さきがけ 研究者

研究課題名

超低電力マグノンデバイスの基盤技術創出

プロフィール

関口 康爾
関口 康爾
Koji Sekiguchi

神奈川県厚木市出身。関八州の展望台といわれる大山(阿夫利山)を仰ぎ見ながら育ちました。高校校歌にある「高きに憧れ、ながきを慕う」をモットーに、物理学の研究生活に入り、磁性物理学・スピントロニクスを研究分野としています。
夢はナノスケールかつ超強力"永久"磁石を開発すること。
趣味はお酒と読書、特に山本周五郎作品を愛読します。

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

本研究では、光・熱・電磁信号からスピン信号への高効率エネルギー変換機能および新規スピン機能界面を創出します。半導体ICの微細加工限界・熱限界を突破し、革新的機能を創生するには、Joule発熱損が極小であるスピン信号、熱流をも利用できるスピン信号の活用が必須です。スピン信号は強磁性/非磁性界面におけるキャリア変換に支配され、これまで電子スピンへの変換が試みられてきました。しかし、現在でも変換効率が極めて小さく、スピントロニクス研究の爆発的成長に至っていません。そこで本研究では、これまで注目されていなかった、界面を超高速で伝搬する表面マグノンに着目し、全く新しい概念である超低電力マグノンデバイスの基盤技術を創出します。
 これまでの研究において、電磁エネルギーから生成された表面マグノンの実時間電気イメージング方法を確立したことによって、表面マグノンは図1に示すように理想的なGauss型シグナルを形成していることが明らかになりました。伝搬速度が13km/s、減衰距離は15μmであり、表面によって励起振幅が変わるというユニークな特徴(非相反性)を有しています。さらにマグノンに対して電流注入を行うと、その伝搬速度・振幅が増減できることが明らかとなりました。これらの性質は高速信号輸送・低エネルギー損失を備えた能動素子原理の可能性を意味します。このマグノンの高効率生成・伝搬損失低減・および機能創成が挑戦目標です。
 表面マグノンは磁性材料表面に励起され、その生成効率・伝搬特性などは表面電子状態に強く依存します。そこで磁性体を組み込んだ積層ナノ構造を作製して、表面電子状態を"界面電子状態"として自在に変調する技術を研究します。半導体ICの高度積層ナノ構造化技術を活用することで、高効率のマグノン変換の実現が期待でき、CMOS補償型素子の基盤技術へと発展が望めます(図2)。表面マグノンは熱エネルギーによっても、光エネルギーによっても生成されます。したがって、電磁エネルギーによるマグノン変換・輸送過程を解明する本研究は、原理的に光・熱エネルギーシステムへの応用が可能です。半導体集積回路における熱流の活用、光電素子の活用を探索し、新規スピン機能(スピン信号輸送・演算)の基盤技術創出を目指します。

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