2007年3月
(ワークショップ報告書)科学技術未来戦略ワークショップ~新材料設計・探索~報告書/CRDS-FY2006-WR-01
エグゼクティブサマリー

 物質科学の分野においては、ナノ材料の代表であるカーボンナノチューブの発見や製法、あるいは強相関電子系物質の開拓において世界をリードしてきており、新物質創製の卓越したセンスを有する研究者を数多く擁している。国としての新たなシナリオとコーディネーションの下にこれらの人材を結集して戦略的な研究体制を整備することができれば、変化の早い企業ニーズに対応しうる新しい研究インフラが自ずから生まれ、ひいては、イノベーションの創出や材料研究者層の拡大と言う好循環が大きく期待される。以上のような観点から、ワークショップでは次のような議論がなされた。
 我が国の科学技術を持続的に発展させ、イノベーションを誘発し、社会・経済を活性化するためには、今後も独自の革新的材料及び材料技術を創出し続けることが肝要である。また、技術の変遷が複雑かつ急速で、製品のライフサイクルが急激に短命化した現在、企業単独での新規材料開発は投資効率上困難であり、国の戦略的な投資が必要である。
学術の面では、過去の物質探索・材料設計の成功例からは以下の要件が共通項として浮かび上がる。
 (1)深い学術的専門知識に裏打ちされた独自の物質観(勘)を持つリーダーの存在、
 (2)最先端の物質科学、十分整備された計算ソフトとデータベース、高い演算能力のコンピュータなどを融合させた計算機シミュレーション技術の高度化と駆使、
 (3)作製パラメータの高速スキャンによる系統的かつ高速の試料合成・評価手法の開発と活用
 (1)属人的かつ絶対的な要件であるが、材料探索のスピードを上げるためには、(2)、(3)に関する技術への投資も本質的に重要である。

 以上を総括して研究開発投資が強く期待されている研究領域例を挙げれば、
 1.自己組織化、自己集合化によるボトムアップ型ナノ構造形成・集積化技術
 2.異種物質・状態間の界面機能の基礎研究(有機半導体/無機材料、有機半導体/有機金属、生体材料/無機材料を含む)
 3.次世代エレクトロニクスを実現するナノ構造材料
 4.省エネ・省資源・環境対応の希少元素、規制元素の代替技術(元素戦略)
 5.新エネルギー技術を目指した触媒や電池電極用のナノ構造材料
 6.より複雑な現象のシミュレーションを目指すマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーション手法の深化とプログラム開発
 7.材料探索の高速化・高効率化のためのマテリアル・インフォマティクスの構築
 8.戦略的材料データベースの構築と継続的アップデート
 9.日本が世界をリードしてきた革新機能材料(超電導材料、強相関電子系材料を含む)の継続研究
 などがある。

 さらに重要な施策として研究推進基盤の整備がある。材料探索の研究開発を効率的に進めるためのリーダー選出の仕組み、中長期を見越した戦略的投資、研究システムの工夫などが不可欠である。

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