6. 「これからは?」


 平成14年度の戦略的創造研究の公募がスタートした。ナノテクノロジー関連は10の領域を設定して、国の戦略目標に向かうインパクトのある提案を期待して、各地区での説明会が進められている。一年前と比べてナノテクノロジーの露出度はさらに高まってきているし、製造業の復権の切り札としてナノテクノロジーを重点取り組みとするとの企業トップの発言も多い。が、それで一安心といえるほどナノテクノロジーの取り組みが戦略的に進んでいるとも言いがたい。
ナノテクノロジーに限らず、昨年度までの戦略的基礎研究推進事業に応募された研究代表者の所属が民間企業であった例は極めてまれといえるというのが統計的認識である。今年はどうであろうか?

ナノテクノロジーが将来の産業の基盤技術になるとの認識を強く産業界が持つなら、民間の研究者が研究代表者になっての提案が増えてもいいのではないか。
なんといっても、ナノテクノロジーのどこに切り込むか、何をやるかがもっとも重要であるが、中国も韓国も、ナノテクノロジーに熱心である。ナノテクノロジーで日本がアヘッドできる保証なんて何も無いと思ったほうがいいのでは。だからこそ、製造としての本質部分の競争力を強め、合法的に後発からの切り崩しを特許でガードするグランドデザインはむしろ今、小手先に活路を見出しえない、民間企業が描くだけの気力を持って欲しいと祈りに近い願いを抱いているのは私だけでは無いだろう。一年、二年で簡単に方向転換できることでは無いかもしれないが、基礎研究と応用研究、実用化研究をそれぞれがまったく別物というにはナノサイエンスではなく、ナノテクノロジーをとりあげていくのであるから、リアリティーを構成チームの全員が理解しての、共動(造語であるが意味合いはご理解いただけるのでは)研究課題の提案がなされてもいいのでは。


もちろん基本的には役割分担もあろう。が競争は条件が一定だとか、ルールの中でとか言うことではないのであるから、アメリカのプロパテント政策に辟易としている、企業の、何くその反発力を、戦略的創造研究の推進力の軸においた提案が、審査の過程でも議論を呼ぶような場面を思い描いている。税の配慮も重要であろうが、根っこの競争力を強める以外に道はない。科学技術立国で生きる以外に選択肢が無いくらいに、いろんな側面で国際評価が落ちてる日本の状況を変えられる場に居る人たちの奮起が、今年度の提案の中に見いだせたらと期待している。


                                                篠原 紘一 (2002.7.16)

                        HOME   2002年コラム一覧  <<<>>>