2016年9月
(ワークショップ報告書)「健康長寿社会日本」のためのバイオメカニクス研究/CRDS-FY2016-WR-04
エグゼクティブサマリー

 本報告書は科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が平成28年5月11日に開催したワークショップ(WS)「健康長寿社会日本のためのバイオメカニクス研究」に関するものである。

 世界に先駆けて「超高齢社会」に突入した我が国では、高齢者が日常生活動作を支障なく行うことができ、健康を維持していくことが強く望まれている。しかし、現在のところ、ロコモティブシンドロームに代表される運動機能の衰退から、寝たきり、要介護となる高齢者は増加の一途をたどっており、この問題を解決するための研究開発、その成果の早期社会実装が強く期待されている。一般に、健康の維持のためには、「身体を動かすこと」が重要なファクターであるが、積極的に運動を行い、身体作り、健康維持を行うという意識が高まっているものの、これを実施する者は少なく、我が国の生産性維持を考えた場合、国民全年代層が「身体を動かす」こと、例えばスポーツを楽しむことができるよう、様々な施策が必要となる。 JST-CRDSでは、こうした社会的問題の解決に向け、人間をはじめとする生物の運動機能を力学的に解析・解明し、疾患の治療、リハビリテーション、これらを支援するための各種デバイスや計測器の開発を行う複合領域である「バイオメカニクス」に着目して、平成27年度から検討を進めてきた(以下「本チーム」)。  本チームではこの問題の解決に向けて、当該分野の研究開発動向を俯瞰的に調査し、超高齢社会における運動機能の維持に役立つ研究開発課題等を抽出し、これらを組み合わせることによって、例えば、運動機能モニタリングにより得られたデータに医師やコーチの知見を加えて、ケガの予防・適切な運動技能の獲得を目指すクラウドシステムの構築などを実現するための科学技術戦略立案を目的としている。  これまでの有識者インタビューなどの活動を通じて、本システムを構成する要素技術である、「スポーツ医科学研究」「脳計測に基づく運動機能拡充」などについて、先端的な研究開発要素の抽出を行った。また、国内外のスポーツ医科学研究に関連したプロジェクト等を調査した。本チームでの提案は今後、国民個人の健康長寿の維持、我が国全体としての健康長寿社会形成の基盤となり得るツールの開発としてまとめていく予定である。

 本チームの調査・検討内容をより深化する活動の一環として、ワークショップを開催し、上記の先端科学技術、脳科学、スポーツ医科学を専門とする有識者より最先端の技術、研究開発、業界などの動向に関する発表と意見交換を行うこととした。本ワークショップでは、参加いただく有識者に事前にアンケートに回答いただき、超高齢化社会問題の解決に資する先端科学的シーズと将来的な研究テーマやそれを達成するための望ましいファンディング形式などについて意見を集約した。これらも踏まえて、今後の課題抽出・研究推進にあたって必要な方策、また本研究領域に公的資金を投入する意義の明確化などを議論した。
その結果、主に以下のような研究開発の重要性が指摘された。
・スポーツ等の身体作りに関心を持たない層が利用したくなる運動支援デバイス、特にスポーツの「コツ」をつかむことができるようなデバイスの開発
・運動機能の衰退、また、衰退した状態から回復するログ等を大規模に集積し解析する疫学的研究
・運動機能を司る脳の情報を読み取り、これを筋電刺激等で反映させるためのシステム/デバイス開発、また、脳情報読み取りを中心とした脳科学研究の深化
・スポーツにおける外傷(ケガ)を報告し、医学的な意味を持たせた統一的なデータフォーマットの作成とデータベース化、競技団体レベルでのトレーニング方法としての実装
・スポーツ医科学研究全体の深化と医学、スポーツ科学、工学など異分野連携

 また、これらの研究および現状の成果は広範囲に渡り、主体的に研究を進める研究者、関係者が多様であること、国として研究開発を推進する際、最先端を走る研究、および研究者層が不明確であることが指摘され、研究開発領域を提案するにあたっては、より詳細な調査が必要であることが指摘された。
 今回のワークショップで得られた意見や提案を整理、統合し、多くのステークホルダーとの関わり方やアウトプットイメージ、先端的な研究開発成果を明確にすることに留意しつつ、バイオメカニクスチームが作成する調査報告書へと反映する予定である。

 

PDFダウンロード

関連報告書