、分野のダイバーシティを実現できればいいですね。社会科学には課題を見つけることに詳しい研究者がたくさんいますので、自然科学が解決方法の部分を担ってもらえるとうまくいくのではないでしょうか。

仕組み作りに重要な目的・環境・体制

赤井:ただ女性研究者のネットワークをつくるのではなく、目的、テーマの共有が重要ですね。
荒瀬:みんなで意識してなんとかしましょうとか、個人の努力に期待するのではなくて、変わるような仕組みが作れたらよいと思います。
:同感です。きっかけ、飛躍する仕掛けが必要。そのような考えを作っていきたいですね。
矢尾:最近小学生のあこがれの職業のランキングに研究者が入っていますが、実際に研究の道に進む学生はまだ少ない状況です。大学や研究機関はよりよい環境を作る、研究者の側は成果を出していくことが大切です。
田所:SDGsの目標のほとんどは、発展途上国や、女性などのマイノリティが輝く社会を作ることです。その一端である女性も自分から前に出て参加していくこと、組織ではその意見を吸い上げる体制を作ることが重要と考えます。
阿部:今日のような機会も、異分野のつながりや女性研究者・科学者というつながりの一つのきっかけになればいいですね。みなさんありがとうございました。