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吉川弘之対談シリーズ

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吉川弘之対談シリーズ「科学コミュニケーションを考える」全8回
科学コミュニケーションとは何か。何を拠り所にして、誰に対して行っていけばよいのか。吉川弘之さん(科学技術振興機構特別顧問、東京大学元総長)が聞き役を務めた本対談シリーズでは、最前線で活躍する研究者・教育者8名が、現代の科学と社会を自らの視点で捉え、語りました。
(本対談は、2016年1月~12月に行われました)

※本対談シリーズは、2017年3月に書籍にまとまりました。
 書籍名:科学と社会の対話-研究最前線で活躍する8人と考える
 発行:丸善出版株式会社 ※3月下旬より全国の書店等で販売

※このホームページでは、当センター長がご案内する内容紹介文のみを掲載しています。

第4回
ゲスト:喜連川 優さん(計算機科学者、国立情報学研究所所長、東京大学生産技術研究所教授)

対談内容のご紹介

 第5回は、情報学がご専門の喜連川優さんと吉川弘之さんとの対談です。ビッグデータ、人工知能、IoT、ソサイエティ5.0などの言葉に代表されるように、これからの社会基盤の全てのインフラやシステムに、情報通信技術が大きな影響を与えます。科学コミュニケーションの観点ではこの状況をどのように捉えるべきか、議論がなされました。
 情報通信を歴史的に見ると、昔は電話に代表されるように「一人が一人に伝える」こと自体に価値がありましたが、テレビの出現で「一人が多数に伝える」ことが可能になり、インターネットの発達により60億人が60億人と会話できる世界に変わりました。現在は、各人が膨大な情報を浴びせられ、常に受け取るべき情報は何かを取捨選択せざるを得ないと捉えることもできます。さらに、Facebookに代表されるソーシャルメディアは、個人の興味関心に沿った快適な対話空間を生み出しましたが、ネット上にはもはや、昔の茶室のように人間の普遍性をじっくり考える場はありません。氾濫する情報の中で他者との違いを見いだすことに走る人間は弱い存在であると、お二人は指摘します。
 一方、ビッグデータの多様な利用が精力的に進められている中で、世界中の人々の挙動に関する情報が集約されるビッグデータから、他者の考え方や感じ方、変化する社会の様態が少しずつではあるものの可観測になりつつあると喜連川さんは話します。そんなデータを使えば、「物事を知りたい」という動機や、個人がより合理的に判断するためのヒントを与えられるかもしれません。
 さらに、従来のコミュニケーションは言語が中心でしたが、これからは言語に加えて、データが手段となり得るという指摘もなされました。物理学に代表される従来の近代科学は、個々の事例を集合化し、単純で安定した系を見出し法則化するものでした。しかし、時間と共に変化する社会の複雑な系は、従来の科学の方法では扱いきれません。変化を中心に考える新しい科学が必要であり、それがデータによる科学ではないかという説です。データが科学コミュニケーションの質を変える時代に来ているというお話は、これからの科学を考えるための重要な示唆を与えてくれます。

[渡辺 美代子]

対談日:平成28年6月21日