レポート

日米フォーラム 女性参画拡大を科学する 開催レポート 2015年11月 サイエンスアゴラ

 11月13日(金)、サイエンスアゴラにおける一企画として、米国国立科学財団(NSF)と共同で「女性参画拡大を科学する ~科学技術における多様な人材の参加~」をテーマとするフォーラムを日本科学未来館にて開催しました。

 女性の活躍が期待されていますが、科学技術の分野では女性の活用が未だ十分に進んでいないのが実情です。フォーラムでは、研究開発において女性の参画を如何にして拡大し得るかについて、米国からジェンダー研究の専門家を招いて多様な立場からエビデンスをもとに講演(前半)およびパネルディスカッション(後半)を行いました。

女性参画拡大を科学する ~科学技術における多様な人材の参加~

開催日
11月13日(金)10:30~13:00
主 催
科学技術振興機構(JST)、米国国立科学財団(NSF)
会 場
日本科学未来館 7階 未来館ホール
当日
シェリル・カイザー ワシントン大学心理学准教授
チャッド・フォーブズ デラウェア大学社会心理学助教
青木 玲子 九州大学 理事・副学長(国際、知的財産、男女共同参画担当)
大野 由夏 北海道大学経済学部教授
高橋 修一郎 株式会社リバネス代表取締役社長 COO
矢尾 育子 浜松医科大学 メディカルフォトニクス研究センター准教授
渡辺 美代子 JST副理事(ダイバーシティ推進室長)
当日プログラム

 登壇した各氏からは、自らの実験・分析結果にもとづきダイバーシティ推進の取組が却ってジェンダーバイアス(女性はかくあるべきという意識的・無意識的な決めつけや偏見)を生み出している、これらバイアスや「ステレオタイプの脅威」(女性に対する社会の否定的な固定観念が自身もそうであると思い込ませてしまうリスク)は高校生の段階で既に形成されている、等の興味深い発表がありました。初中等教育の段階からこのような固定観念を抱かせないための取組みが必要との指摘は注目に値します。また、各方面でダイバーシティを進めるための女性優遇制度が検討されていますが、この制度によって抜擢された者は「分不相応」と見なされるとの指摘もありました。一方、ダイバーシティ推進、男女共同参画のメリットとして、経済学的視点からその有効性を論ずる発表もあり、いずれも示唆に富むものでした。

登壇者写真
登壇したカイザー・ワシントン大学准教授、フォーブス・デラウェア大学助教、
青木・九州大学理事、渡辺・JST副理事

 後半のパネルディスカッションでは、会場から多くの質問やコメントがありました。「理工系、なかんずく工学部への女性進学率を増やすには」という問いに対して、パネリストから「父親の影響」の大きさが示唆されました。また、ステレオタイプの形成に関して、例えばものづくりにつながり得るプラモデルは「男の子の玩具」といった思い込みの存在にも気づかされました。さらに「民間企業にて女性登用を促すには経営陣に対してそのメリットを提示することが重要」、「ダイバーシティ推進としてジェンダー平等の問題ばかりを扱うのではなく他の要素も対象に」等の指摘もあり、どれも今後の取組みに反映すべきものです。

パネル・ファシリテイターの大野・北海道大学教授とパネリストの皆さん
パネル・ファシリテイターの大野・北海道大学教授とパネリストの皆さん
(左から矢尾・浜松医科大准教授、高橋・リバネス社長、フォーブス・デラウェア大学助教、カイザー・ワシントン大学准教授

 なお、今回のフォーラムには130名余りの出席がありました。アンケートから、多くの方からテーマ、内容ともに肯定的な評価をいただきました。特に、米国の2人の講演は実証心理学や脳科学に基づくもので、その視点の新しさは多くの方から支持されています。今回の趣向のイベントに対する期待も高く、本フォーラムにて提示された課題等を踏まえ、今後の企画に役立てていきたいと思います。

前半の講演映像はこちらでご覧いただけます。