2017年12月
(ワークショップ報告書)科学技術未来戦略ワークショップ報告書 植物と微生物叢の相互作用の研究開発戦略 -理解・制御・応用に向けて-/CRDS-FY2017-WR-06
エグゼクティブサマリー

 国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発戦略センターは、国の科学技術イノベーション政策に関する調査、分析、提案を、中立的な立場で行い、わが国および人類社会の持続的発展のため、科学技術振興とイノベーション創出の先導役として、諸方策の提言および実現に向けた取り組みを行っている。 平成28 年度に、「(植物を宿主とした)生物叢相互作用の理解とシステム制御」に関する深掘り調査を実施し、検討を重ねた結果、わが国において推進すべき研究開発戦略の仮説の構築に至った。仮説の妥当性を検証しブラッシュアップするためのワークショップ(以下“WS”と表記する)を平成28 年12 月4 日(日)に開催した。本報告書は、WS における議論の概要について取りまとめたものである。WS において、植物を宿主とした生物叢相互作用に関するこれまでの研究動向、今後の研究開発の方向性、わが国が推進すべきテーマ、波及効果などについて議論を行った。得られた結果は次の通りである。

 近年、ヒトを宿主とした微生物叢(マイクロバイオータ、マイクロバイオーム)研究が、欧米およびわが国でも盛んになってきており、次第にヒト以外の宿主、特に一次生産者としての重要性から、植物を宿主とする微生物叢研究も活性化の機運がある。わが国は、植物を宿主とする微生物叢研究領域の推進にあたってコアとなる研究分野(植物科学、微生物学、天然物有機化学など)に大きな強みを有する。それらを含めた戦略的な研究開発を推進することで、世界をリードする成果の創出が可能である。植物と微生物叢の相互作用の包括的理解と制御基盤技術確立のための、具体的な研究開発課題として、次の4課題が重要と考えられた。

課題1:微生物叢の把握、分離、培養
課題2:植物−微生物叢相互作用因子の同定と機能解析
課題3:実圃場での計測に基づく評価と再設計
課題4:農業資材開発、作物生産・利活用への応用

 「課題1」においては、作物生産に有効な機能を持つ微生物叢を迅速かつ効率的に選抜し、分離・培養して確保する。「課題2」においては、これまでのわが国の基礎研究の強みを生かし、農作物生産に有効な機能を持つ微生物群の同定や、相互作用因子(化学物質)の発見を通して社会実装の礎をつくる。「課題3」では、植物と微生物叢の相互作用を、実際の農作物生産現場で制御するため、農作物栽培時に得られる多階層のデータを統合的に評価し、その場に最も適した生産法を再設計する基盤技術を開発する。「課題1~3」は基礎から応用へ進む一方向だけの研究開発ではなく、互いにフィードバックを行いながら循環的に推進する。「課題4」では、「課題1~3」を一気通貫するような先鋭的な研究開発を支援・拡大し、新たな農業資材開発や栽培マネジメント技術の創出など、新規の介入手法の開発と、社会実装の加速を目指す。これら研究開発の技術目標は、高収量、高ストレス耐性、耐病性・耐害虫性、高品質・高付加価値化、また低環境負荷、省コスト・省労力などである。これら研究開発の推進により、技術基盤が確立することで、わが国の持続的な農業生産基盤の維持(高収量と高品質・高付加価値化の両立)へ多大な貢献が可能である。また、世界の作物生産能力の維持・向上と低環境負荷を同時に実現でき、持続可能な食料生産およびバイオ由来の物質生産にも貢献可能である。

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