さきがけ 研究者

研究課題名

第一原理統計力学による太陽電池・光触媒界面の動作環境下電荷移動・励起過程の解明

プロフィール

館山 佳尚
館山 佳尚
Yoshitaka Tateyama

1970年 青森市生まれ。1998年 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。科学技術庁金属材料技術研究所、物質・材料研究機構[NIMS]、ケンブリッジ大学(客員)、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点[WPI-MANA]、JSTさきがけ(兼任)などを経て、2011年よりNIMS WPI-MANAナノシステム計算科学グループリーダー。酸化還元反応・固液界面反応の第一原理計算技術の開発とそれを用いたエネルギー・環境問題への貢献に取り組んでいる。趣味は映画鑑賞。
URL:http://www.nims.go.jp/group/nscs/

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

館山 佳尚

物質・材料科学的観点からエネルギー・環境問題の解決を目指す上で、電池・触媒の高機能化はもっとも重要なターゲットです。これまでの多くの開発・改良研究により様々な電池・触媒が実用化されてきましたが、一方でその電子・原子スケールでの反応メカニズムはまだよく分かっていないのが実状です。漸増する効率向上にブレークスルーをもたらすためには、電池・触媒の主要反応場である固液界面の電荷移動(酸化還元)・光励起過程に対して微視的理解に基づいた斬新なコンセプトの提案が必要だと考えられます。
 本研究課題では、密度汎関数理論(DFT)レベルの電子状態計算と統計サンプリング手法を様々な形で組み合わせた、いわば「第一原理統計力学」計算技術を構築・利用することにより、いまだ不明な点の多い動作環境(室温・常圧)下における固液界面化学反応の微視的メカニズムを明らかにすることを第一の目標とします。具体的には色素増感太陽電池(DSSC)、光触媒(PC)に加えてリチウムイオン電池(LIB)を主要ターゲットに設定し、"動的でかつ埋もれた"電極界面でどのような反応機構が支配しているのか、効率・耐久性向上に向けてどのような構造・システムが必要かという問題に取り組んで行きます。実際DSSCやPCの解析では、エネルギー変換・反応効率決定の主要因であるTiO2電極-溶液界面の酸化還元過程(ラジカル生成、分子分解等)の電子・原子スケール描像(図1)が次第に分かってきました。またLIBに関しては電極付近における様々な電解液の還元分解メカニズムが明らかになりつつあります。これらの研究をさらに推し進め、包括的理解を目指します。
 さらに、酸化還元電位に基づく界面エネルギー変換の学理構築にも取り組みます。変換・反応効率は、反応・生成物の酸化還元電位、固液界面の電子準位・電気二重層・過電圧等の様々な要因によって支配されます。これらの物理量をMarcus理論・Blue-moon sampling等の統計力学手法とDFTを組み合わせて高精度自由エネルギー解析を行い、その微視的描像をクリアにして行きます。最終的には様々な半導体・酸化物電極―水溶液・非水電解液における固液界面エネルギー変換の一般的描像を抽出し、それを土台として新しいコンセプトの界面エネルギー変換機構を探索して行きたいと考えています。

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