5. 「大阪弁?」


 個人的なことであるが、群馬県で生まれ、関東で暮らしたほぼ倍の時間を大阪、神戸で過ごした。
親戚に下宿したときに、こんなことを言われた。
この辺では口では大阪の城も立つ、とか、口には税金はかからへんとかいって、調子のいいこと言う奴には気をつけるようにと。
今関東で仕事をするようになって擬似大阪人になってるなあと感じている。


もちろん大阪の人がすべて口から先に生まれてくるわけではないが大阪弁が持っている魔力のようなものがあるなあと経験的に思っている。
企業での開発が逆境におかれることは単純にうまくいってないからでなく成果が出ても順境とはいかず、マネジメントの価値観の周囲環境依存性によったりもする。そんな場面でも、個人的な資質もあるだろうとは思うけれど、大阪弁に救われた気がするのである。
はじめは今のように吉本興業が全国区でなかったので大阪弁にはなじみが無かったので奇異な感じがしたが、いわゆるきつい言葉が標準語比較でこたえ方がマイルドなのである。ポジテイブなケースでもより心にしみる言い回しが多いと感じている。
情報過多時代にあってますます大事になるであろう理解度を増す情報開示について少し考えてみたい。


ゲノム解読が予想を超えた速度で進み、ポストゲノムが語られるバイオ分野は、ナノテクノロジーが支えていくもっともビッグな分野だとの認識はその通りであろう。
その分野は、人類が踏み入る未踏の領域であり、科学技術の磐石の基盤が確立に向かうことがまずありきではあろうが、倫理の側面からのグローバルコンセンサス確立など奥深い問題をはらんでもいる。コンセンサスをつくっていくうえで、もっとも重要なことは情報操作をしないこと、透明性を保ってのいわゆる情報公開であろう。


情報公開で重要なことは専門家がわかりやすく、説いてくれることだと思う。
5年ほど前に民間企業で大きなプロジェクトを進めたときに、プロジェクトリーダーから遺伝子のスイッチのオン、オフということを伺った。一部上場会社の経営トップであったリーダーは従業員が元気を出して現場で仕事をしてもらう後押しをすることを重視されていて、心の健康に興味をお持ちになって、本を読んだり、医師と議論をされたりしてる中で、共鳴した言葉に、遺伝子のスイッチのオン、オフがあったのだそうである。この言葉は筑波大学の名誉教授の村上和雄さんが、サンマーク出版から出された、生命の暗号、生命の暗号(2)の二冊の本に詳しくとかれている。


生命の暗号(2)は2001年6月の初版で専門的にもアップデートされた内容を盛り込まれ、且つ判りやすくとかれていて、元気の出る表現がいくつもでてくる。
本の副題の“あなたの思いが遺伝子を変える”や“ヒトの遺伝子の暗号の配列の差はせいぜい0.1%しかなく、すべての人にすばらしい可能性が書き込まれている”など、など。

単なる精神論には抵抗感があっても、遺伝子のスイッチのオン、オフはやってみようという気にさせる。人が環境の影響を強く受けるのも遺伝子のスイッチで考えると理解しやすい気がする。
もう一度私事ですが、高校時代、赤城颪に送られて登校し、自転車を必至でこぎ続けないと進まない下校を3年間繰り返し、逆風に強くなったのだと分析しているがこれも遺伝子のスイッチのオン、オフが赤城颪と格闘しながら繰り返されていった結果だと考えると納得性が高まるのはたしかである。

ナノテクノロジーもマスコミへの露出度が急激に高まっているが、遺伝子のスイッチのオン、オフのようなわかりやすい説明がまだあらわれていないようにおもう。ナノテクって何と問われ、説明を始めるが、説明しながら、これではわからんかなあと思いつつ、頭を悩ませてる日々である。  


                                               篠原 紘一 (2002.7.12)


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