レポート

オランダ王立芸術科学アカデミー(KNAW)訪問

日時:2018年10月16日(火) 13:00-17:00
場所:オランダ王立芸術科学アカデミー アムステルダム
対応者:Dr. Erik Van de Linde, Director International Affairs, KNAW
訪問者:渡辺副理事

議論内容と入手情報:

  • オランダ王立芸術科学アカデミーは英語で” Royal Netherlands Academy of Arts and Sciences”と言うが、オランダ語では” Koninklijke Nederlandse Akademie van Wetenschappen(KNAW)”と言う。
  • KNAWは200年前にでき、この時建てられた木造の建物を現在も使用している。内装を現在改修していて、来年12月に完成予定。歴史的絵画による部屋と、木造の新しい部屋の両方が混在している。
  • 会員は500名で終身制、毎年20-30人が新たに会員として任命される。高齢の会員は活動が活発ではなく若手が活発に活動するので、高齢の弊害はあまりないとのこと。
  • 会長が最近変わったので現在は移行期間にある。任期は2年で、その前に副会長(1名)を2年経験してから会長になるのが通例。今の会長は男性のWim van Saarloos (Professor of Theoretical Physics at Leiden University)で今年6月に就任し、副会長経験はない。今年5月までの会長は女性のJosé van Dijck (Professor of Comparative Media Studies and former dean of the University of Amsterdam)で3年間会長を務めた。現在の副会長は女性のIneke Sluiter (Professor of Greek Language and Literature at Leiden University) で、女性と男性が交代で会長になるよう選出されている。会長は週3日勤務、副会長は週1日勤務となっている。
  • 組織としては、4つの部からなり、人文学、社会科学、自然科学(生命科学を含む)、工学という構成で、それぞれに部長とアドバイザーがいる。
  • 予算は年150百万Euro(200億円相当)で、60%が政府から、40%が自己収入。自己収入はアカデミーが持っている15の研究所(ICTやFinanceなど)の収入で、欧州委員会などからの研究費が中心である。企業からの研究費もあるが、これには賛否両論があり、あまり活発に企業からの収入は得ないようにしている。
  • 毎年8つのアドバイスレポートを政府に提出。この内4つは政府からの審議依頼を受けて作成し、残り4つは自主的な取り組みの成果である。本アカデミーの位置づけは政策のための科学(政策提言)と、科学のための政策(科学政策)のちょうど中間に位置している。
  • 若手アカデミー(25-45歳)はとても活発で、50人の構成。ここから提言が出てくる。これ以外に芸術部門(50人)がある。また、前述の通り、研究機関(場所はKNAWと別)を持っている。
  • 本アカデミーから出る意見は、必ずしも統一されたものではない。異なる意見が出る場合もあるが、事実は1つとして出す。意見は個人名をつけて出す。
  • SDGsについては、積極的には関与していない。その理由は、SDGsが政治寄りで17の目標は多すぎるなど全面的には賛同できないため。環境問題など、科学として貢献できるものを選んで関わるようにしている。特にマイクロプラスチックの問題に積極的に取り組み始めた。
  • 欧州を中心に、アカデミー連合の組織が多すぎるという問題意識を持っている。ICSU(International Council for Science)とISSC(International Social Science Council)がISC(International Science Council)に統合されたのはとてもよいことで、これからISCがIAP(InterAcademy Partnership)などとの連携を進め、もっと多くの組織の統合を進めることを期待している。多くの組織がありすぎると、社会から科学者が信用されなくなる。社会の人にわかりやすくするためにも、組織の統合を進めてわかりやすくすることが重要という考えを持っている。そのためにも、バイラテラルで会議をするのが重要と考えている。