レポート

ジェンダーサミット12(Gender Summit 12 Latin America 2017)参加レポート

日時:2017年12月6日(水)~7日(木) 場所:サンティアゴ、チリ
参加者:ダイバーシティ推進室 川端、渡辺

チリ・サンティアゴにて第12回となるジェンダーサミット(Gender Summit 12)が開催されました。2016年にメキシコで開かれた第8回に続き、中南米で行われる第2回目のジェンダーサミットとなりました。
チリ科学技術研究委員会(CONICYT:Comisión Nacional de Investigación Científica y Tecnológica)の主催により国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC:Economic Commission for Latin America and the Caribbean)本部で開催された今回のサミットには、チリ大統領のミシェル・バチェレ氏が出席し「いかなる国においてもジェンダー平等の実現が国の発展に必須だ。」との力強い開会スピーチをされました。

サミットには中南米を中心とした大学、民間企業、公的研究機関、政府機関に加え、国連、ユネスコ、米州開発銀行などの国際機関から約400人が参加し、ジェンダー平等の実現、ジェンダーバイアス(性別に関する無意識な固定観念)の排除、ジェンダードイノベーション(性差を考慮した真のイノベーション創出)の推進などに向けた取り組みや課題が話し合われました。

JST渡辺美代子副理事・ダイバーシティ推進室長は2017年5月東京で開催したジェンダーサミット10の成果物である「Tokyo Recommendation」を紹介すると共に、日本人女性のSTEM分野(科学・技術・工学・数学分野)での活躍状況と諸課題を述べました。また、第4次産業革命における男女の役割のあり方にも言及し、今日の産業界に求められているものは、かつての肉体労働から頭脳労働にシフトしてきているものの、第4次産業革命では女性の参画がむしろ後退している現状について問題提起しました。

その他の登壇者からは次のような発表がありました。

  • ジェンダー平等を実現させるためには「柔軟性」が必要。特に男性達が持っている無意識な偏見、固定観念に気づき、変化や多様化に柔軟に、寛容になる事が鍵となるであろう。
  • 医学と工学を融合した「生体医工学:Biomedical Engineering」が重要視されている。動植物や自然現象からヒントを得、工学に活かす「生物模倣:Biomimetics」、または義足や義手の研究開発、センサーを内蔵した衣服、介護ロボット、外科手術支援ロボットの開発など、工学的な技術を生体に適用する手法も急速に発達している。つまり今日において医学・生物学と工学を切り離す事はもはや不可能に近い。しかしながら研究開発現場では未だに生物特有の性差が十分に考慮されていない。この原因の一つは、研究者の大半が男性で占められている現状にあると思われる。
  • (他の先進諸国同様)中南米においてもLeaky pipeline現象(学部生、大学院生から徐々にキャリアパスを経ていくとともに女性が減っていく現象)が見られ、また、医学、教育学、社会学、法学分野等で女性学生/研究者率が高く、工学や基礎科学分野における女性率の低さが見られる。
  • 昨今の気候変動は中南米の農業に甚大な影響をもたらしている。農業に従事する女性、農地を保有管理する女性は限られているため、不作による食糧不足は女性により大きな悪影響を及ぼす。一般的に社会問題が生じると、不利益を受けるのは常に不利な立場にいる人々、つまり女性なのだ。
  • アカデミアのみならず産業界におけるジェンダー平等の実現が成されない限り、真の第4次産業革命は成し得ないであろう。

中南米の中でチリは比較的ジェンダーバランスのとれた国と言われています。しかしながらこの国でもわが国と似た課題に日々直面し、試行錯誤しつつも積極的に課題解決に取り組んでいる様子がうかがえました。

ジェンダーサミットの開催国が徐々に拡大していくにつれ、より多くの国・地域における課題や取り組みを知る機会が増えています。引き続き情報収集、意見交換を行い、JST事業に反映させる事によよって、科学技術・イノベーションにおけるジェンダー平等の改善を進めると共に、国際ネットワークを活用して日本の発展に貢献出来ることを目指しています。