73. ハードとソフト

ハードとソフトの関係は車の両輪に例えられたり、ハード、ソフトなければただの箱などと言われたりしていてこういった認識は頭ではみなわかっているつもりになっている。そしてハードとソフトの関係はパソコンの世界でもっとも顕著に相互依存性が明示的であるが、ハードとソフトの関係は広く捕らえて両者のバランスを取ることの重要性を示しているのだと、機会あるごとに正していくことが肝要に思う。

それにしてもひどい話はJR西日本の福知山線で起きた大惨事から伝えられてくるニュースだ。
関係者は怒りを通り越してなぜこんな目にあわなければならないかわからず無力感にさいなまれていることだろうと思う。今でも原因の特定に慎重な分析、議論が専門家の間でなされているぐらい重たいことなのに、JRは置石(私どもも被害者ですといわんばかりの口調)説をテレビで責任者が発言、社長にいたっては被災者の方々にはと日本語が使えていない。
あの事故で犠牲になられた方の中には、10年前に襲った阪神淡路大震災で難を逃れた被災者もおられたが、今回は被災ではない。その後明らかにされるJR西日本の対応をみると事故を超えて殺人事件といえなくも無いくらいなのである。

記憶が定かではないが、安全の取り組みで言われる「ヒヤリ、はっとの法則」は、経験的(統計的に)に安全を脅かす事象は、おきる頻度において1対30対300の関係にあって、大事故(1)がおきるにはその前段階で気がつき(300の例で、手を打つのが難しいとしても、大事故は未然に防止するには、30のケースでは何らかの対策を講じないといけないのである)組織的に徹底した改善が図られるべきであることを示すものである。今回の事故だけでこんなことを言っていいかどうかはあるし、人命を預かる職業と必ずしもそこまではいえないといった職業との差もあるが郵政の民営化が理想的な運営に繋がるといえないようなJR(日本国有鉄道から分割民営化されて久しい)の(少なくともJR西日本の)体質露呈である。

事故を起こしたダイヤにのって出勤中のJR社員はそのまま出勤していたとか、事故の惨状が刻々と明かされる当日の夜ボーリング大会をそのまま実施、3次会にまで繰り出したといったニュースはどのように受け止めたらいいのだろうか。
せめて自動制御の設備強化はハード面から安全レベルを高めるためにやるとしても、望ましいサービスを提供していくソフト面を担うJRマンが誇りを持って日々全力で勤めていける環境を早急に整備しなければならない。もちろんすべての人が大局的に判断して善行以外はいたしませんという社会であろうはずは無い。
鉄道を走らせる上で、カーブを減らすための土地買収に決して応じなかった人たちもいただろう。新幹線や山手線は線路そのものが安全運転のセンサーになっているというが、それをすべての線路に適用なんて出来ないことも、経営が成り立たないといけないことからわからないでもない。


ヒヤリ・はっとの法則が生かされていない鉄道運営であったということが露呈するに及んでは、信頼回復は容易でない。しかし暮らしのインフラとして欠かせない事業である。まともな人たちでまともな運営に一刻も早くもっていって欲しいと切実に思っている。新潟の地震では神戸の震災の経験が生かされたと聞く。今回の事故でも住民パワーが犠牲者を少しでも少なくなるよう、数字には現れない救助活動に当たったと聞く。人は本来は善なのである。

                              篠原 紘一(2005.5.6)

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