さきがけ 研究者

研究課題名

マグネシウムイオンを用いた電気化学デバイス創成のための電極/電解質界面設計

プロフィール

松井 雅樹
松井 雅樹
Masaki Matsui

1976年 京都府生まれ。2001年 京都大学大学院工学研究科 修士課程修了、2008年 首都大学東京大学院都市環境化学研究科 博士後期課程修了、博士(工学)。2001年 トヨタ自動車(株)第3材料技術部、2008年 Toyota Research Institute of North America, Materials ResearchDepartment, Manager、2012年 三重大学大学院工学研究科分子素材工学専攻 特任准教授、2015年 同准教授、2016年 神戸大学大学院工学研究科 准教授、現在に至る。
研究分野:二次電池材料の固体化学/電気化学
趣味:ギター演奏(Hard Rock/Heavy Metal)、写真撮影(風景、人物)

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

エネルギー問題や資源問題から、次世代蓄電池技術の重要性が高まってきています。現在、携帯電話等の小型電子機器に搭載されているリチウムイオン電池は、高いエネルギー密度と優れたサイクル特性を示す一方で、そのエネルギー密度は理論的な限界に近く、更なるエネルギー密度の向上には、リチウムイオン電池とは異なるメカニズムで作動する蓄電池の開発が必須であると言われています。なかでも、二価のイオンであるマグネシウムをキャリアとして用いる二次電池は、イオン1個あたりの電荷量が増え、電池の高容量化が期待できるため、近年注目を集めています。しかしながら、これまでに報告されているマグネシウム二次電池は、電圧・容量ともに低く、リチウムイオン電池の約5分の1程度のエネルギー密度しか達成できていません。これは、正極活物質そのものの特性以外に、マグネシウム金属負極と組み合わせ可能な電解液が容易に酸化分解されるために、高電位で作動する正極活物質を用いることができないということに原因があります。一方、高電圧で使用可能な耐酸化性の高い電解液は、マグネシウム金属表面において還元分解し、不動態皮膜を形成するために、可逆なマグネシウム金属の溶解析出反応を阻害するというジレンマが存在します。
 そこで重要となるのが、マグネシウム金属と電解液との界面設計です。リチウム金属負極の場合、電解液の還元分解によって、SolidElectrolyte Interphase(SEI)と呼ばれるリチウムイオン導電性の被膜が自発的に形成され、リチウム金属の可逆な溶解析出を実現しています。しかしながら、マグネシウムの場合は電解液の還元分解生成物が、マグネシウムイオン導電性を持っていません。従って、マグネシウム金属負極表面に、あらかじめマグネシウムイオン導電性を持つSEIを人工的に形成しておく必要があります。
 この研究プロジェクトでは、この人工SEIの形成について、材料設計・合成からのアプローチ、および結晶構造解析やその場分光測定による解析的なアプローチの両面から取り組み、(1) マグネシウムイオン導電性を持つ材料の探索、(2) マグネシウムイオン導電メカニズムの解析を行い、(3) 得られたマグネシウムイオン導電体を用いて、マグネシウム金属負極表面への人工的なSEI形成し、耐酸化性の高い電解液中での可逆なマグネシウム溶解析出を実現します。また、この人工的なSEIを形成したマグネシウム金属負極を用いて、(4) 世界初の4V級マグネシウム二次電池の創成を目指します。

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