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吉川弘之対談シリーズ

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吉川弘之対談シリーズ「科学コミュニケーションを考える」全8回
科学コミュニケーションとは何か。何を拠り所にして、誰に対して行っていけばよいのか。吉川弘之さん(科学技術振興機構特別顧問、東京大学元総長)が聞き役を務めた本対談シリーズでは、最前線で活躍する研究者・教育者8名が、現代の科学と社会を自らの視点で捉え、語りました。
(本対談は、2016年1月~12月に行われました)

※本対談シリーズは、2017年3月に書籍にまとまりました。
 書籍名:科学と社会の対話-研究最前線で活躍する8人と考える
 発行:丸善出版株式会社 ※3月下旬より全国の書店等で販売

※このホームページでは、当センター長がご案内する内容紹介文のみを掲載しています。

第2回
ゲスト: 三島 良直さん(東京工業大学 学長)

対談内容のご紹介

 第2回となる今回の対談は、東京工業大学 学長の三島良直さんをゲストにお招きし、「大学改革で実践する新しいコミュニケーション」をテーマに、吉川弘之さんと議論いただきました。コミュニケーションは言葉だけの問題ではなく、特に聞き手の動機が大きく影響するという一致した見解をもとに、各々の教育者としての経験を交えた熱意あるお話がなされました。
 時代とともに変わる学生の気質や社会状況を踏まえて、大学の教育と研究も変わるべきですが、東京工業大学はこの春から抜本的な教育改革を開始しました。三島さんは、大学改革で最も重要なことの1つは学生と教員の間のコミュニケーションであるとして、教員は学生が自ら考え自ら意見を持つことを求め、学生の内面的動機づけのための科学技術教育を進めることが必要と強調しました。そのための事例として、自らの意見を持って相手の話を聞き、自分の意見を修正することを積み重ねるリベラルアーツ教育を初年次の必修科目に据えた、カリキュラム改訂の実践例を紹介しました。
 学ぶ意欲の源となる社会的動機づけを得るのが難しく、個人の動機づけが中心となってしまっている現代においては、教員でさえ研究費獲得や論文競争、研究評価で疲弊し、学生たちにとって気概に満ちた環境は作りにくい状況にあります。だからこそ、大学は社会の中の一群であり、研究室はその1つであり、大きな社会システムの一部であることを認識して役割意識を生み出す必要性があると、お二人は指摘します。他の人たちと組むことで強くなるという意識を教員が持ち、留学経験によって多様な文化を体験することで、学生にも社会的動機が生まれることが期待されます。さらにお二人は、これまでの産学連携は研究を中心になされてきましたが、教育にも産業界の知を入れることで学生の好奇心を刺激し、両者の挑戦と努力、対話の積み重ねによって社会の中の役割意識が生み出されるだろうと語ります。
 人間を変えることができるのは教育です。学生が自ら学ぶ動機を見出し、他者とコミュニケーションする教育こそが、日本の教育全体に波紋をもたらし、大学改革と社会にとっての大きな力になる、そのことを期待させる対談です。

[渡辺 美代子]