さきがけ 研究者

研究課題名

高圧水電解三相界面における限界物質輸送の実験的探究

プロフィール

伊藤 衡平
伊藤 衡平
Kohei Ito

■福岡(博多)で生まれ育つ。日本語、英語ともに苦手であるが博多弁は堪能。
■九大、東工大、豊橋技科大そして九大に戻る。この間熱工学、放電化学、電気化学を基礎とするシステム、計測・観察に関わる研究に従事。
■好きな映画、本、歌は、ニューシネマパラダイス、彼の生き方、ローズ。意外とロマンチスト。
■趣味はビールをおいしく飲むためのテニス。絵を描くこと。授業中、黒板に描くポンチ絵は分かりやすいと学生に好評!?

*プロフィールは終了時点のもの


研究内容紹介

水素エネルギーは低炭素社会の「一」の担い手となりますが、二次エネルギーであるが故、水素エネルギーすなわち水素ガスの効率的な製造が必須となります。種々の水素製造法のなかで、将来的には、再生可能エネルギー起源の電力による水電解が水素ガス製造の主流になると考えられます。更に、エネルギー密度の観点から言えば、単なる水素ガス製造では不十分で、40MPaなど高圧の水素ガスの製造が必須となります。従って「常圧の水から高圧水素ガスの製造」までがいわゆる水素製造の範疇となります。高圧水素製造プロセスとして、固体高分子形水電解(SPWE)を共通の要素にして、二つの経路が考えられます。常圧の水を電解して水素ガスを生成し、これを圧縮機で昇圧する方法。他方は常圧の水をポンプで昇圧し、高圧下で水電解して直接高圧水素ガスを製造する方法です。熱力学的には必要となる動力は両者同じですが、高圧水電解の経路が実質的に有利です。高圧水電解の経路では保守性などに課題を残す圧縮機が不要で、ガス乾燥に要するエネルギーが小さく、一方で常圧水電解の経路では圧縮機を必要とし、ガス乾燥コストが相対的に大きくなります。このように高圧水電解の経路が優れると理解できますが、高圧であるが故発生するガスの透過の問題が指摘されています。透過の問題とは、生成した高圧水素ガスが高分子電解質膜(PEM)を透過して無駄となる問題です。条件にもよりますが、電流効率相当でガス透過分が10%にも達します。ガス透過を抑制するには、水素ガス気泡がカソード極から速やかに離脱することが必要です。更には、実用化を睨んだSPWEの高電流密度運転に対応するために、IR過電圧や濃度過電圧を一層低減する必要もあります。IR過電圧の低減は高分子電解質膜の薄膜化、濃度過電圧の低減は酸素ガス気泡のアノード極からの離脱促進が有効です。以上問題をまとめますと、薄膜化の進むPEMへのガス透過の抑制には水素ガス気泡のカソード極からの離脱促進、濃度過電圧の低減には酸素ガス気泡のアノード極からの離脱促進が有効です。ガス気泡の電極からの離脱促進が共通の課題であることが分かります。この課題に対し、先ず、ガス気泡の起点となる電極、すなわち「ガス気泡」、「ガス排出などの目的で流される水」、「触媒層を構成する白金などの固体」から構成される三相界面に着目しました。三相界面からガス気泡を速やかに離脱させることができれば、透過流量は低減して電流効率が向上し、濃度過電圧が低減して電圧効率が向上します。「三相界面からのガス気泡の離脱を促進する」ためには三つの効果が活用可能です。すなわち(1)対流効果、(2)ぬれ性効果、(3)浮力効果、です。以上の着想のもと本研究では「対流」「ぬれ性」「浮力」の三つの効果を実験的に調査し、これらの効果導入に伴うポンプ動力増大などのトレードオフも考慮しながら、ガス離脱促進の視点から高圧水電解装置の設計、運転指針を確立します。具体的には三相界面近傍を可視化できる高圧水電解セルを設計、製作、運転し、ガス気泡を可視化観察し、透過流量、過電圧を計測して三つの効果を個々に検証、定量化し、高圧水電解の設計・運転の最適点を抽出します。

投稿記事一覧

学会発表・招待講演

2014/11/19
[学会・講演] 伊藤 衡平 教授(九州大学 大学院工学研究院)【さきがけ】
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